アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚夫婦の日常つれづれ日記

【連載】アラフィフ婚への道⑩いいよね大人婚

怒涛の前撮りを終えた翌日。

虹夫さんと週末街飲みデートをしていたら母からLINEが届いた。

 

「〇〇(母の弟)にあんたの結婚のこと話したら、絶対に行くて」

 

おま……、式まであと1ケ月ちょっとしかないこのタイミングで……。

 

元々この歳での結婚なので、式は盛大にする気はなかった。親族は兄弟とその家族まで。

だから叔父を招待する予定はなく、当然招待状は発送することなくゲストの人数もとっくに確定していた。

 

なんで今頃伝えたよ母!

問い詰めたところで言い訳しか返ってこないので、翌日には急いで招待状を準備する。幸いにも招待状はまだ予備が残っていたので、兄から教えてもらった叔父の住所を筆ペンで書き、仕事の合間に郵便局へ出向いて寿切手を購入。投函した。

 

と言っても、その仕事の合間がなかなか取れず、叔父の出席希望を知ってから1週間近くが経っていたのだが。その間にも兄を通じて叔父から「招待状が来ないぞ」と催促をされてしまったのには焦った。

 

因みにここで叔父について書いておくと、『曲者』のひとことに尽きる。

祝い事大好き、お祭り大好き、飲むの食べるの大好き。気前が良くて、何をするにも全力投球。体力おばけ。

 

兄が言うには、私の結婚式には「何がなんでも行く!」と言っており、めかし込んで来るらしい。

 

頼む、落ち着いてくれ。思わず天を仰いだ。

 

テーブルの配席も大きく変わり、兄にも助言をもらってなんとか体裁を整えた。

 

うちの親族は兄以外あまりお酒は飲まないので、叔父が加わることで虹夫さんのご親族ともバランス良くお酒のやり取りが出来るかもしれないのは有難い誤算ではある。

 

ただし、トラブルだけは起こさないで頂きたい。

 

 

さて、なんだかんだと叔父の出席が確定したことで、当然ゲストの数が増えた。

当初は30人前後の予定だったゲストは50人を越える規模となった。

 

そこでプランナーさんからの提案で、会場をスカイヴィラから広いフォレストヴィラへ変更することにした。テーブルは8人掛けのままだが、空間的に窮屈さを感じることはないだろう。

 

セントクレアヒルズさんは同じ時間帯に複数の式は組まないので、披露宴の会場を変更することは可能。そして料金は変わらない。

 

打ち合わせはいよいよ大詰めとなり、司会者との打ち合わせの日が来た。

 

司会は以前から虹夫さんと親しくしている、通称さっしーさんに依頼。

普段は飲食店で勤務をしているけれど、元々は司会業やマナー講座を開設するなどマルチな方。

 

結婚式をすると決まった時、即座に司会はさっしーさんだと虹夫さんは決めていたそうだ。

 

私はそれまでほとんど面識はなかったのだけど、話してみるとさすがプロフェッショナル。サクサクとタイムスケジュールが埋まっていく。

 

演出の詳細までアドバイスをしてくれるので、それまで思いつきもしなかった面白そうな演出も決定した。

 

 

さっしーさんと話している中で、改めてこの年齢での結婚についての話題になった。

「大人婚、いいと思う」と、さっしーさんは何度も言っていた。

このブログで言うところの『アラフィフ婚』も同じ意味になると思うのだけど、この歳だからこその良さがあると。

 

いろんな人間を見てきた結果に出会った相手だ。落ち着いて穏やかな夫婦生活を送れるのではないかと。まぁ、そんなことを言っていた……ような気がする(残念なうろ覚え)

 

『大人婚』を推していきたいと言うさっしーさん。私も同じ気持ち。

少し前まで生涯おひとりさまを決意していた私が何を言っているのだか、という感じだが、実際虹夫さんとお付き合いを始めて、こうして結婚の準備を進めているけれど、よく聞くところの「結婚式の準備で相手の不安要素が露呈」ということは無い。

 

そんな考え方をするんだ! という驚きはたくさんあったが、それが不安や不満には繋がらない。自分にはない発想や行動に、こちらも良い意味での刺激を多く受けることが出来て新鮮だ。

 

 

この打ち合わせのあと、時間があったので以前から目星を付けていたアパートについて不動産屋へ話を聞いてみようと出向いてみた。

運良く2軒のアパートを内覧させてもらったが、そこでも虹夫さんの意見が頼もしく、安心できた。

 

