妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】緊急号外「緊張の初めまして」

本日は、わたくし妙春の実家と虹夫さんのご実家、それぞれにご挨拶に伺ったときのお話をしたいと思います。

 

 

去る建国記念の日、私たちはそれぞれの実家に結婚のお許しを得に挨拶に伺うことになった。反対される心配は一切なかったが、まぁ形式的に筋は通すべきと考えて。

 

虹夫さんのご両親は自営業をされているので時間の自由は利くとのこと。一方私の実家は父が早くに他界しているので、個性の強い母だけでは不安で絶対に兄にも同席してほしいと懇願。三交代勤務の兄に多少無理をお願いして、連日夜勤の合間に時間を取ってもらうことになった。

 

当日は朝10時に虹夫さんのお迎えを受けてアパートを出発。まずは私の実家に向かう。

初めてみるスーツ姿の虹夫さんに、秘かに惚れ直していたのはここだけの話だ。

 

私の実家は郊外の、更にやや奥まったところにある。過疎化が進んでいて、まず車も人通りもない。

 

先月私ひとりで実家に寄った際には玄関の外には大量の植木鉢。上がり框には居住者の数以上の靴。仏間に溢れる兄の仕事道具やメンテナンスアイテムが山のようにあった。

 

それが、なんということでしょう。すっきりと片付いているではありませんか(CV加藤みどり)

 

鬱蒼としていた仏間はさっぱりと、また清々しく、更に華やかにも姪の三段雛飾りまで置かれていた。姪は現在25歳。実家からは出て、独立している。

その姪の雛飾りが出されていることに少々の疑問は感じたが、母の「嫁に行きそびれんように出しといて、て言うから」に苦笑い。

 

私という、もう絶対に嫁に行かないと思っていた叔母が奇跡の嫁入りを決めて、思うところがあったのかもしれない。私と違って彼女にはきちんと結婚願望があったことに、叔母ながら安堵したのも事実だ。

 

ご挨拶そのものは、虹夫さんの堂々とした自己紹介とこれまでの簡単ないきさつから始まり、結婚をしたいと考えていることを改めて伝えた。

母からは「もうこの子が結婚するなんて思ってなかったです」と言われてしまい、ついつい「私もそう思っていました」と返してしまった。

 

その後は虹夫さんのお仕事やご家族の話、今後どのように生活していく予定かなどいろんな話をしていったのだけれど、途中虹夫さんが正座を崩そうとして膝がつらそうに見えた母。

「あ、これを……。これに座ってください」と、中座して何かを取りに行った。たぶん脚の長めの座椅子でも持って来てくれるのだろうと思った。

戻ってきた母のその手には、ピーナツ型のバランスボールが抱えられていた。

「これどうぞ」

「いやいやいや、寧ろ危ないから!」

異口同音に慌てて止める私と兄。激しく動揺している虹夫さん。そりゃあそうでしょうとも。

 

昔から誰も予測もしないことをしでかす母である。絶対にこの日もなにかをやらかすと思っていたが、まさかの来客に座布団代わりにバランスボール。

 

これが妙春宅でのハイライトであった。

 

後日の両家顔合わせ(かなめ打ち)の食事会を約束して、まずは私の実家を辞した私と虹夫さん。

丁度時刻はお昼時。簡単に昼食を済ませて、今度は虹夫さんのご自宅に向かう。

 

道中、虹夫さん宅へ持参する手土産を買いに、街の洋菓子屋さんへ。焼き菓子の詰め合わせを購入。

因みに虹夫さんも妙春宅には別の洋菓子屋さんで購入したお菓子と、ご実家で採れたお野菜を手土産として持参している。私は仏壇に挨拶をしていたので手渡していた瞬間を見てはいないけれど、兄は新鮮でまっすぐなキュウリに感動していた様子だった(声から判断)

 

まるで狙ったように予定通りの時間に虹夫さん宅へ到着。

玄関先でまずご挨拶をしようと思ったら、どんどん勧められてあっという間に室内へ。そこへ虹夫さんのご両親登場。

 

優しそうで大らかな印象で、明るく私を迎え入れてくれた。

緊張しながらも紙袋から手土産を出し、紙袋を下げつつお菓子を差し出す。

「こちらどうぞ召し上がってください」と、つまらいものですが的な遜りは言わないという目標は達成できた。

 

第二関門の自己紹介もなんとか言えたところで、虹夫さんのお母様が言った。

「この子はもう結婚はしないと思ってた」

うちの母とまったく同じことを言われて、思わず虹夫さんと大笑い。

 

まぁ言うてもアラフィフですからね。身内は完全に「こいつはもう生涯おひとりさまだな」と結論付けていてもおかしくない。

なんといっても、誰よりも当人たちがそう思っていたのだし。

 

ひとしきりお話も弾み、そろそろお暇という頃合い。

この後はふたりでお疲れさま会として飲みに出る予定だったので、虹夫さんは普段着に着替えるため一旦自室へ。

 

応接室には虹夫さんのご両親と私の3人が残された。内心かなり緊張してしまったのだが、お母さまが神妙な面持ちで言いづらそうに口火を切った。

「あの子の病気のことは……」

 

虹夫さんは昔患った病気の影響で大手術を経験しており、その経過で現在は片足を引きずるように歩く。それは生涯続くし、それがこれまでの人との関わり合いに影響を及ぼしたこともあると聞いている。

 

ご両親としては、それでも構わないのか気掛かりだったのだろう。虹夫さん本人が席を外したこのタイミングで聞いてくるのは当然だし、私も覚悟はしていた。

 

酒蔵巡りツアーに一緒に参加していると、飲み仲間から「彼氏さんだいぶ酔ってない? 大丈夫?」と声を掛けられたことがあるが、あれは千鳥足ではありませんよ、と返したことも一度だけではない。

何度も参加しているうちに理解してもらえたのか、今では誰もそのようなことは言ってこなくなった。

 

「はい、伺ってます」と私はさらりと返した。そのつもりだ。

ご両親がどう感じたかは分からないが、少なくとも私は虹夫さんの身体については「お互いメタボまっしぐらだからどうにかしようぜ」くらいしか心配事はない。

 

完全にご両親に安心してもらえたかは自信がないが、私はそのあたりの次元はもうとっくに乗り越えたと思っている。

 

それよりも、私にはこの小一時間の間に物凄く気に掛かっていることがあった。

こちらへ伺ってすぐにご両親に差し出したお菓子の存在である。

 

テーブルに包装されたまま置かれたお菓子の、『お早めにお召し上がりください』のシールが丁度こちらも向いていたのだが、それがどう見てもさかさまなのだ。

 

私、お菓子を裏表逆に差し出してしまったぁぁぁっ!!!

