アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい③「給湯器疑惑」

問題は次から次へ。それはまるでネバーエンディングストーリー。

タイトルの意味も分からないまま、第3話スタートです。

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

駐車場問題が棚上げになってしまったので、レインボー氏がアパートへ来るのは月に2回程度。街中でお互いにへべれけに飲んだ後に、タクシーで移動するということとなった。一晩泊まって、翌朝一番かその次のバスで街中へ車を取りに戻り、自宅へ帰るという流れ。

 

ある日、一旦帰宅するレインボー氏が車を回収したらまた迎えに来るから、竹田市菅生へとうもろこしを買いに行こうと言う。レインボー氏にとって毎年の恒例行事だ。喜んでお出掛けすることにした。

 

菅生の農場で沢山のともろこしを購入した後、知人が営んでいる沖縄そばのお店へ。買ったばかりのとうもろこしを差し入れし、美味しい沖縄そばを食べて、そのまま帰るのかと思ったらディスカウントストアへ行きたいと言うレインボー氏。どうぞどうぞ、何か買いたいものがあるのね。

 

そのお店は前年末にオープンしたばかりで、私は行ったことがなかった。明るく賑やかで、所狭しとならんだ商品をただ眺めて歩くだけでも楽しい。

だがレインボー氏には目的がある。それが何かは聞いていないが、彼が進む方へ一緒に付いて行く。どうやらなかなか見つからないのか、店内の滞在時間だけが伸びていく。そのうちキッチン用品のコーナーへ紛れ込んだ。丁度包丁のコーナーの前に来たので、私はただの雑談のつもりで笑顔で言った。

 

「うちの包丁、独り暮らしする時に百均で買ったやつ」と。

 

するとレインボー氏は一瞬口ごもり、すっと包丁を一本手に取った。

 

「可哀そうだから買ってあげる」

 

え? 買ってほしくて言ったわけじゃないよ! と驚いたけど、確かに長年使っている包丁の切れ味は決して良くはない。なんと言っても使用歴20年以上なのだから。ありがたく買っていただくことにした。

 

その後もお目当ての商品が見つからない様子のレインボー氏は、とうとうシャワーヘッドを探しているのだと教えてくれた。シャワーヘッドか。……どこだろう? 目ぼしいところは一通り見て回ったと思うのだけど。

 

更に歩き回ること数分、ようやくシャワーヘッドのコーナーを見つける。本当に迷路のような店内だ。

レインボー氏は暫く商品を物色して、やがてひとつを手に取った。改めてパッケージを読み込み、納得したような表情をすると、さっと商品を私に差し出す。ん?

 

「はい」

 

「……ん? え? 私の?!」

 

「うん」

 

押し付けるように商品を手渡されて、私は唖然とした。てっきりレインボー氏の実家のシャワー用だと思い込んでいたのだから、ただただ驚いた。

 

実はレインボー氏、昨夜アパートのシャワーを使った時に水圧の弱さが気になったのだと。えぇ、そうかなぁ? と思ったけれど、毎日使っている私には気づきにくいほど徐々に弱っていたのかもしれない。

今後もレインボー氏が来ることを考えるとやはり快適に使っていただきたいので、こちらもありがたく頂戴することにした。

 

 

この後、少し食料品なども買って、こっそり内心で家庭的な雰囲気を楽しんでいたのはここだけの話。そして、レジ直前に先程とは別のシャワーヘッド特設コーナーを見つけて、ふたりで苦笑いしたのもここだけの話。

 

アパートへ送ってもらい、帰宅後早速シャワーヘッドを付け替えて最初のシャワーを浴びる。細かい穴から流れ出るお湯が柔らかくて心地よい。だが、お湯の温度が安定しない。

 

打ち明けるのが遅くなったが、実はうちのシャワーは設定温度を50度にしないとお湯が出ないのだ。それ以下の水温に設定すると、何故か燃焼すら始まらない。更に水温も安定しない。急に熱くなったり水になったりを繰り返す。

 

