妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】絶妙アンバランス②「酒と犬猫とレバーと」

レインボーさんと正式にお付き合いを始めて1年と3ケ月が過ぎた。

そろそろ何度目かのクライマックスが訪れることを感じ、改めて彼との関係性を見つめ直すことにした私。

 

まず彼は幼少期から大変やんちゃで腕白だったそうだ。面白そうだと思ったことは何でもやったそうだし、悪戯のセンスも高い。私など思いもつかない罰ゲームなど、泉のごとく次々と提案される。しかもそれが誰も傷つかないという見事なセンスの持ち主。

罰ゲームなどと言うと、大抵は損得が発生して惨めな想いをする人が出てくるものだけれど、彼の案は勝ち負けという結果に悔しさは発生するかもしれないが、誰も金銭的にも身体的にも傷つかない。

 

一方私は元来の引きこもり。外で遊ぶくらいなら部屋でお絵描きをしたり本を読んでいたかった。

更に負けず嫌いな平和主義なので基本的には勝負事には挑まないが、ひとたび巻き込まれて負けようものなら、一気に悔しさが湧き上がってきて再度勝負を挑んでしまう面倒臭さがある。

だからはなから罰ゲームのある勝負事など、全力で避ける。

 

もうここで、なんで私たち付き合ってんの? という疑問さえ生じる真逆な性格をしている。

 

 

軽いところで言うと、使い捨てカイロはレインボーさんが貼らないタイプ派で私は貼るタイプ派。

レインボーさんは身体を張ったお笑いが好きで、私は作り込んだコントが好き。

 

 

映画やドラマはわざわざ自分から見ないレインボーさん。私もそんなに見る方ではないけれど、偶に滅茶苦茶ハマって同じ映画を何度も観に行くことがある。

一度、ミュージカル映画とゴジラならどちらを観るかと尋ねたら「ミュージカル」と返ってきた。ただこれは、二択で迫られたから出た回答であって、たぶんどっちにも興味はないと思われる。

私は物語の時代背景や人物の個性や感情を考察するのが好きなのだが、それを話してもレインボーさんからは「ふーん」な反応しか返ってきたことがない。

 

 

私はだいたいどんな動物も平気で、特に猫が好きだ。いつか飼いたいと思っている(ただし例外として爬虫類と両生類が苦手)

だがレインボーさんは動物と触れ合うことすら避ける。

お友達がキャンプに飼い犬の小型犬を連れてきたことがあったけれど、モフモフに飢えていた私が滅茶苦茶に戯れていたのを、近くにはいたけれど絶対的な距離を保って彼は見ていた。

 

ここまでくると過去に動物と何かあったのではないかと思うが、特に何もないと言う。アレルギーも調べてはいないが、無いだろうとのこと。

 

アレルギーがないのであれば、1匹くらい猫を飼っても良いのではないかと思って、一時期ことあるごとにおねだりめいたことをした。いずれは一緒に住むことも視野に入っているのをいいことに、唐突に「ペット可物件……」と呟いてみたこともある。

その度にレインボーさんは渋い顔をして「えぇ~」と困惑していた。

 

「ファービーか金魚なら飼ってもいいよ」と返されたときは、ファービーは飼うものではないだろうと言い返してしまったが。

 

だが、この「猫を迎える」については私が折れることにした。

決定的だったのは、「猫と、生活が、したいです!」と一句一句区切りながら訴えた私に対し、彼が無言を貫いたこと。

前を向いたまま、表情を変えずにただ無言。

 

私はそれを「どうぞ。自分は一切関わりませんから」と言っているように聞こえたし、確認したらその通りだと言う。

 

そんなところで心が通じ合ってもなぁ~(嘆)

 

ここまで拒絶されてしまった以上、ゴリ押しをすれば初めて本気でレインボーさんを怒らせてしまうかもしれない。喧嘩じゃなくて、怒られる。

 

私が猫を愛でること自体は何も言わないで自由にさせてくれているのだから、充分に感謝だ。

 

 

続いて「食」で言えば、私たちはお酒が共通の趣味ともいえる。私は生酒など冷酒が大好きだが、レインボーさんはやや癖のある焼酎が好きだ。

 

更に言うと私はレバ刺しが大好きで、某焼肉店の事件がきっかけで生レバーが飲食店で提供されなくなったことをいまだに嘆いている(ごく一部の飲食店では稀に提供されているようだが)

一方で、レインボーさんは「レバーとか意味が分からない」と言う。

 

同じく、大葉と椎茸も理解出来ない食材だという。どうやら香りと食感が独特なモノが受け付けられないらしい。でも生ピーマンの肉味噌のせはよく食べてるのにな……。

 

ここでもレインボーさんの良いところは、決して私が好きなものを非難しないこと。

 

 

私が犬や猫を見たり撫でたりして和んでいるのを、ただ少し距離を取って眺めている。

食べ物でも、レインボーさんが苦手なものはだいたい私は平気だ。無言で天婦羅の大葉や茶碗蒸しの椎茸を、私の皿に移してくるのもちょっと笑いながら受け入れている。

レインボーさんは目の前で私がレバーの串焼きを食べたり、大葉入りの料理を食べていても、無言で自分の好きなものを食べている。

 

端的に言って、好き嫌いがはっきりしているので、自分の嫌いなものには一切関わろうとはしない。

 

私の好きなことを共有出来ない寂しさを感じないわけではないけれど、『お互いの好き嫌いを否定しない』というのは付き合いを続ける中でかなり重要なのではないかと、彼を見ているとそう思わざるを得ない。それが彼の優しさなのだと思う。

 

これまでに書いたことがあるかもしれないが、私たちは喧嘩をしたこともない。というより、喧嘩にならない。やはりそれも、彼が優しくて人間が出来ているから。

 

いったいレインボーさんは人生何周目なのだろう。

 

私が何かおかしなことを言っても笑ったり驚いたりしつつ、そんな発想もあるんだと受け止めてくれる。さすがに汚部屋についてはかなりの苦言を、嫌味にならないように呈してくれたけれど。

そこは確かに自覚はあったので、素直に片付けを頑張った。おかげで今では直前にちょっと慌てはするけれど、部屋に上がってもらっても平気なくらいな部屋にはなれた。

 

よく「散らかってるから、5分待って!」なんて漫画やドラマで見るけれど、まぁ、そのレベルにはなれたかな、と思っている。半年前の私の部屋なら、1ケ月待たせても無理だったから。

 

因みにレインボーさんの部屋は本人曰く「野郎の部屋にしては綺麗な方だと思う」と。

 

なんか、また意味もなく悔しい。

 

 

優しさに甘えつつ、どこか負けず嫌いな対抗意識を抱いている私と、いつでもどっしり自分を持っているレインボーさん。勝負にならない辺りも、ある意味今のバランスが取れているのかもしれない。

 

 

さて、いよいよ年末。私の誕生日とかクリスマスとか大晦日とか、イベント目白押し。

更に事件が起きそうな予感。

 

【続く……】