 

ど、どうしよう。包装紙の継ぎ目が無かったから、てっきりこっちが上面だと思っていたのに。

話の途中に「すみません、裏返しでした(てへっ)」と引っ繰り返すか? いやいや、そんな突拍子もないこと、出来るわけがない。でもこのまま私たちが帰った後にご両親に気付かれて呆れられるかもしれないと考えるのも肝が冷える。

 

虹夫さんの病気という本来なら重たい話をしている間も、私の頭の中は「お菓子の箱をどうしよう」しかなかった。よく分からないドキドキの時間である。

そのうち、お父様が応接室の調度品の話題を始めた。虹夫さんの曾祖父にあたる方が収集していた品々とのことで、部屋の外にもあると見せてくれることになった。

 

先にお父様が部屋を出て、続いてお母様。そしてそのあとを追うように私が付いて行く形になったのだが、私は「今だぁぁぁっ!」とばかりに電光石火の早さで箱に飛びつきスパーッン! と引っ繰り返すと何事もなかったように廊下に出た。

 

この瞬間が、虹夫さん宅でのハイライトと言えよう。中身が焼き菓子で本当に良かった。

 

古い日本画を見せて頂きながらお話をしているうちに、着替えを終えた虹夫さんが戻ってきたので、ご両親のお見送りを受けて私たちはおいとました。ようやく緊張からの解放である。

 

改めて、こちらの大らかな印象を受けたご両親が私の義理の両親になるんだな、と考えると不思議な気持ちになる。

 

どちらにも言われたことなのだけど、当人がどう考えているかはともかく、やはりこのままひとりでいるのは心配だったと。こうして将来寄り添い合える相手が出来たのは本当に良かったとも。

 

いくつになっても親は子を気に掛けているものだと言うけれど、これで安心してもらえただろうか。

 

両家のご家族にご挨拶を済ませ、お互いの兄弟にも報告し、これで一旦の大きな節目は終えられたと思っている。もちろん、まだまだこれからすべきことも決めなければいけないことも沢山ある。

でもまぁ、それはおいおい。

 

次はかなめ打ち。こちらも何かしらハプニングが起きそうな予感がしている。

 

手始めの家計簿

独り暮らしを始めた当初、毎年家計簿を付けていました。だいたい半年くらいで挫折していましたが。

 

この度、確実に家庭を持つことになったのを機に改めて家計簿を付けようと決心しました。今度は途中でやめたりしないぞ。この先は自分のお金だけの管理では無くなるからね。

 

そこで書店で家計簿を購入。大抵の家計簿は1月1日始まり。月末が給料日ならそれで良いけれど、私は月の半ばが給料日。家計管理の途中で突然お金が増えると、混乱してしまいます。

この辺りが、私が数字に弱くいつまでもお金が貯まらない由縁かもしれません。

 

でも、事態はそれを許しません。

 

虹夫さんは数字に強いタイプなので出来ればお任せしたいのですが、それは甘えすぎでしょう。

 

手書きで日付と曜日を書き込めるタイプの家計簿を購入しました。

 

お給料が入って、早速収入金額や支出予定額を書き込んでいきます。その時点で残額は僅か。

絶対に急遽欲しくなってしまうものや、緊急の出費というものはあります。早くも赤信号です。

 

そのうち、電気代とガス代の請求が届きました。電気代はいつもと大して変化はなかったのですが、なんとガス代が前月より2000円も増! は? なんで?

本気で目ン玉飛び出るかと思いましたよ。

 

しばらく考えて、年末年始はお料理を頑張ったことを思い出しました。虹夫さんに振る舞ったお料理の割合が大きい? でも、それだけでこの金額ということは完全に二人で暮らすことになったらもっと数字は跳ねあがるということか。

これまで私ひとりということで、極端に料理なんてしてこなかったものな。ガス代が2000円を切った月もあったもの。

 

これは今後の見通しを立てる為にも、良い教訓になりましたね。ふむ。

 

入籍はもう暫く先で、同居もそのタイミングの予定なので、当分はこうして家計管理の勉強をしようと改めて気を引き締めたのでした。

 

結婚をしても薄給ながら私は仕事を続けるし、それは虹夫さんとも特に話した訳では無いけれど了承されています。今の収入なら、おそらく虹夫さんの扶養には入らないでしょう。

お互いに自身の収入のどのくらいまでを家計に入れるかとか、具体的な話はまだなんにもしていないけれど、そういったお金の話も今後は大切になると思います。

 

たぶん私が考えている以上に、虹夫さんは口には出さないけれどいろいろ考えているんだろうな。

 

私、これまで本当にどんぶり勘定で実は貯蓄もまずありません。今後生涯おひとりさまのつもりではいたけれど内心戦々恐々だったんですよね。

今からしっかり家計管理するとして、どれくらい老後に備えることが出来るのだろう?