単純に虹夫さんという人間の出来た男性と結婚できる私が、運が良かっただけという見方も出来るかもしれない。

でも、虹夫さんにも充分に困ったところはある。食べ物の好き嫌いは激しいし、私の好きなものでも自分が興味がなければ徹底してスルーだし、どんなに止めても瘡蓋剥がすのやめてくれないし。

 

ある程度、自分の至らないところと言うか、不完全ぶりも理解した境地になってからのお付き合いなので、相手に対しても大して腹も立たないというのが実際のところだろう。

 

勿論前回にも書いたように、若いうちに結婚出来るのなら当然その方が良いと思う。体力も行動力も充分あるし、子供も産める機会だってある。

さすがにアラフィフになって出産育児は無理があるからね。

 

ここ数日一気に更新してきたので、明日以降は準備に集中するため頻度を落とす可能性があります。まだまだ書きたいことはあるので、よろしければ今後もお付き合いをお願いします。

 

【連載】アラフィフ婚への道⑨夢のような前撮りの1日

6月下旬、いよいよ前撮りの日がやってきた。

 

初めての衣装合わせの時にまざまざと見せつけられてしまった現実、つまりは中年太りの弊害。

肥満なんて弊害以外の何もありはしないのだが、それでも身を以て突き付けられなければ知らぬふりをしてしまっていた。

 

ワンサイズしかないというインナーブラウスが、試着の時はちょっと前屈みになったら背中のボタンがプチーンと外れてしまったのだ。

 

ワンサイズしかないのに! フリーサイズが入らないなんて本気でヤバいんだわ私!

 

毎日…、いや、たまにサボりつつ、二の腕エクササイズと筋トレに励んだ。

前撮りの1週間前からは禁酒だ。もっと前からやっとけよ、というごもっともなご意見は充分理解しているので、あえてお見逃し頂きたい。

 

あと、この日の為に準備したものも書いておく。

ドレス用の肌着「ビスチェ」と、和装用の肌着、そして足袋。

 

ビスチェは大抵の人は結婚式での前撮りと本番でしか着ることがないので、ネットフリマなどに出品している人が多いという。式場で購入するのも良いが、どうしても割高感はある。

担当者の方からもフリマを勧められたが、これも大抵の人は若くてスタイルの良い時期に使用しているので中年太りの私に合うサイズが見つからない。

 

虹夫さんに泣きつき、「検索キーワードに“大きいサイズ”て入れてみよ」と言われて従ったら案外あっさり欲しいサイズのビスチェを取り扱っているショップに行きついた。お値段もかなり良心的。

偶然にもこの少し前に、地元酒造会社のキャンペーンに当選してアマギフ2,000円分が届いていたので、迷わずポチる。約半額でビスチェはゲット出来た。

 

和装用の肌着は実家から借り、足袋は駅ビルの呉服屋で2,000円くらいで購入。

 

さて当日、まずはトリニータコラボキャンペーンの特典であるレゾナックドームでのロケーション撮影から始まる。

 

式場内でヘアメイクと着付をしてから、車でドームまで移動する。車に乗り込むので、本番とは別のパニエを使用しないロケ用ドレスを着せてもらう。

 

……ちょっと苦しい。このドレスは試着なしで提示された画像から選んだのだが、いざ出発しようとしている私を見てプランナーさんが「……別のドレスにします?」と。

 

あとから画像を見ると、かなり、いや大変な勢いで肉がブニブニーン!! とはみ出ておりました。

これはプランナーさんに止められて当然である。

 

急遽運び込まれたドレスに着替えると、今後は苦しさは感じなかった。見苦しさも軽減。

安心してタキシードに着替えた虹夫さんと共に車に乗り込み、レゾナックドームへ。

 

地元の競技場ではあるが、ふたりともスポーツはやらないし観ないので縁のない場所である。

駐車場には、複数の高校のマイクロバスが停まっている。

「今、高校総体ですからね」

カメラマンさんの言葉に肝が冷えた。

 

もし若々しい高校生に出くわしたらどうしよう。こんなおばはんがウェディングドレスなんか着て、ドームで撮影なんかしてるよ。浮かれすぎ~なんて言われたら悲しすぎる。

 

なんて考えは杞憂で、幸い高校生には遭遇せず。通路で職員さんと何やら打ち合わせしていた男性がふたり、私たちの姿を見て「おぉ!」と声を漏らして「おめでとうございます」と言ってくださったのは嬉しかった。

 

選手の入場口から競技場に足を踏み入れる。

一度だけ観客席でトリニータの試合観戦をしたことがあるが、関係者や競技者でなければ立てない場所から見上げるドームは言い尽くせない感動がある。ただ広いとか高いとかではない、胸が震えるような衝動を感じた。……走りたくなりはしないけどね。

