妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】汚部屋からの脱却⑦「散らかった部屋への昇格」

アラフィフ婚シリーズ(というメインタイトルがあった)の第1章「汚部屋からの脱却」も、今回でお終いです。明日からは折り返しの新章がスタートします。

書いている自分自身でさえ、こんなだらしのない女で本当にいいのかとレインボー氏に問いたいです。

読んでくださっている方も、きっと同じお気持ちではないかと思いますが、どうぞ気長にお付き合いください。

 

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レインボー氏とお付き合いを始めて半月も経たぬうちから、周囲のお友達から会うたびに「ふたりとも早く結婚しよ」と囃し立てられた。知りあってから3年は経っていたし、早くから彼が私を好いていてくれたことは私以外には周知の事実だったので、お友達は嬉しかったのだろう。それだけみんな、レインボー氏を応援してくれていたのだ。本当に、私の鈍さがここまで時間をかけさせてしまったことに、申し訳ない思いでいっぱいである。

 

だが、さすがに会うたびに結婚しろコールを浴びるはつらいものがある。若い頃の勢いとか衝動というのは、さすがにアラフィフともなると抑える傾向になる。長い時をひとりで暮らしてきて、今更他人と共同生活など出来るのだろうか。今後こんなにも大切に思える人と出会うことはないだろうけれど、そこは慎重にならざるを得ない。

 

ある日、いつものように顔を見るなり「結婚しないの?」とぶつけられて、反射的に「事実婚でいいよ」と返してしまった。

 

実は私は以前から、結婚によって姓を統一するという決まりに不満を持っていた。現行圧倒的に女性が改姓するパターンが多いが、仮に私が結婚するとすれば、例に漏れず私が彼の姓を名乗ることになるだろう。

 

私は特にこれといった資格を持っている訳では無い。社会的地位も無い。改姓によって特段不利益を被ることはないだろう。

それでも、夫婦のどちらかが一方的に時間と労力を掛けなければいけない改姓にまつわる一連の手間に納得がいかないのだ。金融口座だけで、開設している数だけ手続きをしなければならない。携帯電話会社にも、クレジット会社にも連絡が必要だ。

 

たったそれだけのことと思われる向きもあるだろうが、選択的夫婦別姓さえ導入されればすべてが解消されるのに、思ってしまう。それが叶わないなら、同一世帯の届け出を出して、事実婚でいいと考えていた。

 

それに対し、お友達のひとりからお叱りを受けてしまった。かなりの要約になるけれど、彼の家に失礼だと。

 

レインボー氏の家に反発している訳ではもちろん無い。そもそも、まだご両親に会ったことすら無い。私はレインボー氏との将来なら考えることが出来るけれど、まだ彼のご家族とのお付き合いを考えられるまで至っていなかった。

 

更に言えば、まだその時点でレインボー氏とは一度も結婚の話をしたことが無かった。

いや、私からそれとなく尋ねてみたことはあった。でも、その時のレインボー氏の返答は「その時はその時。なるようになる」だった。だからそれ以降、その話題には触れないようにしていた。

もし将来の見解にお互いの温度差があったとしたら、それを知るのが怖かった。反射的とは言え自分は事実婚を希望していると公言してしまったのは、まさに痛恨の極みだった。

 

お友達はまだ不服そうだったけれど、そこはレインボー氏が宥めてくれて矛を収めてくれた。

 

あとでレインボー氏には、あなたに話す前にみんなの前で私の考えを公表する形になってごめんなさいと謝罪した。その時もレインボー氏は「急いで決めることでも無いよ」と流していた。もし何か彼に不満があるかと問われたら、こういうところだと言いたい。恋人として付き合えていれば良いのか、その先も考えてくれているのかが分からない。

 

 

結婚を急かすのと同時に、この当時お友達から促されていたことがもうひとつある。それは、私の住むアパートにレインボー氏を招待すること。結婚もそうだが、そうすることが当然という様子で早く彼を部屋へ上げてやれと言うのだ。

 

だが、その時点でご存じのとおり私の部屋は年季の入った汚部屋。無理。

 

本気で汚部屋専門の清掃業者に依頼が必要だと思っていたほど酷い有り様だったので、片付ける気力さえ当初は湧かず、ずっと「部屋が散らかってるから」「汚部屋だから」と言い訳をして逃げていた。当然レインボー氏やお友達からは「片付けなさい」と正しい反応を得る。それでも私は半年も抵抗していた。

 

ある時自分の中のスイッチが入って、玄関の片付けから手を付け始めた。そこからゆっくりではあるが着実に物を失くし、部屋のスペースを広げ、レインボー氏に定期的に片付けの進捗をLINEで報告した。

暑がりのレインボー氏が過ごしやすくなるようにと思って、面倒だと思っていたエアコン交換の交渉もした。その為に仕事に影響が出るほど電話が苦手な私が、何度もアパートの管理会社に電話をかけたのも自分で驚いている。

 

 

今、部屋は余裕で床で大の字になれるほど片付いた。まだ若干分別に迷う荷物が部屋の隅に寄せられているが、レインボー氏に来てもらう分には何も問題は無い。

 

初めて汚部屋を見てもらった日から約3週間。改めてレインボー氏に部屋へ来てもらったところ「うん、汚部屋じゃなくなった。散らかった部屋になった」と言ってくれた。

 

「昇格?」

 

「うん、昇格」

 

にこりと微笑んでくれて、嬉しくて顔が弛む。

 

一区切りは付いたけれど、まだ片付けは完璧には終わっていない。最終目標は『清潔感のある部屋』である。押入れがまだ手付かずだから、次はここかな。

お台所のキャスター付きのワゴンが傷んできているから、それを廃棄して食器棚を買いたいとも思っている。毎年増えているパン祭りの白いお皿を納める場所が必要だ。

 

 

何年も溜め込んでいたものを、自力でもうどうにも出来ないとまで思っていたものを数ヶ月で片付けた私偉い。そこまで導いてくれたレインボー氏や、協力し励ましてくれたお友達にも感謝だ。

 

部屋は明るくなり、エアコンの交換で空調は快適、床に積み上げられていた本の山も無くなり、一日仕事だった洗濯も超短縮された。これからはいつでもレインボー氏に部屋に来てもらえる。その為には最低でも現状を維持し続ける必要があるけれど、自分に怠ける隙を与えないのが重要。

 

レインボー氏の存在があればきっと大丈夫。うん、たぶん。

 

【続く……】