妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】アラフィフ婚への道①冗談から駒

お互いの実家への挨拶を済ませた日と前後するのだが、ある日虹夫さんから「ダメ元で応募してみようか」とLINEがきた。

 

それは結婚式場と地元サッカーチームのコラボキャンペーン。

ドームのスタジアムでチームのマスコットキャラクターと前撮り&挙式プレゼントとのこと。

 

私と虹夫さんは元々挙式をする予定は無く、そもそも私は入籍はおろか事実婚で良いと思っていた。それがこの2年半のお付き合いの中で、「まぁ、届け出だけでも……」となった。

もし当選したら、記念にもなるしね。

 

「良いですね」と私も返し、早速虹夫さんはキャンペーンに応募してくれた。

その日のうちに結婚式場から応募完了のお知らせが虹夫さんに電話であったと言う。その際に当選した際の注意事項を伝えられたそうだ。

当選して挙式をする場合、『規模の大小を問わず披露宴必須』とのこと。

 

なるほど、当然ですね。前撮りと挙式を無料でプレゼントしてそこで終了されてしまっては、結婚式場にとって何も得られない。

 

注意事項を了承の上、抽選結果までの数日を待つことに。

でも、お互いに当選するとは思っていない。なんと言っても私たちは『アラフィフ』なのだから。

こんなおじさんとおばさんが、サッカーチームのマスコットキャラクターと並んで笑顔でスタジアムでウェディングフォト。痛い、痛すぎる。キャラクターが可哀そうだ。

 

大前提として、お互いにそのサッカーチームへの思い入れは実はない。地元だから成績くらいはニュースで耳にはするけれど、一喜一憂する程の興味もない。

応募完了の電話の際にも、サッカーチームのサポーターなのか確認されたそうだ。

 

もしこれで当選したら、このチームを純粋に応援していてキャラクター大好きで応募していた方に申し訳ない。

 

やがて、遂に明日が当選結果発表の日。当選か否かに関わらず、連絡はくる。

週末のお楽しみ、いつものお店で飲み歩きしている中で、「もし当選したらどうする?」と虹夫さん。

「それはそれで、面白いんじゃない?」と笑う私。

 

翌日の昼。虹夫さんからLINEがくる。

なんと、B賞に当選!

上記のスタジアムでの前撮りと挙式はA賞の景品で、私と虹夫さんが当選したB賞はスタジアムでマスコットキャラクターとの撮影は含まれていない。

良かった。可哀そうなキャラクターは生まれなかった(笑)

 

と言うか、B賞とはいえ当選しちゃったぞ。え、挙式? するの?

 

動揺しつつも、披露宴必須という条件もある。

実は私たちは、結婚は届け出だけで良いとは思っていたが、友人たちを招待してご報告会をするつもりではいた。とても多くの友人たちに見守ってもらっていたし、祝福して頂いているので、それは外せないと思っていた。

 

でも、そうか、披露宴か。規模は問わないとのことだったので、少人数でも良いのだろう。

それならば、せっかく結婚式を挙げるのだからそこで披露宴をして友人たちを招くのも素敵かもしれない。

 

そう思った途端、私がドレスを着るという現実に愕然とした。

どうしよう、この3年で本気で太り過ぎた。着られるドレスがあるとは到底思えない。

 

今回のプレゼントの中には新郎新婦の衣装と着付け代も含まれている。ドレス……。

 

太ったのも勿論だが、加齢による張りも艶もない肌も深刻だ。デコルテなんて晒せる訳がない。

 

10年以上前に結婚など諦めていたのに、まさか今になって結婚どころかウェディングドレスを着ることになるとは。当時の私からは想像も出来ないことだ。

 

それなのに、あぁそれなのに、どうして脳内に子供の頃に観て感動した映画のワンシーンが流れているのだろう。

 

ミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』。1965年の作品なので、もう公開から60年ほど経つ。母が好きだった映画で、私も小学生の頃にテレビで放映されていたのかレンタルビデオでだったかで観て以来、ずっと心に残っていた。

高校生の頃にサントラCD、社会人になってからDVDも購入した。

 

その作品の中に、主人公の結婚式のシーンがある。

元修道女見習いということもあってか、そのウェディングドレスは極めてシンプルだった。豪華な宝石も、華やかな刺繍もない、一切の無駄のないデザインだけれど、露出は少なくとてもエレガントな印象を受けた。幼心に、ウェディングドレスとはこういうものだと感じたのを覚えている。

 

その後、宝塚や『ベルサイユのばら』に夢中になったころはロココ王朝風のドレスに憧れたこともあったが、この歳になり、原点に還ってきた。

ウェディングドレスを着るのなら、あの映画の主人公のようなドレスがいい。

 

なんだか気持ちが高まってきてた。この勢いのまま、なんとゼクシィ(大分版)を購入。

ざっと読んでみると、決めなければいけないことが事細かに紹介されている。早速ノートを買ってくると、招待したい親族と友人の名前を書きだした。

虹夫さんにそのページの画像を送ってみたが、「早くない?」と冷静に返されてしまう。

 

いやいや、このキャンペーンの最も重要なところを忘れてはいないか。

当選して挙式をする場合、今年の8月末までに実施しないといけないのだぞ!

 

時間をたっぷり掛けられるのなら焦りはしないが、リミットまで半年しかないのだ。悠長に構えてはいられない。希望の日取りも決めておいた方が良くないか?

 

「いつでもタイミングの良い日でいいんじゃない?」と、虹夫さん……。

 

俄然やる気の出て来てしまった私と、マイペースな虹夫さん。

お互いの違いも丸っと受け入れた私たちだけれど、結婚式の準備で喧嘩をするカップルというのもよく聞く話。喧嘩なんて誰もしたくないのだし、きっと私たちは大丈夫! と、思いたい。