6月下旬、いよいよ前撮りの日がやってきた。
初めての衣装合わせの時にまざまざと見せつけられてしまった現実、つまりは中年太りの弊害。
肥満なんて弊害以外の何もありはしないのだが、それでも身を以て突き付けられなければ知らぬふりをしてしまっていた。
ワンサイズしかないというインナーブラウスが、試着の時はちょっと前屈みになったら背中のボタンがプチーンと外れてしまったのだ。
ワンサイズしかないのに! フリーサイズが入らないなんて本気でヤバいんだわ私!
毎日…、いや、たまにサボりつつ、二の腕エクササイズと筋トレに励んだ。
前撮りの1週間前からは禁酒だ。もっと前からやっとけよ、というごもっともなご意見は充分理解しているので、あえてお見逃し頂きたい。
あと、この日の為に準備したものも書いておく。
ドレス用の肌着「ビスチェ」と、和装用の肌着、そして足袋。
ビスチェは大抵の人は結婚式での前撮りと本番でしか着ることがないので、ネットフリマなどに出品している人が多いという。式場で購入するのも良いが、どうしても割高感はある。
担当者の方からもフリマを勧められたが、これも大抵の人は若くてスタイルの良い時期に使用しているので中年太りの私に合うサイズが見つからない。
虹夫さんに泣きつき、「検索キーワードに“大きいサイズ”て入れてみよ」と言われて従ったら案外あっさり欲しいサイズのビスチェを取り扱っているショップに行きついた。お値段もかなり良心的。
偶然にもこの少し前に、地元酒造会社のキャンペーンに当選してアマギフ2,000円分が届いていたので、迷わずポチる。約半額でビスチェはゲット出来た。
和装用の肌着は実家から借り、足袋は駅ビルの呉服屋で2,000円くらいで購入。
さて当日、まずはトリニータコラボキャンペーンの特典であるレゾナックドームでのロケーション撮影から始まる。
式場内でヘアメイクと着付をしてから、車でドームまで移動する。車に乗り込むので、本番とは別のパニエを使用しないロケ用ドレスを着せてもらう。
……ちょっと苦しい。このドレスは試着なしで提示された画像から選んだのだが、いざ出発しようとしている私を見てプランナーさんが「……別のドレスにします?」と。
あとから画像を見ると、かなり、いや大変な勢いで肉がブニブニーン!! とはみ出ておりました。
これはプランナーさんに止められて当然である。
急遽運び込まれたドレスに着替えると、今後は苦しさは感じなかった。見苦しさも軽減。
安心してタキシードに着替えた虹夫さんと共に車に乗り込み、レゾナックドームへ。
地元の競技場ではあるが、ふたりともスポーツはやらないし観ないので縁のない場所である。
駐車場には、複数の高校のマイクロバスが停まっている。
「今、高校総体ですからね」
カメラマンさんの言葉に肝が冷えた。
もし若々しい高校生に出くわしたらどうしよう。こんなおばはんがウェディングドレスなんか着て、ドームで撮影なんかしてるよ。浮かれすぎ~なんて言われたら悲しすぎる。
なんて考えは杞憂で、幸い高校生には遭遇せず。通路で職員さんと何やら打ち合わせしていた男性がふたり、私たちの姿を見て「おぉ!」と声を漏らして「おめでとうございます」と言ってくださったのは嬉しかった。
選手の入場口から競技場に足を踏み入れる。
一度だけ観客席でトリニータの試合観戦をしたことがあるが、関係者や競技者でなければ立てない場所から見上げるドームは言い尽くせない感動がある。ただ広いとか高いとかではない、胸が震えるような衝動を感じた。……走りたくなりはしないけどね。
芝には立ち入れないので、トラックまで入りいざ撮影。競技場内はヒールでは入れない為、足元はふたりともスニーカーだ。
前日までの悪天候が嘘のように晴れ上がり、だが湿度はそう高くなくカラリとしていた。絶対にこの日も雨になると思っていたのに。
なんと言っても、私は雨女だ。たぶんカメラマンさんが晴れ男。
式場に戻り、今度は本番用のドレスに着替える。インナーブラウスとの再会である。
袖を通し、緊張の一瞬。
なんと、難なく背中のボタンが止まった。あまり見た目には変わりはなかったが、それなりに二の腕と背中の肉は減っていたらしい。素晴らしい!