そのことはレインボー氏にも使ってもらう前に伝えており、シャワーヘッドに加えて給湯器についても早めにガス屋に連絡するなどした方が良いと言われていた。

ガス屋かぁ……。直接連絡するよりも、管理会社経由の方がいいのだろうな。でも少し前にもエアコンとドアホンの工事について管理会社へ電話したばかり。また同じオペレーターさんに対応されたら嫌だな。またこの部屋の住人かよ、とか呆れられないだろうか。

 

そんなことを考えて、なかなか管理会社へ連絡を入れられないまま、次のお泊りのタイミングがきた。だがレインボー氏は私がシャワーを浴びている間に寝てしまった。酔って疲れていることは理解していたが、やはりそんな状況で水温の調整と格闘しながらシャワーを浴びるのは面倒だったのだろう。

 

それはそうだろう。さっぱりして落ち着きたいのに、せわしなく水温調整しながらの入浴なんて、私だって正直嫌だ。自分だけのことだから、これまで面倒臭くて問題を先送りしてきただけだ。

だが今はレインボー氏が絡んでいる以上、もう放置しておくわけにはいかない。

 

私は管理会社へ電話をかけた。例のお客様サービス課だ。そして私の電話を受けたのは前回と同じS氏だった。嫌だと思っていたことほど、現実になるものだ。

S氏の仕事は早く、数分後にはガス屋と連絡がつき、更に30分と経たずに業者の男性がアパートへやって来た。てっきり数日待たされるかと思った。ありがたい。

 

業者さんは早速シャワーのお湯の出を確認しにシャワールームに入るが、すぐにこう言った。

 

「あ~、節水タイプか~」

 

レインボー氏が買ってくれたのは、節水タイプの商品でシャワーヘッドにお湯をワンプッシュで止めるボタンが付いている。そのタイプでは何か問題があるのだろうかと思ったら大問題だった。

節水タイプのヘッドだと、どうしても水圧が低くなるという。水圧が弱くなると、給湯器の温度センサーが反応しにくく、燃焼モードに切り換りにくくなるのだそうだ。

 

えぇ、せっかく買ってもらったのに。

 

業者さんは古い方のヘッドはあるかと聞いてきた。勿論保管している。もし転居することになったら戻しておく為に。取りに行っている間に、業者さんは新しいヘッドを付け直したり、ヘッドを外したままのホースから湯を出した。更にカランの方からも。そしてその度に水圧をリモコンで確認した。

 

「やっぱりこのヘッドだと水圧が低いですね。ホースだけとか、カランなら充分な水圧になるんですけど、ヘッドつけた途端に低くなるんですよ」

 

私もリモコンの水圧表示を見せてもらったが、そこにあったのは「33」という数字。せめて「35」は欲しいという。

でも、古い方のヘッドも水圧は低かったし水温は安定しなかった。そういって業者さんにヘッドをみせてみると、すぐ「あぁ」と納得の表情を見せた。

 

「目が詰まってますね」

 

ふぉーっ! 恥ずかしいー! つまりそれは、私のお手入れ不足!

 

確かに分解してみると、ヘッドの水が出てくる穴が湯垢? ごみ? いや、もうそれが何かなんてどうでもいいけど、びっしり詰まっていたのだ。とにかく恥ずかしい。

 

返してくれれば自分で待ち針とかで解消して付け直すから、業者さんもう帰っていいよ、と言いたくなるくらい彼は長時間、丁寧な仕事ぶりでヘッドの穴をツンツンと突いて詰まりを解消していく。

 

やがてミッションを完了して古い方のシャワーヘッドをホースに繋ぐ。そしてお湯を捻りだす。始めこそ出てきた冷たい水は、瞬く間にお湯へと変わる。そして、その水圧はなんと「55」!

これまでの水圧のなんと弱々しかったことか。そりゃあお湯にはならぬ。

 

「あの、つまりヘッドの詰まりが原因で水圧低かっただっただけで、給湯器にはなんの問題も……」

 

「ありませんね」

 

こうして、シャワーヘッドは旧型に戻ることになった。疑ってすまなかった給湯器よ。

あぁしかし、せっかく買ってもらったのに!!

レインボー氏へは伝えづらいのだが、言わない訳にはいかない。あっさり解決して良かったね、と笑顔で言ってくれるのは分かっている。だからこそ心苦しい。この気持ち、分かってもらえるだろうか。

 

【続く……】