もはやサブタイトルの方向性が分からなくなっているが、本日も結婚式の様子を綴りたいと思う。
隠し部屋の窓から、外の大階段の一部が見える。ゲストの皆さんがフラワーシャワーの準備をして待機してくれている。暑そうだ。
年々暑さを増している日本。今日が天候に恵まれたのは良かったのだが、恵まれ過ぎである。
大階段、名の通り長いんだよな。これ全部下まで自力で歩いて降りて行かないといけないんだよな。
ドレスの裾踏んで躓いて、下まで落ちていく姿しか思い浮かばない……。
いやいや、虹夫さんを巻き込む訳にはいかない。
なにがなんでも一緒に無事に降りて行かなくては。
扉の前でスタンバイ。虹夫さんリクエストのBGM、ゲーム『ファイナルファンタジーⅣ』のオープニング曲が流れる。荘厳で勇ましい曲での登場だ。今日もう何度目だという緊張が走る。
扉が開き、眩しい太陽のもと、沢山の笑顔に迎えられる。幸せな瞬間ではあるが、心はびくびく。
たぶんこれまでの数多くのご夫婦の中でもかなりゆっくりペースで階段を降りていたのではないだろうか。ここでも虹夫さんとふたりでドレスとつまみ上げての歩みとなった。
が、後からスタッフの方から「ドレスの裾は持ち上げ過ぎないように」とご注意を受ける。
これは披露宴のエンドロールで見て分かるのだが、ローアングルで撮影していたのでドレスを持ち上げ過ぎたことで私の太い太いふくらはぎが丸見えになっていたのだ。
これは、かなり恥ずかしい。
天空の森セントクレアヒルズは丘の上にあるのだけれど、そんな状態をものともしない令和の夏。
ゲストも私たちも汗だく。降りそそがれるはずのフラワーシャワーも、皆さんの手の汗で花びらがくっついて高く舞わない事態に。
中にはくっついて塊状態になった花びらを顔面に向かって投げつけてくる強者もあり。
長く時間をかけながらも階段を最後のステップまで降りきり、達成感を覚える間もなく次はブーケトスである。
ブーケトス用に、式で使用したのとは一回り程小さなブーケを用意して頂いている。
さっしーさんの案内で、独身女性が一ヶ所に集められた。
大好きな姪っ子ちゃんたちには、事前に「是非ブーケトスに参加してね」と呼びかけていたが「え?」とか「なんで?」とか、「後ろの方で見とく」なんてことしか返してくれなかった。悲しい。
まぁ確かに私のブーケとか間違いなく晩婚になりそうだけど、でも確実に素敵な人と巡り会えるのだぞ。
こうなると、私たちと年齢の近いバツあり独身女性の闘志が背後から強く感じられた。
「妙春ちゃん! 右!」「いいや、左で!」などと指示が入り、まさに圧が強い。
私は正面に、ふざけてるのかというくらいに眩しい太陽を望み、腰を虹夫さんに支えてもらう。
テイラースウィフトの「ME」が流れる中、私も虹夫さんも汗だくだ。
私は腕力に自信がない。放り投げて誰の手許にも届かずに地面に落ちてしまうことのないようにとだけひたすらに念じて、思いっきりブーケを高く放り投げた。
わぁーっという悲鳴のような歓声が上がり、拍手が起きた。良かった、誰かの手にブーケは渡ったのだ。だが、誰の手に?
虹夫さんと同時に、意を決して振り返る。
そこにはブーケをしっかりと掴み、驚きつつ歓喜で破顔した虹夫さんのお友達。
私でいいの? と興奮して叫んでいたけれど、勿論いいですとも! 是非バトンタッチでお友達さんにも幸せになって頂きたい。
その幸せが、今回のように結婚という形は限らないけれど。
そのお友達さんと記念の撮影をして、ゲストの皆さんは披露宴会場へ。私たちは化粧直しへと別行動。
その時、ゲストの中から女性の声が上がった。
「虹夫さん! ブーケあと2つ増やしよ!」
私と虹夫さんの仲を最大に後押ししてくれた方だった。この日のブーケトスに意欲を燃やしていたひとりらしい。
後から複数のお友達が撮影してくれた動画を観てみると、やや斜に見守る姪っ子ちゃん3人に、私の後ろに陣取る3人の友人たち。その前には小学2年生の虹夫さんの親族ちゃん。
他にも3人ほど虹夫さんのご親族がいた様子。
私の投げたブーケは思いのほか高く遠くへ飛んでいって、最後部に陣取っていた女性がピョンと飛んだ両手にすっぽりと収まっていた。
その時の、ブーケを取れなかった女性陣の悔しそうでありながら最高の笑顔を見ると、この結婚式、やって良かったのかな、などと感じるのだった。
さすがにブーケの数は増やせないけれど。
そこは今回の獲得者に新たなブーケを投げて頂ければ……。
あ、これはプレッシャーになるから言ってはいけないな。
次回、もたつき入場からの披露宴前。紫のちゃんちゃんこ編へ続く。