アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚夫婦の日常つれづれ日記

【連載】絶妙アンバランス①「温度差の激しいふたり」

本日より、年内最後の連載ブログを掲載したいと思います。ちゃんと年内に終わるかな? ちょっと盛り込みますが、頑張って急いで書きます。では、どうぞ。

 

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11月に入ったものの、暖かい日が続いていたある日、レインボーさんから海鮮丼を食べに行こうと誘われて漁港の町へドライブデートに出掛けた。

 

山育ちの私は海が見えると子供のようにわくわくしてしまう。関の海はとても澄んでいて綺麗で、更にこの日は快晴だったので爽快感割り増し。

 

小一時間ほど走っただろうか。道の駅に立ち寄りつつ、目的地の食堂に到着したのだが週末のお昼時。約30分の順番待ちが出来ていた。

勿論待つ。海鮮は大好きだ。待っていろ、関アジ関サバ!

 

食堂の前は道路を挟んで海岸が広がっている。素晴らしい解放感だ。行ってみたい! 近くで海を見たい! でも、レインボーさんはあまり乗り気ではない様子。嫌がることは無理強いしないのが私たちの暗黙の了解。偶にちょっと我が儘におねだりすることはあるけれど、今のはそれやっちゃいけないな、となんとなく空気を感じた。

 

館内のお土産売り場のコーナーをのんびりと物色する。地元の名産品や、うっかりレインボーさんの嫌いな紫蘇入り商品に反応して、素っ気ない態度を取られてショボンとしてしまう、そんな時間も楽しい。反省はしたけど。

 

やがて順番が来て名前を呼ばれ、席に案内された。タブレットで注文をして、私がセルフのお水やお茶を取りに行く。いつの間にか定着した行動だが、それが私にとっては自然なことだ。

 

そもそも私は社会性も人間性もへなちょこなので、「男はこうあるべき」とか「女はこうすべき」とか、あるいはその逆なんて通念がいまいち理解出来ていない。衝突しあわないで、自分の好きなようにすればいいやん。相手がそれに合わないなら、相性悪いんだからお互いに関わらなきゃいいだろうに、てのが私の考え。

 

だから、彼と食事に出掛けてお冷がセルフなら率先して取りに行って「はい、どうぞー」と差し出すのは、私が女で彼が男だからとかじゃなくて、私が彼にそうしたいと思うから。

 

それが女という生き物だと言われてしまえば、まぁ私、女ですから。そういうものだと言われたら、そういうことなのかもしれませんね、とは思う。

 

やがて、運ばれてきた器から溢れんばかりの海鮮を堪能。つやつやプリコリな食感、磯の香にお互いに大満足。いつも楽しい時間を過ごさせてくれるレインボーさんには感謝しかない。

長距離運転は苦ではない、というようなことを言われたことはあるが、それにしたっていつも甘えてばかりでなんだか申し訳ないな、なんて思っていた。

 

このドライブのあと、実は私たちにとって事件が起きる。

 

この日は前述のように天気は良かったが、さすがに11月。時折冷たい風も吹いていた。

海沿いということも影響していたのかもしれないが、とにかくレインボーさんの咳が酷かった。

 

本人は「寒暖差で喉がやられたんだと思う」と言うけれど、それにしたって胸の深い部分からせり上がるように苦しそうに、何度も何度も咳き込む姿は見ていて痛々しい。

 

海鮮丼をあとは更に足を伸ばして津久見へ、ぎょろっけを買いに行こうという話になる。製造工場で食べる出来立てのぎょろっけは格別だとレインボーさんはいう。

私もぎょろっけは好きなので、楽しみに彼の運転に身を委ねた。

 

だが、やはり気になるのは彼の激しい咳き込み。かなりツラそうだ。

先程は寒暖差の影響だと言っていたが、寒暖差アレルギーだと診断されたわけではない。これは病院で診てもらうべきではないかと思い始めた。

 

間もなく、カーナビは目的地を示した。だがそこは閑散としている。

ぎょろっけの工場は、休業日であった。日曜日だったので、そりゃ当然想定出来たな。

 

ふたりで残念がったり笑ったりしつつ、この日はもうかなりの距離を運転していたレインボーさん。私をアパートまで送り届ける為に、高速道路を利用して帰路に着いた。高速道路は海岸から離れた山の中を通っている。

 

見るだけでテンション上がる海だけど、また一緒に来ればいいさ。

 

アパートの近くまで戻ってきたところで、不意にレインボーさんがショッピングモールに寄ると言った。地元有名飲食店が特別出店するイベントが開催されていたのだが、なんとそこで先程空振りしたぎょろっけのお店の商品が並んでおり大爆笑。

出来立てではなかったけれど、揃って口がぎょろっけになっていた私たちは迷わず購入。その夜の晩酌のお供が決定した。

 

別れ際も彼の咳が気にかかり、行けるなら病院に行った方が良いと何度も伝えた。

その夜は、彼に買ってもらったウィスキーのハイボールとぎょろっけを頂き、程よい疲れの中で眠りについた。

 