 

芝には立ち入れないので、トラックまで入りいざ撮影。競技場内はヒールでは入れない為、足元はふたりともスニーカーだ。

 

前日までの悪天候が嘘のように晴れ上がり、だが湿度はそう高くなくカラリとしていた。絶対にこの日も雨になると思っていたのに。

なんと言っても、私は雨女だ。たぶんカメラマンさんが晴れ男。

 

式場に戻り、今度は本番用のドレスに着替える。インナーブラウスとの再会である。

 

袖を通し、緊張の一瞬。

 

なんと、難なく背中のボタンが止まった。あまり見た目には変わりはなかったが、それなりに二の腕と背中の肉は減っていたらしい。素晴らしい!

今後の筋トレのモチベーションも上がるというものだ。

 

ベールを着けて、ハイヒールを履くと大聖堂へ移動。トレーンが長いので、裾を抱えて歩くのも一苦労。

 

まずはふたりだけの写真を撮影してもらい、次にトリニータのキャラクター、ニータンとリッチーのぬぐるみを虹夫さんとふたりでそれぞれに抱っこしての撮影。

これがキャンペーンでA賞に当選していたら、レゾナックドームの際に等身大(?)ニータンとの撮影になっていた。

特にトリニータに愛着がある訳でもないので、これ(B賞)で良かったと改めて思う。

 

 

さあまだまだ続くぞ。

次は色打掛と紋付袴に着替える私と虹夫さん。

勿論私たちふたりも大変だけれども、何が大変って、今回のヘアメイクと着付け、ロケーションも含めた撮影の付き添い等すべてをひとりでやってのけたスタイリストさん。

いくら打掛の帯が簡易式であると言っても、神経も体力もフル稼働だっただろう。

 

改めて和装の虹夫さんに惚れ惚れしつつ、撮影場所へ移動する。しかし、衣装が重い。

動き出せば自然に歩けるのだが、一度立ち止まると全身にズシリと重みが伸し掛かってきて、再び歩き出そうとするのに気合いを入れ直さないといけない。

 

私の場合はそういう巡り合わせだったから仕方がないのだが、もし結婚願望が早くからある方は若くて体力のあるうちに結婚式は挙げておいた方が良いかもしれない。

 

撮影場所に着くと、一旦虹夫さんには休んでもらって私の衣装の映えポジション作り。

大量のピンチで着物の美しい流線を作り出す。その間、私はマネキンのようにただ立って微動だにしない。

指先や首の角度まで整えられて、いざ虹夫さんに横に立ってもらって撮影。

そして終了。

 

 

長かったー!!

読んでくださっている方も、飽きて途中で帰ってしまったんじゃないかと不安になるくらい。

 

ロケーション撮影のときも含めて、カメラマンさんがメモリアルフォト用とは別に虹夫さんのスマホカメラでもオフショットを撮ってくださったのはとてもありがたかった。

プランナーさんもご自身のスマホで撮ってくれた画像を虹夫さんに送ってくれていて、ちょっとしておふざけポーズも逃さず撮影されていて後から見返して大笑い。

 

最終的にはウェディングドレスを3着も着ることになって、なかなか贅沢が出来たのではないかと思う。そのうち1着は大変見苦しい姿ではあったが。

大聖堂のステンドグラスの前でひとりでのバックショットも、自己満足ではあるけど良い記念になった。

 

反省点は、ヘアードの注文を勘違いしていたこと。

百合の飾りを私は注文したつもりだったのだけど、実際は「ご検討ください」という段階のままだった。当日に花が届いていなくて私の勘違いが判明。プランナーさんが素早く生花店に働きかけて、生花店さんも柔軟に対応してくださったおかげで百合は無事撮影に間に合った。

 

反省の結果、本番では自前の髪飾りを持参する予定だが、造花で素人が作るとどうしても生花と比較して見劣りがしてしまう。虹夫さんは「それも味だよ」と言ってくれるけれど、やはりモヤモヤ。

 

和装の肌着も知識不足で戸惑った。

実家の母に頼んで準備してもらった肌着をそのまま持ち込んだのだが、和装肌着には一般用と婚礼用があるとのこと。婚礼用の方が襟が大きく開くことが出来るという。

一般用の肌着を婚礼用に合わせて着ると、どうしても丈が足りずに胸がはだけたようになってしまう。

これは急いで婚礼用を買い直す必要がある。

 

 

さて、本当に長くなってしまってけれど、次回はまたまた事件勃発。

本番一ヶ月前になって、とっくに確定したゲストが今更増えた! 原因は新婦の母!