え? もう老後に片足突っ込んでる? それは確かに事実ですね。遅きに失してしまいました。

 

その限られた残り少ない時間を、虹夫さんと如何に楽しく有意義に暮らしていけるか。

私が虹夫さんに何をしてあげられるか。

金勘定苦手、片付けも苦手、すぐ酔っ払う、へたれですぐ泣く。

こんなへっぽこな私と一緒になろうと言ってくれる虹夫さんです。大切にしないと罰が当たります。

 

今はなんとか部屋の状況を維持出来ているので、次はお金の管理が完璧になれるように頑張ります。あ、お料理もせめて人並に出来てレパートリーも増やせるように頑張らねば。

 

実は来月に、いよいよお互いをお互いの家族に紹介、ご挨拶することになりました。

私の母や兄夫婦には、一昨年の大晦日に偶然鉢合わせてしまってはいますが、正式な挨拶はしていません。

 

私の実家で、事件が起きない訳がない。今からかなり心臓に悪いのですが、次にブログにあげるのはその日の出来事になると思います。

 

どうか何事もなく平和に終わりますように。

虹夫さんのご両親に受け入れて頂けますように。

 

それでは、次回のハプニングのご報告を楽しみにお待ちください。

本日はお読み頂きありがとうございました。

 

あれはプロポーズだったのか否か

新年とっくに明けてました、おめでとうございます。

 

今頃になって今年最初のブログですが、ここで心機一転。状況が一歩前進したのもあり、当ブログに少々の変更を加えました。

 

変更点①

タイトルを『妙春堂の日常』から『―妙春堂の日常― アラフィフ婚のすゝめ』に変更しました。

 

変更点②

お相手の方の呼び方を、『レインボーさん』から『虹夫(にじお)さん』に変更します。

 

虹夫さんには了承を頂きました。ありがとうございます。

 

 

さて、大晦日に更新した前回のブログ。前述の「一歩前進」した切っ掛けを綴ったわけですが、読んだ虹夫さんからは「ぶっちゃけたなぁ!」と驚かれて笑われました。貴方がしたことですよ?(笑)

 

補足を兼ねて改めて振り返りますと、12月の誕生日を間近に控えた頃に虹夫さんから

「ぶっちゃけて聞くけど、誕生日プレゼントなにがいい?」

と聞かれたのが事の発端です。

 

そもそも昨年の夏、結婚も視野に入れてのお付き合いだと改めてお互いの認識を確かめて以降、私はいろんなことを準備しなければいけないと思い始めました。

汚部屋脱却もそのひとつで、今も時々虹夫さんのチェックを受けながらなんとか散らかった部屋をキープしています。綺麗に片付いた部屋にはまだまだなのが情けないところですが。

 

料理も極力するようになりましたし、社会復帰してからはお昼はお弁当を作るようになりました。

虹夫さんから「おにぎりくらいは作ったら?」と言われたのが大きいんですけど。

 

そんな中で婚姻届を役所でもらってきたのはかなりのフライングだとは思いますが、その際に気になったのがそう、判子です。

 

選択的夫婦別姓の法制度が整う目途など立たない現状、結婚後は私が虹夫さんの姓を名乗るのが自然です。そうなると判子を作る必要があります。虹夫さんの姓は少々珍しいので、シャチハタでも既製品はありません。

 

因みにシャチハタの既製品は、シャチハタの通販サイトからも確認できることを最近知りました。便利な世の中になりましたね。

 

百円ショップでもその名前は見当たらず、これは完全受注か~、お金掛かるな~、なんて思っていたところ、偶然とあるホームセンターで虹夫さんの名前の認印を見つけたのです。これは物凄く珍しいことでした。言うまでもなく、即買いです。

 

気が早いとは思いつつ、こうなるとシャチハタと銀行印も欲しいな。どうせいずれ必要になるのだし。

 

そんなことを考えている時の、「誕生日プレゼントなにが欲しい?」だったのです。

そりゃあもう「判子」一択でしょう。

 

その後、実際の誕生日には別のプレゼントを頂きましたが、クリスマスイブの前日に本当に素敵なシャチハタと判子をセットで手渡され、晴れて私たちは婚約となりました。

 

ある日、貰った判子を眺めつつ、これが「婚姻届に判子捺して」だったら強引な逆プロポーズだったよな~なんてふとよぎったのですが、いや待てよ? 判子の現物要求するのもプロポーズにならない? 寧ろ、捺印を迫るより露骨じゃね?! と気がつきました。

 

うわ、ヤバい。私、また無自覚にやらかしたわ。

 

違うんだよ~! 本当にただ欲しかっただけで、こちらから結婚を迫った訳じゃないんだよ~!

 

でも、やはりと言うかなんと言うか、この出来事は私からのプロポーズだとお友達には認識されてしまっており、「やるなぁ」「凄ぇなぁ」「押しが強い」「圧が凄い」との評価が寄せられております。

 

私自身はただただ甚だ不本意ではありますが、結果的には収まるべきところへ着地したということで、虹夫さんとは納得しております。

 

今後、住まいや入籍の時期など決めなければならないことは多々あります。これまで自分を甘やかせられるのは自分だけだと、本当に自分に甘々な生き方をしてきたので、この歳になってまったくの他人だった人との共同生活が上手くやっていけるのか本心では自信がありません。

虹夫さんは本当に優しい人なので、そこに図々しく甘えてしまう未来の自分が垣間見えて、怖くなることもあります。自分のだらしなさは、自分である私がよく知っています。

 

焦らず、迫らず、思い詰めず、ざっくりと定めた次のポイントを目指して、明日からも着実に前進したいと思います。

 

それでは、本日はこの辺で。

今年もよろしくお願いいたします。

 

【連載】絶妙アンバランス③「判子ください」

12月に入り、再就職してから数日。彼が仕事帰りにお迎えに来てくれると連絡をくれた。

 

前職時代は度々そうやって束の間のドライブデートなどをしていた。

春に私が退職をしてからはそれもなくなり、週1~2度の大切な時間もなくなって、彼と時間が取れるのは週末のみになっていた。

 

今回の職場は以前の場所とそう遠くなく、レインボーさんとの待ち合わせ場所も難なく決定。

 

