妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】汚部屋からの脱却⑥「二層式28年」

一連の流れの中で、最もたくさんの人に助けてもらったエピソードです。

すべての方へ、感謝に堪えません。

 

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エアコン問題が解決する少し前のこと。レインボー氏といつものお店で飲んでいた。そこへ酒好き仲間からのメッセージで、近くのお店でメンバーA氏の送別会をしていることを知った。転勤で東京へ戻るのだと言う。その方には私も何度かお世話になっていたので、急遽レインボー氏とお店を移動。送別会に飛び入り参加することにした。

 

楽しく飲みながら別れを惜しむようにお話している中で、そのメンバーのA氏の、家電の処分についての話題になった。あれは処分して、これはお友達に譲って、などと話している中で「あとは洗濯機だけなんだよ」と口にした瞬間、思わず「え!」と声が出た。

 

「え? いる? いいよ」

 

「あ、欲しいかも。ちょっと待ってください」

 

丁度お手洗いから戻ってきたレインボー氏に尋ねてみた。「Aさん、洗濯機譲ってもいいって」と。

 

「いいやん! 貰いよ!」即答だった。

 

実は、私は28年前に製造された二層式洗濯機を使っている。しかもベランダで。

古いアパートということもあり、洗濯機の設置場所が屋外なのは仕方が無いとして、物も古いし長年紫外線に晒されているということでかなりガタもきていた。洗濯槽の水は洗濯中に抜けるし、脱水のタイマーは永遠に回り続けるし、給水ホースと洗濯機の繋ぎ目部分は亀裂が入ってチョロチョロだけど水は漏れるし。

一時は本体のどこかで詰まりが起きていたようで、排水するだけでも何時間もかかるようになり、洗濯が一日仕事になっていたこともあった。

 

排水の詰まりはレインボー氏の強い勧めで洗濯槽クリーナーを2回使用したことで解消したけれど、そんな問題大有りな私の洗濯事情を知っているレインボー氏は、若干喰い気味にA氏に言った。

 

「だって今だに二層式なんですよ?」

 

やめてくれ、バラすなよ。のけぞって爆笑されちゃったじゃないか。

 

 

受け渡し方法については追々連絡を取り合って決めることになったが、私はもう完全に譲ってもらう気になっていた。週末のどこかでレインボー氏に軽トラを出してもらうつもりで、あとは自力で出来るようにと全自動洗濯機の設置方法などを動画サイトでチェックした。

 

甘かった。

 

A氏、週末は仕事の打ち合わせで東京に行っているということで平日の、しかも引っ越し完了日までの限られた日程でしか都合がつかないと。

まず最優先されるべきはA氏の都合なので、こちらから無理は言えない。レインボー氏は平日は休みを取るのが難しい。さて困った、どうしよう。A氏は譲渡の都合がつかないなら処分するだけだから気にしないで、と言ってくれるけれど、私には全自動洗濯機が必要なんだ!

 

でもこれはもう諦めるしかないだろうかと一瞬絶望もしたが、そこで思い浮かんだのが三交代勤務の兄。急いでLINEで事情を伝え、お伺いをたてる。なんと、あっさりOK。丁度限られた日程のうち、丸々お休みの日が1日あったようだ。

A氏の都合で18時の受け渡しと言うのは少々渋られたが、軽バンを出してくれることになった。

 

A氏にも了承を得て当日、いよいよ我が家に全自動洗濯機がやって来る。

 

迎えに来てくれた兄の車でマンションに到着すると、既にすぐに車に積み込めるようにエントランス前まで運び出してくれていて感激。しかもひとりでガっと持ち上げて車に載せちゃうA氏。格好いい! 何からなにまでありがとうございます。

 

先方にとっては不用品を譲渡するだけのことだけれど、こちらにしてみれば譲って“頂ける”のだから、お礼の品は外せない。引っ越しの荷物を増やしてしまうのは申し訳なかったが、県産の吟醸酒を差し上げた。A氏はわらしべ長者になったみたいだと笑っていた。

 

さようなら、A氏。またこちらに来る機会があれば、楽しく飲みましょう。

 

 

さてここからがまた大変だった。極力高低差のないルートで帰ろうと配慮してくれる兄。だが、どこをどう走ってもあまり大差なし。

慎重な運転で無事にアパートに着いてからは、エレベーターが無いので2階まで二人でヨタヨタと運び上げ、よっこらよっこらと玄関からベランダへ。前日に二層式をどかしておいた場所にどっかりと据えた。

ここまでやってもらったのだから、あとは自力で頑張ろう。兄にはお礼を、と思ったら、いそいそと洗濯機の安定を取り始める兄。あれ?