翌日早朝。彼からLINEが来ていた。

午前3時頃から咳が激しくなり、眠れなかったこと。今日は仕事を休んで病院へ行くこと。もしも感染する病気だったらごめん、と。

 

新型コロナの抗原検査キッドは持っていたそうで、それによるとさいわい新型コロナは陰性だった模様。

では、次の疑いはインフルエンザ。実際、この時期は全国的にインフルエンザ感染が急増していると連日ニュースで流れていた。

 

もしこれで彼がインフルエンザに感染していたとしたら、前日の激しい咳は間違いなくそれだろうし、そうなると車内で何時間も一緒に過ごした私にも感染している可能性が限りなく高い。

 

その後も頭痛や身体の痛みに、一気に上昇し始めた体温など逐一報告してくれる彼を気に掛けつつ、無職の私も念の為に解熱鎮痛剤を服用したり体温をまめにチェックした。

 

そして昼、厳しい現実を突きつけられた。

掛かりつけを受診した彼からの「インフルエンザA型に感染」との一報。

うん、いやまぁ、そうだろうね。

 

海鮮丼デートの2日前に、レインボーさんはいつものひとり飲みに出掛けて繁華街を歩いていたので、おそらくそのどこかでもらってしまったのだろうと推測。

海鮮丼のお店と、ショッピングモールでも周囲に感染させてしまった可能性があるのが心苦しい。

 

私は運良くというか、この時はまだ無職だったのでとにかくひたすら寝た。この日は大して症状は出なかったが、翌日に事態は変わった。

体温は平熱なのだが、咳が酷く出始めた。苦しい。これはヤバい。

 

体温が高くはないので、もしかしたら陽性反応は出ないかもしれないが、絶対に間違いなく私もインフルエンザ(しかもA型)に違いない。

午後からではあるが、徒歩10分圏内の総合病院へ向かった。

 

感染症の疑いがあるので当初はパーテーションに仕切られたスペースで待機していたが、なんとと言うかやはりと言うか、結果は「陰性」

咳の薬を処方されて終了。

 

いやいや、そんな訳はない。

大量にゼリー飲料やアイスクリーム、ポカリやローテーション用のアイスノンを購入し帰宅。胃腸に負担を掛けないように、体力を無駄にしないように過ごした。

 

2日後、一気に体温が上昇して再受診。めでたく(?)インフルエンザA型との診断が出た。

 

再受診と言うこともあって話が早く、イナビルを処方されて帰宅。晴れてふたり揃って仲よく寝込むことになったのである。

 

独り暮らし歴が長い上に元来の引きこもり体質な私は、寝るのは得意。突然寝込んだとしても特に慌てることはなく、堂々たる安静をしていたのだけれど、レインボーさんは私と違って活動的な人だ。何日も寝て過ごすのは苦痛だろう。

 

お互いに数日の差はあれど、きっちり1週間寝込んだ私たち。

実はレインボーさんからインフルエンザ感染の知らせが入ったとほぼ同時に、私にはもうひとつ大きな事件が起きていた。再就職が決まったのだ。

 

失業給付を受けつつ求職活動をしていた私だったが、面談の度に「今回は見送らせて頂く存じます」的な返答が続いていた。それが今回は担当者が変わり者だったらしく、私なんぞを採用してくれたのだ。なんとありがたい。

 

更にありがたいことに勤務開始は約半月後。それまでにはインフルエンザも余裕で治まっている。

 

インフルエンザは治まったものの、毎日咳を引きずりつつ仕事に邁進しているレインボーさんには申し訳ないけれど、私はじっくりと体調を整えることに集中した。

 

そんな1125日。

クリスマス1ケ月前に、知人が所属するベリーダンスのイベントが開催されるとの案内がきて、レインボーさんと参加することになった。

あ、踊るのではなく、観覧する側で。

 

せっかくのクリスマスと銘打っているのだから、クリスマスカラー・クリスマスコーディネートで参加しないと勿体ない。し〇むらやダイ〇ソーで赤いコートにフェイクファーのスヌードを購入。さり気なくグリーンのタイツに赤い靴で全身でクリスマスを表して待ち合わせの場所へ向かった。

 

現れたレインボーさんの姿は、なんとジャージ。

似合っているんだけれど、そのカジュアルな装い好きだけど! でも、イベントにそれはどうよ!

 

しかも、ここまで固めていたのにレインボーさんは私のクリスマスコーデにまったく気が付いていなかった。頑張ったのに……。

 

更にこの、いかにもクリスマスを意識しましたコーデな私とジャージ姿のレインボーさんの姿を見て、お友達の皆さんは「温度差が激しい!! 」と爆笑。

 

つい少し前に仲良くインフルエンザに感染して寝込んだふたりだけど、こんなにも感性が違っていたとは。

そう言えば、一緒にいるところにレインボーさんのお知り合いに初めて会った時に、「兄妹かと思った」と言われたほど雰囲気の近い私たち。共通項が多いと思っていたけれど、冷静に考えてみると意外と噛み合っていないところも多いかも。

 

これは、彼との将来的なことも考えている以上は、改めて共通点と相違点を見つめ直す必要があるかもしれない。

 

ちょっと時間が必要だ。

 

【続く……】