私のアパートまで送ってくれたりなんかしたら明らかに彼にとっては遠回りなのに、そんなことないよと平然とハンドルを握る彼に、いつも感謝している。

 

渋滞に捕まるのも、それだけ長い時間を一緒に過ごせるので苦にはならない。

この日も予想に漏れず道は混んでいたが、その分たくさんのお喋りを楽しんだ。

 

だいぶアパートも近くなったタイミングで、レインボーさんが突然こう言った。

 

「ぶっちゃけて聞くけど、誕生日プレゼントなにがいい?」

 

ぶっちゃけたなぁ、おいっ! (びっくりしすぎて本当にそう返した)

 

ちょ、直接聞いちゃうんだ。でも、その方が間違いはないな。うむ。

などと自分に言い聞かせていると、レインボーさんは慌てたように付け加えた。

 

「エアロバイクは買わんけん! 猫もかわんけん!」と。

 

いつぞやしつこくおねだりした商品ですね。大丈夫です、もう言いません。

そして、つい最近までおねだりしていた神のごとき存在ですね。仮に今プレゼントされても、うちのアパートはペット不可なので無理です。

 

「炊飯器とか」とも言い出すレインボーさん。

我が家の炊飯器は私が独り暮らしする際に兄夫婦に譲ってもらった五合炊きだが、その時点で少し内釜のコーティングが剥がれていた。それが長年の使用によって更にヤバいところまで剥がれてきてしまっていた。

その話を以前にしていたので、さすがに健康的にも危ないと心配してくれたのだろう。つくづくいい人だ、貴方は。

 

しかしだ、色気がない。

尋ね方もぶっちゃけだったし、猫はともかく誕生日プレゼントにエアロバイクか炊飯器。いや、エアロバイクは却下されているが。

 

「色気のないもの……」と、思わず呟く私。

これだけぶっちゃけられて色気のない話を振られて、私の対抗意識に火が点いた。これは色気のないものをリクエストしなければ!

 

「判子!」

「は?」

「判子が欲しい! 色気ないやろ?」

 

唖然とするレインボーさん。そりゃ意味が分からないだろう。説明することにした。

 

貴方の苗字は、読みは特に珍しいものではない。だが漢字はあまり一般的ではない。殆どの姓を網羅しているシャチハタでさえ特注でなければ購入できない。たぶん値段も割高だろう。

だから、貴方の姓のシャチハタと朱肉印のセットが欲しい、と。

そもそも私は普段から指輪をする習慣がなく、『婚約指輪』というものに実用性を感じていなかった。

いや、婚約指輪に実用性を求めることがそもそも間違いな気もしないでもないが。

 

それなら、確実に今後使用することになる彼の姓の判子の方が実用性高くね?と考えた次第。

 

これ、今考えなくてもプロポーズにならないか? 言ったその時はそこまでの意味で言ったのではないけれど、いずれ必要になるのだから買ってくれ、程度だった。

 

レインボーさんは動揺していたのか、なんだか必死に「判子は高いぞ」と言った旨の発言を繰り返し、最終的には誕生日プレゼントは三合炊きの炊飯器に落ち着いた。

 

うーん、やはり判子は自分で買うしかないか。

炊飯器は頻繁に使うものなので、誕生日よりも少し早い日に仕事帰りのレインボーさんがアパートに届けてくれた。お米はもちろんレインボーさんの実家で栽培された、なつほのか。

 

それから数日後、今度はレインボーさんからクリスマスプレゼントのリクエストがLINEで届いた。こんな感じのキーケースが欲しい、と画像付きだ。

とてもシンプルなデザインだがかなり使い込まれているようで、よほど思い入れがあるのだろうと感じた。

早速ググってみるものの、ピンとくるものがない。これは店頭を回って探すしかないな。

 

ある日、インフルエンザの後遺症的な感じで重い気管支炎に罹ってしまっていた私は耳鼻科の受診も兼ねて仕事を休んだ。診察開始時間まで自宅で安静にしていると、レインボーさんからLINEが届いた。

 

「事故った」と。

 

血の気が引く。詳細を知りたいが、向こうは混乱しているかもしれない。そんな中でも私に一報だけでも入れてくれたのだろうから急かしてはいけない。

激しく咳き込みながら、心臓バクバクで続報を待った。

 

結論から言うと、レインボーさんが追突してしまった形になるのだけれど双方怪我なし。先方の車が大変防御力が高かったとかで、傷もなくドライバーもぶつけられたことに気が付いてもいなかったと。

 

なんと双方ともに運が良い。だが、事故は事故だ。私は閃いた。

プレゼントのキーケースにサプライズを仕込んでやろう、と。

 

2日掛けてデパートやショッピングモールなどを歩き回り、1点に絞った。カラーはレインボーさんのイメージも踏まえつつ、私の好みで選ばせてもらった。名前も入れてもらった。

 

そして1223日。

この日はフライング・クリスマスパーティーをアパートでする予定だった。

キーケースは2日前に購入済みだ。

私は朝から洗濯や片づけを済ませ、氷と炭酸水とつまみになるような食材を購入。

帰宅するなりバスに乗り込み、とある神社に向かった。今年の12日にレインボーさんと初詣に行った神社だ。そこで、小振りの交通安全の御守りを頂く。これをキーケースに仕込むのだ。

 

きっと笑ってくれるだろうと期待して、月に一度の心療内科の受診を済ませるとレインボーさんとの待ち合わせ場所に向かった。

 

時間が早いので、のんびりドライブデートを楽しみ、予約していたケーキや手巻き寿司セットを購入。バッグの中の御守りを気にしつつ、アパートに帰った。

 

帰宅後は早速私はお料理開始。

レインボーさんの好きなジャコを使ったサラダ、鶏のオーブン焼き。20分で作りたかったが、なんと約1時間掛った。さすが要領の悪い私。それにしても酷すぎる。

 