今後の筋トレのモチベーションも上がるというものだ。
ベールを着けて、ハイヒールを履くと大聖堂へ移動。トレーンが長いので、裾を抱えて歩くのも一苦労。
まずはふたりだけの写真を撮影してもらい、次にトリニータのキャラクター、ニータンとリッチーのぬぐるみを虹夫さんとふたりでそれぞれに抱っこしての撮影。
これがキャンペーンでA賞に当選していたら、レゾナックドームの際に等身大(?)ニータンとの撮影になっていた。
特にトリニータに愛着がある訳でもないので、これ(B賞)で良かったと改めて思う。
さあまだまだ続くぞ。
次は色打掛と紋付袴に着替える私と虹夫さん。
勿論私たちふたりも大変だけれども、何が大変って、今回のヘアメイクと着付け、ロケーションも含めた撮影の付き添い等すべてをひとりでやってのけたスタイリストさん。
いくら打掛の帯が簡易式であると言っても、神経も体力もフル稼働だっただろう。
改めて和装の虹夫さんに惚れ惚れしつつ、撮影場所へ移動する。しかし、衣装が重い。
動き出せば自然に歩けるのだが、一度立ち止まると全身にズシリと重みが伸し掛かってきて、再び歩き出そうとするのに気合いを入れ直さないといけない。
私の場合はそういう巡り合わせだったから仕方がないのだが、もし結婚願望が早くからある方は若くて体力のあるうちに結婚式は挙げておいた方が良いかもしれない。
撮影場所に着くと、一旦虹夫さんには休んでもらって私の衣装の映えポジション作り。
大量のピンチで着物の美しい流線を作り出す。その間、私はマネキンのようにただ立って微動だにしない。
指先や首の角度まで整えられて、いざ虹夫さんに横に立ってもらって撮影。
そして終了。
長かったー!!
読んでくださっている方も、飽きて途中で帰ってしまったんじゃないかと不安になるくらい。
ロケーション撮影のときも含めて、カメラマンさんがメモリアルフォト用とは別に虹夫さんのスマホカメラでもオフショットを撮ってくださったのはとてもありがたかった。
プランナーさんもご自身のスマホで撮ってくれた画像を虹夫さんに送ってくれていて、ちょっとしておふざけポーズも逃さず撮影されていて後から見返して大笑い。
最終的にはウェディングドレスを3着も着ることになって、なかなか贅沢が出来たのではないかと思う。そのうち1着は大変見苦しい姿ではあったが。
大聖堂のステンドグラスの前でひとりでのバックショットも、自己満足ではあるけど良い記念になった。
反省点は、ヘアードの注文を勘違いしていたこと。
百合の飾りを私は注文したつもりだったのだけど、実際は「ご検討ください」という段階のままだった。当日に花が届いていなくて私の勘違いが判明。プランナーさんが素早く生花店に働きかけて、生花店さんも柔軟に対応してくださったおかげで百合は無事撮影に間に合った。
反省の結果、本番では自前の髪飾りを持参する予定だが、造花で素人が作るとどうしても生花と比較して見劣りがしてしまう。虹夫さんは「それも味だよ」と言ってくれるけれど、やはりモヤモヤ。
和装の肌着も知識不足で戸惑った。
実家の母に頼んで準備してもらった肌着をそのまま持ち込んだのだが、和装肌着には一般用と婚礼用があるとのこと。婚礼用の方が襟が大きく開くことが出来るという。
一般用の肌着を婚礼用に合わせて着ると、どうしても丈が足りずに胸がはだけたようになってしまう。
これは急いで婚礼用を買い直す必要がある。
さて、本当に長くなってしまってけれど、次回はまたまた事件勃発。
本番一ヶ月前になって、とっくに確定したゲストが今更増えた! 原因は新婦の母!
招待状は? テーブルの配席は?
新たな問題が一気に湧きだす。乞うご期待!
(疲れているのでテンションがおかしい)