 

取り付けについては自力で出来るようにと事前にいくつも動画を見て脳内シミュレーションしていたけれど、兄は最後まで面倒を見てくれる心づもりだったようだ。根っからの兄貴気質である。

 

この安定を取るという行程だが、ベランダというのは外側に向かって傾斜になっている。その為どうしても洗濯機も傾いてしまう。本体の足の長さを調整しても、どうしても右奥の高さが1~2cm足りない。数日前に設置してもらっていたエアコンの室外機も、この傾斜対策に板状のゴムを噛ませていた。よし、ホームセンターへ買いに行こう。

 

幸いアパートの近くにカラーボックスでもお世話になったホームセンターがある為、兄の運転で移動しながら私達は考えた。求める商品の名称が分からない。そして陳列場所も分からない。迷ったりしている時間が惜しい。

 

そこで私はある知人に電話をかけた。リフォーム会社を経営しているS氏。以前からS氏がそのホームセンターを利用していたことは知っていたので、事情を話し、目的の板状のゴムの名称と売り場を教えてもらう。『防振ゴム』というそうだ。持つべきものは、リフォームのプロである。

 

ついでに給水ホースと水栓の蛇口を繋ぐ、ニップルというパーツも併せて購入して再びアパートへ戻ると、引き続き兄の作業でさくさくと設置完了。近くに住んでいるのに、こんなことでもないと連絡すらしない妹で申し訳ない。しかも重労働をさせてしまったし。

 

空も暗くなりだしていたので、試運転は翌日にすることにした。ここまできたら、仮に水漏れなどが起きても私自身でどうにかなる。

 

颯爽と帰ろうとする兄に、サッとお礼の品を渡す。数量限定の白州ハイボール缶。

 

「ん、白州? おぉ! ありがとうございます!」

 

「こちらこそ、ありがとうございます!」

 

「いやいや、あざっす!」

 

「あざっす!」

 

どこの体育会系かというやり取りをして、兄は帰って行った。手にしたハイボール缶を見て、にやりとしているのを私は見逃さなかった。

 

数時間後、グラスに注がれた白州ハイボールの画像と「うまい!」とのメッセージが届いた。やはり酒好きの血は争えない。

 

 

翌朝、試運転して問題なし。改めて洗濯をして、なんだかウキウキで洗濯物を干した。

 

ここからまた次の問題。ベランダに残っている二層式洗濯機の処分。

自治体が発行しているごみ分別事典を参考にして、まず郵便局に行って洗濯機のリサイクル料金を支払い、リサイクル券をもらう。そこで収集運搬業許可業者のリストをもらい、帰宅してから大手から聞いたことのない業者まで複数の事業者に電話をかけ、運搬料金を問い合わせた。

 

一番高かったのが15000円。しかもすぐに積み込めるように廃棄物は外に運び出しておいてください、と。ひとりで二層式洗濯機を、ベランダからだって運び上げるのは無理です。その事業者は主に事業ごみを取り扱っているそうで、個人相手の価格設定がなかったのかもしれない。他は基本料金に2階以上というオプションがついて、5000円以上ばかり。もう少し抑えたいな。

 

そんな中で1件、オプション付きで3500円という破格の事業者に当たる。即決である。回収も翌日来てくれることになり、あまりにも事が順調に進み若干怖くなる。

 

翌日、約束の時間より少し早めに業者さんがやって来た。どうやらご夫婦ふたりで営んでいるようで、主に客との対応と運搬の手助けを奥様が。運搬の殆どは旦那様がやっている様子。旦那様は寡黙な印象だったけれど、奥様はとても感じの良い方。軽いお喋りなんかも交えつつ、手際よく作業を進める。消費税をサービスまでして頂いて、もし次に大型ごみが出た時にはまたこちらにお願いしたいと思った。

 

いつになるかな? このアパートを出る時? それとも、独り暮らしを卒業する時?

 

【続く……】