とは言え、それだけ時間が掛かったことで待ちくたびれたレインボーさんがウトウトし始めたので、その隙にキーケースに交通安全御守りを仕込むことも出来たのだけれど。

 

料理が完成し、八鹿酒造のスパークリング日本酒niji(とっておきにと大事に春から残していた)を始めに、手巻き寿司を上手く巻けずにふたりで悪戦苦闘しながらも笑い合って食事が進む。

途中、罰ゲームが好きなレインボーさんの提案で、決して評判の宜しくないことで有名なチューハイやウィスキーを飲んで馬鹿笑いしたり、更におつまみを作ろうとして「このあとケーキあるんで?」と慌ててレインボーさんから止められてしまうなどした。

 

普段は見ない民放のバラエティー番組を見ながら楽しく時間を過ごしていたが、なにやらレインボーさんがリュックをごそごそしていることに気がついた。気づかぬふりをする。

声を掛けられてそちらを向くと、握った大きな手を差し出してきた。反射的に、その下に手のひらを差し出す。

 

ぽとりと手のひらに落とされたのは、シャチハタ。えっ?!

 

こ、これはもしかして、誕生日プレゼントにリクエストした貴方の姓のシャチハタ?

動揺しつつも嬉しさが湧きだす私。朱肉印ではなかったけれど、充分すぎるほど嬉しい!

 

急いで私も箪笥に隠していたキーケースを取りに行く。

早くお返ししなければと、慌ただしく差し出してしまったのは反省。

 

カラーに対しての感想はよく分からなかったけれど、満足そうに見えたので私も満足。更にその先を気づいてもらえるかドキドキしつつ様子を伺う。まんまと「なんだこれは?」とポケットに挿しこまれた御守りに気がつく。取り出してじっくり眺め、それがなんであるのか、意図はなんなのかを理解して苦笑いで吹き出した。私も悪戯っ子のように笑ってやった。

 

お互いに笑顔溢れるプレゼント交換になった。こんな楽しいクリスマス(の前々日)は初めてだろう。

 

更にお酒が進み、テレビから流れるランキング結果を予想してああだこうだと歓談。

あまりにも楽しくて、シャチハタが貰えたことが本当に嬉しくて、私は再びレインボーさんがなにやらごそごそしていることに気がつかなかった。

 

「もうひとつある」と言われて、そちらを向くとレインボーさんが小さな小さなギフトバッグから何かを取り出すところだった。

 

差し出されたものを見て、思考停止。大きなサイズの黒い判子ケース。

ん?

 

さっきシャチハタもらったし、判子は高いと言葉を濁してもいたし、ジョークの好きなレインボーさんのことだ。これはケースだけだ! 面白ーっい!!

と受け取って、息を飲む。重い!

 

ケースを開く。表と裏を間違えていなくて良かった。

鶴と亀のおめでたい蓋裏の刺繍、金ぴかの印材、誕生石を思わせる石があたりに付いている。

印影はもちろん彼の姓。

 

驚く私に、レインボーさんはそれはそれは多弁になって説明をしてくれた。

要約してしまうと(ごめんんさい)、あの誕生日プレゼントのリクエストをぶっちゃけて聞いたあの日の私の言葉に、誠実に考えて考えて出した答えがこれだったと。

「婚約指輪の代わり、てことで」

と、言ってくれた瞬間、胸が熱くなった。気持ちが込み上げるっていうのは、こういう現象なのだろう。

 

改めてお互いに「よろしくお願いします」と頭を下げて、私たちは婚約した。

 

名前を変えるのが面倒だから事実婚でいいよ、と公言していた私が180度の転換。

いったいどうした。自分でも理解が追いつかない。

 

でも、それが私がこの人とずっと居たいと思う気持ちの流れの行き着く先だったのかな、と感じた。

 

その日から、長年レインボーさんを応援していたお友達やお世話になっている方々に少しずつご報告していった。本当にお待たせして申し訳ない。

 

そのうちのひとりのお友達からは「すげぇな! 逆プロポーズやん! やったなぁ!」と声を掛けられた。……あ、やっぱりあれって、プロポーズになるのかな?

 

「そうやろ! 貴方の名前の判子がほしいとか、プロポーズ以外の何があるん!」

 

そ、そうですよね。その場ではそんなつもりなくて、ただ「何が欲しい?」て聞くから実用性だけを考えて素直に答えただけだったのですけど……。

 

ま、まぁ、結果オーライということで……。

 

アラフィフ卯年の歳女、凄まじい激動の一年だった。

当ブログを始め、いくつかの文学賞に挑んで玉砕したけれど、挑戦した自分の成長は認めたい。

婚約はしたものの、入籍までは少しばかり解決しなければならない課題がある。両家の挨拶とかね。この連載は、もう少し続くことになるけれど、一先ず3度目の完結。

来る歳を更なる成長の一年にしたいと願いつつ、皆さまのご多幸をお祈りいたします。

よいお歳をお迎えください。

 

お読みいただき、ありがとうございました。

 

【連載】絶妙アンバランス②「酒と犬猫とレバーと」

レインボーさんと正式にお付き合いを始めて1年と3ケ月が過ぎた。

そろそろ何度目かのクライマックスが訪れることを感じ、改めて彼との関係性を見つめ直すことにした私。

 

まず彼は幼少期から大変やんちゃで腕白だったそうだ。面白そうだと思ったことは何でもやったそうだし、悪戯のセンスも高い。私など思いもつかない罰ゲームなど、泉のごとく次々と提案される。しかもそれが誰も傷つかないという見事なセンスの持ち主。

罰ゲームなどと言うと、大抵は損得が発生して惨めな想いをする人が出てくるものだけれど、彼の案は勝ち負けという結果に悔しさは発生するかもしれないが、誰も金銭的にも身体的にも傷つかない。

 

一方私は元来の引きこもり。外で遊ぶくらいなら部屋でお絵描きをしたり本を読んでいたかった。

更に負けず嫌いな平和主義なので基本的には勝負事には挑まないが、ひとたび巻き込まれて負けようものなら、一気に悔しさが湧き上がってきて再度勝負を挑んでしまう面倒臭さがある。

