洗い物をしていて、すすぎの為に水道のレバーを引き上げようとして蛇口を掴んでしまいました。
「あぁっ! もうっ!」
と自分に悪態をついてしまい、何をひとりで騒いでいるのかと気になっているであろう虹夫さんに「今ね、こういうことをしてしまったの」と説明をしました。
虹夫さんはスマホを見ていた顔を上げてにっこり。
「楽しいね」
こんな風に、いつも虹夫さんは私のおっちょこちょいを楽しんでくれます。
時には買っていた物の存在を忘れていて、ひょっこりそれが出てきた時には「そうそう、あなたその為(所用に使う為)にうちに来てくれたんじゃなーい!」と声を掛けている場面を目撃され、目を丸くされたりもします。
虹夫さんにはまだなかなか理解してもらえませんが、独り暮らしの長かった私から言わせれば家具家電は同居人です。ビニール袋や氷にだって楽しく話しかけますよ。返事は求めていません。お話しできるのが楽しいのです。
怪しい人だと感じられますか? テレビと会話なんてまだまだ独り暮らしでは初期段階(初期症状?)ですよ。
そんな些細なことでも楽しんでいる熟年新婚夫婦の私たちですが、ひとつ不満があります。主に私が抱えている不満なのですが。
私の腕には長径1cm弱のシミがあります。かなり濃いし、ここまで大きいと大変目立ちます。勿論気になってしまって、消せるものなら消してしまいたいと悩んでいます。
そんなシミを、虹夫さんは度々人差し指でポチっと押して「ピンポーン」なんて言うのです。
私の悩みの種で遊ばないで! と「もう!」なんて怒るのですが、虹夫さんはニヤニヤ。それはそれは本当に楽しそうなのです。
これ以外にもちょくちょくからかってきては私の反応を嬉しそうに見ている虹夫さん。
「こういうことされるの嫌だ?」
なんて当たり前のことを聞いてきます。
「嫌に決まってるでしょ!」
「いいやん。退屈な日常にちょっとした刺激を与えてるんやん」
「……そ、それは、刺激じゃなくてストレス!」
「ストレスか!」
虹夫さん爆笑。何がそんなにおかしいのか。
でもそれ以来、虹夫さんは私にちょっかいを出してはジト目で睨む私に、「ストレス?」なんて上目遣いで聞いてきたりするのです。
聞くまでもなく、ストレスです!
虹夫さんに伝えたい。
私はあなたと一緒にいられるだけで楽しいのです。わざわざストレス、じゃなくて刺激とかいらんです。
また惚気話になりましたか? 大変失礼いたしました。