だからはなから罰ゲームのある勝負事など、全力で避ける。

 

もうここで、なんで私たち付き合ってんの? という疑問さえ生じる真逆な性格をしている。

 

 

軽いところで言うと、使い捨てカイロはレインボーさんが貼らないタイプ派で私は貼るタイプ派。

レインボーさんは身体を張ったお笑いが好きで、私は作り込んだコントが好き。

 

 

映画やドラマはわざわざ自分から見ないレインボーさん。私もそんなに見る方ではないけれど、偶に滅茶苦茶ハマって同じ映画を何度も観に行くことがある。

一度、ミュージカル映画とゴジラならどちらを観るかと尋ねたら「ミュージカル」と返ってきた。ただこれは、二択で迫られたから出た回答であって、たぶんどっちにも興味はないと思われる。

私は物語の時代背景や人物の個性や感情を考察するのが好きなのだが、それを話してもレインボーさんからは「ふーん」な反応しか返ってきたことがない。

 

 

私はだいたいどんな動物も平気で、特に猫が好きだ。いつか飼いたいと思っている(ただし例外として爬虫類と両生類が苦手)

だがレインボーさんは動物と触れ合うことすら避ける。

お友達がキャンプに飼い犬の小型犬を連れてきたことがあったけれど、モフモフに飢えていた私が滅茶苦茶に戯れていたのを、近くにはいたけれど絶対的な距離を保って彼は見ていた。

 

ここまでくると過去に動物と何かあったのではないかと思うが、特に何もないと言う。アレルギーも調べてはいないが、無いだろうとのこと。

 

アレルギーがないのであれば、1匹くらい猫を飼っても良いのではないかと思って、一時期ことあるごとにおねだりめいたことをした。いずれは一緒に住むことも視野に入っているのをいいことに、唐突に「ペット可物件……」と呟いてみたこともある。

その度にレインボーさんは渋い顔をして「えぇ~」と困惑していた。

 

「ファービーか金魚なら飼ってもいいよ」と返されたときは、ファービーは飼うものではないだろうと言い返してしまったが。

 

だが、この「猫を迎える」については私が折れることにした。

決定的だったのは、「猫と、生活が、したいです!」と一句一句区切りながら訴えた私に対し、彼が無言を貫いたこと。

前を向いたまま、表情を変えずにただ無言。

 

私はそれを「どうぞ。自分は一切関わりませんから」と言っているように聞こえたし、確認したらその通りだと言う。

 

そんなところで心が通じ合ってもなぁ~(嘆)

 

ここまで拒絶されてしまった以上、ゴリ押しをすれば初めて本気でレインボーさんを怒らせてしまうかもしれない。喧嘩じゃなくて、怒られる。

 

私が猫を愛でること自体は何も言わないで自由にさせてくれているのだから、充分に感謝だ。

 

 

続いて「食」で言えば、私たちはお酒が共通の趣味ともいえる。私は生酒など冷酒が大好きだが、レインボーさんはやや癖のある焼酎が好きだ。

 

更に言うと私はレバ刺しが大好きで、某焼肉店の事件がきっかけで生レバーが飲食店で提供されなくなったことをいまだに嘆いている(ごく一部の飲食店では稀に提供されているようだが)

一方で、レインボーさんは「レバーとか意味が分からない」と言う。

 

同じく、大葉と椎茸も理解出来ない食材だという。どうやら香りと食感が独特なモノが受け付けられないらしい。でも生ピーマンの肉味噌のせはよく食べてるのにな……。

 

ここでもレインボーさんの良いところは、決して私が好きなものを非難しないこと。

 

 

私が犬や猫を見たり撫でたりして和んでいるのを、ただ少し距離を取って眺めている。

食べ物でも、レインボーさんが苦手なものはだいたい私は平気だ。無言で天婦羅の大葉や茶碗蒸しの椎茸を、私の皿に移してくるのもちょっと笑いながら受け入れている。

レインボーさんは目の前で私がレバーの串焼きを食べたり、大葉入りの料理を食べていても、無言で自分の好きなものを食べている。

 

端的に言って、好き嫌いがはっきりしているので、自分の嫌いなものには一切関わろうとはしない。

 

私の好きなことを共有出来ない寂しさを感じないわけではないけれど、『お互いの好き嫌いを否定しない』というのは付き合いを続ける中でかなり重要なのではないかと、彼を見ているとそう思わざるを得ない。それが彼の優しさなのだと思う。

 

これまでに書いたことがあるかもしれないが、私たちは喧嘩をしたこともない。というより、喧嘩にならない。やはりそれも、彼が優しくて人間が出来ているから。

 

いったいレインボーさんは人生何周目なのだろう。

 

私が何かおかしなことを言っても笑ったり驚いたりしつつ、そんな発想もあるんだと受け止めてくれる。さすがに汚部屋についてはかなりの苦言を、嫌味にならないように呈してくれたけれど。

そこは確かに自覚はあったので、素直に片付けを頑張った。おかげで今では直前にちょっと慌てはするけれど、部屋に上がってもらっても平気なくらいな部屋にはなれた。

 

よく「散らかってるから、5分待って!」なんて漫画やドラマで見るけれど、まぁ、そのレベルにはなれたかな、と思っている。半年前の私の部屋なら、1ケ月待たせても無理だったから。

 

因みにレインボーさんの部屋は本人曰く「野郎の部屋にしては綺麗な方だと思う」と。

 

なんか、また意味もなく悔しい。

 

 

優しさに甘えつつ、どこか負けず嫌いな対抗意識を抱いている私と、いつでもどっしり自分を持っているレインボーさん。勝負にならない辺りも、ある意味今のバランスが取れているのかもしれない。

 

 

さて、いよいよ年末。私の誕生日とかクリスマスとか大晦日とか、イベント目白押し。

更に事件が起きそうな予感。

 

【続く……】

 

【連載】絶妙アンバランス①「温度差の激しいふたり」

本日より、年内最後の連載ブログを掲載したいと思います。ちゃんと年内に終わるかな? ちょっと盛り込みますが、頑張って急いで書きます。では、どうぞ。

 

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11月に入ったものの、暖かい日が続いていたある日、レインボーさんから海鮮丼を食べに行こうと誘われて漁港の町へドライブデートに出掛けた。

 

山育ちの私は海が見えると子供のようにわくわくしてしまう。関の海はとても澄んでいて綺麗で、更にこの日は快晴だったので爽快感割り増し。

 

小一時間ほど走っただろうか。道の駅に立ち寄りつつ、目的地の食堂に到着したのだが週末のお昼時。約30分の順番待ちが出来ていた。

勿論待つ。海鮮は大好きだ。待っていろ、関アジ関サバ!

 

食堂の前は道路を挟んで海岸が広がっている。素晴らしい解放感だ。行ってみたい! 近くで海を見たい! でも、レインボーさんはあまり乗り気ではない様子。嫌がることは無理強いしないのが私たちの暗黙の了解。偶にちょっと我が儘におねだりすることはあるけれど、今のはそれやっちゃいけないな、となんとなく空気を感じた。

 

館内のお土産売り場のコーナーをのんびりと物色する。地元の名産品や、うっかりレインボーさんの嫌いな紫蘇入り商品に反応して、素っ気ない態度を取られてショボンとしてしまう、そんな時間も楽しい。反省はしたけど。

 

やがて順番が来て名前を呼ばれ、席に案内された。タブレットで注文をして、私がセルフのお水やお茶を取りに行く。いつの間にか定着した行動だが、それが私にとっては自然なことだ。

 

そもそも私は社会性も人間性もへなちょこなので、「男はこうあるべき」とか「女はこうすべき」とか、あるいはその逆なんて通念がいまいち理解出来ていない。衝突しあわないで、自分の好きなようにすればいいやん。相手がそれに合わないなら、相性悪いんだからお互いに関わらなきゃいいだろうに、てのが私の考え。

 

だから、彼と食事に出掛けてお冷がセルフなら率先して取りに行って「はい、どうぞー」と差し出すのは、私が女で彼が男だからとかじゃなくて、私が彼にそうしたいと思うから。

 

それが女という生き物だと言われてしまえば、まぁ私、女ですから。そういうものだと言われたら、そういうことなのかもしれませんね、とは思う。

 

やがて、運ばれてきた器から溢れんばかりの海鮮を堪能。つやつやプリコリな食感、磯の香にお互いに大満足。いつも楽しい時間を過ごさせてくれるレインボーさんには感謝しかない。

長距離運転は苦ではない、というようなことを言われたことはあるが、それにしたっていつも甘えてばかりでなんだか申し訳ないな、なんて思っていた。

 

このドライブのあと、実は私たちにとって事件が起きる。

 

この日は前述のように天気は良かったが、さすがに11月。時折冷たい風も吹いていた。

海沿いということも影響していたのかもしれないが、とにかくレインボーさんの咳が酷かった。

 

本人は「寒暖差で喉がやられたんだと思う」と言うけれど、それにしたって胸の深い部分からせり上がるように苦しそうに、何度も何度も咳き込む姿は見ていて痛々しい。

 

海鮮丼をあとは更に足を伸ばして津久見へ、ぎょろっけを買いに行こうという話になる。製造工場で食べる出来立てのぎょろっけは格別だとレインボーさんはいう。

私もぎょろっけは好きなので、楽しみに彼の運転に身を委ねた。

 

だが、やはり気になるのは彼の激しい咳き込み。かなりツラそうだ。

先程は寒暖差の影響だと言っていたが、寒暖差アレルギーだと診断されたわけではない。これは病院で診てもらうべきではないかと思い始めた。

 

間もなく、カーナビは目的地を示した。だがそこは閑散としている。

ぎょろっけの工場は、休業日であった。日曜日だったので、そりゃ当然想定出来たな。

 

ふたりで残念がったり笑ったりしつつ、この日はもうかなりの距離を運転していたレインボーさん。私をアパートまで送り届ける為に、高速道路を利用して帰路に着いた。高速道路は海岸から離れた山の中を通っている。

 

見るだけでテンション上がる海だけど、また一緒に来ればいいさ。

 

アパートの近くまで戻ってきたところで、不意にレインボーさんがショッピングモールに寄ると言った。地元有名飲食店が特別出店するイベントが開催されていたのだが、なんとそこで先程空振りしたぎょろっけのお店の商品が並んでおり大爆笑。

出来立てではなかったけれど、揃って口がぎょろっけになっていた私たちは迷わず購入。その夜の晩酌のお供が決定した。

 

別れ際も彼の咳が気にかかり、行けるなら病院に行った方が良いと何度も伝えた。

その夜は、彼に買ってもらったウィスキーのハイボールとぎょろっけを頂き、程よい疲れの中で眠りについた。

 

翌日早朝。彼からLINEが来ていた。

午前3時頃から咳が激しくなり、眠れなかったこと。今日は仕事を休んで病院へ行くこと。もしも感染する病気だったらごめん、と。

 

新型コロナの抗原検査キッドは持っていたそうで、それによるとさいわい新型コロナは陰性だった模様。

では、次の疑いはインフルエンザ。実際、この時期は全国的にインフルエンザ感染が急増していると連日ニュースで流れていた。

 

もしこれで彼がインフルエンザに感染していたとしたら、前日の激しい咳は間違いなくそれだろうし、そうなると車内で何時間も一緒に過ごした私にも感染している可能性が限りなく高い。

 

その後も頭痛や身体の痛みに、一気に上昇し始めた体温など逐一報告してくれる彼を気に掛けつつ、無職の私も念の為に解熱鎮痛剤を服用したり体温をまめにチェックした。

 

そして昼、厳しい現実を突きつけられた。

掛かりつけを受診した彼からの「インフルエンザA型に感染」との一報。

うん、いやまぁ、そうだろうね。

 

海鮮丼デートの2日前に、レインボーさんはいつものひとり飲みに出掛けて繁華街を歩いていたので、おそらくそのどこかでもらってしまったのだろうと推測。

海鮮丼のお店と、ショッピングモールでも周囲に感染させてしまった可能性があるのが心苦しい。

 

私は運良くというか、この時はまだ無職だったのでとにかくひたすら寝た。この日は大して症状は出なかったが、翌日に事態は変わった。

体温は平熱なのだが、咳が酷く出始めた。苦しい。これはヤバい。

 

体温が高くはないので、もしかしたら陽性反応は出ないかもしれないが、絶対に間違いなく私もインフルエンザ(しかもA型)に違いない。

午後からではあるが、徒歩10分圏内の総合病院へ向かった。

 

感染症の疑いがあるので当初はパーテーションに仕切られたスペースで待機していたが、なんとと言うかやはりと言うか、結果は「陰性」

咳の薬を処方されて終了。

 

いやいや、そんな訳はない。

大量にゼリー飲料やアイスクリーム、ポカリやローテーション用のアイスノンを購入し帰宅。胃腸に負担を掛けないように、体力を無駄にしないように過ごした。

 

2日後、一気に体温が上昇して再受診。めでたく(?)インフルエンザA型との診断が出た。

 

再受診と言うこともあって話が早く、イナビルを処方されて帰宅。晴れてふたり揃って仲よく寝込むことになったのである。

 

独り暮らし歴が長い上に元来の引きこもり体質な私は、寝るのは得意。突然寝込んだとしても特に慌てることはなく、堂々たる安静をしていたのだけれど、レインボーさんは私と違って活動的な人だ。何日も寝て過ごすのは苦痛だろう。

 

お互いに数日の差はあれど、きっちり1週間寝込んだ私たち。

実はレインボーさんからインフルエンザ感染の知らせが入ったとほぼ同時に、私にはもうひとつ大きな事件が起きていた。再就職が決まったのだ。

 

失業給付を受けつつ求職活動をしていた私だったが、面談の度に「今回は見送らせて頂く存じます」的な返答が続いていた。それが今回は担当者が変わり者だったらしく、私なんぞを採用してくれたのだ。なんとありがたい。

 

更にありがたいことに勤務開始は約半月後。それまでにはインフルエンザも余裕で治まっている。

 

インフルエンザは治まったものの、毎日咳を引きずりつつ仕事に邁進しているレインボーさんには申し訳ないけれど、私はじっくりと体調を整えることに集中した。

 

そんな1125日。

クリスマス1ケ月前に、知人が所属するベリーダンスのイベントが開催されるとの案内がきて、レインボーさんと参加することになった。

あ、踊るのではなく、観覧する側で。

 

せっかくのクリスマスと銘打っているのだから、クリスマスカラー・クリスマスコーディネートで参加しないと勿体ない。し〇むらやダイ〇ソーで赤いコートにフェイクファーのスヌードを購入。さり気なくグリーンのタイツに赤い靴で全身でクリスマスを表して待ち合わせの場所へ向かった。

 

現れたレインボーさんの姿は、なんとジャージ。

似合っているんだけれど、そのカジュアルな装い好きだけど! でも、イベントにそれはどうよ!

 

しかも、ここまで固めていたのにレインボーさんは私のクリスマスコーデにまったく気が付いていなかった。頑張ったのに……。

 

更にこの、いかにもクリスマスを意識しましたコーデな私とジャージ姿のレインボーさんの姿を見て、お友達の皆さんは「温度差が激しい!! 」と爆笑。

 

つい少し前に仲良くインフルエンザに感染して寝込んだふたりだけど、こんなにも感性が違っていたとは。

そう言えば、一緒にいるところにレインボーさんのお知り合いに初めて会った時に、「兄妹かと思った」と言われたほど雰囲気の近い私たち。共通項が多いと思っていたけれど、冷静に考えてみると意外と噛み合っていないところも多いかも。

 

これは、彼との将来的なことも考えている以上は、改めて共通点と相違点を見つめ直す必要があるかもしれない。

 

ちょっと時間が必要だ。

 

【続く……】

 

連載企画再スタート…するかも

長らくサボ…じゃなくて、おやすみしていた当ブログ。

この数ヶ月のあいだに、結構いろいろありました。

 

ざっくりいうと、数社就職面接して全滅したり、インフルエンザに罹ったり、今そんなに忙しくないけどって断られた上でお仕事に採用されたりしました(本当にざっくり)

 

実際本当に忙しくないし、基本的に電話対応一切無しという楽園のような職場で若干戸惑いもありますが、なんとかやっています。

 

そんな中、遂に本日48歳の誕生日を迎えました。

毎年誕生日は前日から日付けが変わる瞬間には塩沢兼人さんの声を聴きながら日本酒を飲むのが恒例でしたが、今年は夏に断捨離でコンポ()も手放してしまったので特別編集のMD(更に笑)も聴くことが出来ず。て言うか、明日も仕事だから早く寝ないと、と早々にお薬を飲んで寝てしまったのです。

インフルエンザの後遺症でしょうかね、毎晩激しく苦しい咳に叩き起こされて疲れていたので…。

 

兼人さんへの愛が薄らいだ訳ではないの。少し前にも前を走る車のナンバーが兼人さんのお誕生日で、今日はいい日だな~なんて幸せな気持ちになったくらい。

隣で運転していたのは当然レインボーさん。

 

どちらに対しても浮気じゃないよ。どちらも大切で大好きなのです。

 

そんな日々を、これからも少しずつまた書き溜めては投下していきたいと思います。

 

アラフィフ婚シリーズ第3弾、年末年始に向けて楽しみながら頑張ります。