 

招待状は? テーブルの配席は?

新たな問題が一気に湧きだす。乞うご期待!

(疲れているのでテンションがおかしい)

 

【連載】アラフィフ婚への道⑧慌ただしい打ち合わせラッシュ

ここからは一気に約一ヶ月分を書き上げていこうと思う。

なんと言っても、これを書いているのが挙式日まで一ヶ月を切っている。時間がない。

 

 

5月下旬、試食会に参加。

セントクレアヒルズさんからは、是非ご両親も招待してご参加くださいと案内されていたが、私と虹夫さんは当人のみで参加。

 

当初から虹夫さんのお父さん「料理はケチるな」と強く言われていたのもあって、お料理にはこだわることに決めていた。

そこで、虹夫さんは16,000円のコース。私が14,000円のコースで注文。お互いに料理を仲よくしシェアしながら、食材や盛り付けの印象などを吟味した。

 

結果、ベースは16,000円のコースにして、一部の内容を14,000円の料理に変更することにした。

 

ここが大分県ということもあり、どうしてもメインディッシュの中に虹夫さんの嫌いな椎茸が入っているが、そこは我慢してもらうか私が食べる。

 

 

6月初旬、虹夫さんのお父さんが遂に決意し、モーニングの衣装合わせに式場に赴いてくださった。

ナビがあるから大丈夫、と思っていたら少し迷ったらしい。衣装部の方から虹夫さんに「お父さまがまだいらっしゃいません」と、心配のお電話がかかってきたタイミングでお父さんとお母さんが到着したのは暫くネタになった。

 

同日には私のヘアメイクや装花の打ち合わせがされた。

すべてが着々と進んでいたが、この日の私のうっかりで、後日少々プランナーさんたちをあわてさせてしまうことになる。

 

 

6月中旬、虹夫さんの実家の田植えに参加……の予定が体調不良により急遽不参加。

決して田植えが嫌で仮病を使った訳ではないことは分かってほしい。

日焼けは怖かったが、農家に一員に加えて頂く最初の行事になる筈だった。楽しみでもあったのだ。

 

前日から泊まり込みで朝早くから作業に入る予定で、私も虹夫さんのご家族も準備をしていたので残念感が半端ない。

 

 

その2日後は、互助会のプランに入っていたブライダルエステを受けてきた。

私も昔エステティシャンをしていたこともあったが、技術は褒められたが如何せん営業能力が無く。早々にその道を外れた。

 

私が修行したエステはマッサージの施術に力を入れていたのだけど、今回受けたエステは複数のジェルを塗布して皮膚の老廃物を取り除いて美容要素を浸透させる……というようなものらしい。

説明を聞いたが、私の理解が追い付かなかった。恥ずかしい。

 

エステの後は虹夫さんを合流して、セントクレアヒルズさんでBGMの打ち合わせ。

 

私と虹夫さん、お互いに1曲だけどうしても外せない曲を選んでいたのだけれど、私の方は使用するシーンを選ぶものだった。そのシーンとは、式の花嫁の入場曲。

 

しかし、挙式の間の曲は式場のお任せというルールがあり、どうしても受けてはもらえなかった。大変残念ではあるけれど、ルールはルール。仕方がない。

 

因みにその曲は、映画『サウンドオブミュージック』の「行進聖歌とマリア」。

修道女見習いだったマリアが、愛から目を逸らして修道女になろうとしていた。でも院長の言葉に押され、自分の心に正直になってトラップ大佐と結婚する。

その姿を、これまで厳しく優しく見守ってくれていた院長やシスターに見送られて、ひとりでバージンロードを歩いて大佐をもとへ向かうマリアが本当に美しくて格好良いのです。

 

使いたかったなぁ(未練がましい)

 

その反動というか、最終的には全体の8割方は私の提案した曲が採用されたように思う。

 

BGMを担当してくださった方は、元々ご自身もウェディングプランナーをされており、式場の支配人などを経て音響の会社を興されたとのこと。さすが現場で実践を重ねてこられた方なので、シーンを効果的に演出する曲の提案なども、とても説得力があった。

 

なかでも私が印象に残ったのは、「新婦さんの声を聴いていたら、オルゴール調の曲は合わない」というもの。

花嫁の手紙のBGMにはピアノ曲を提案されて、妙に納得した。

 

因みに虹夫さんが使いたかった曲は、私がこのシーンで使ってはどうか、という案を採用してもらえた。大満足の結果になった。

 

 

更に翌日はウェディングケーキと生い立ちムービーの画像選び。

ケーキは姪のアレルギーと私の苦手な果物を伝えて、それらを使用しない形でフルーツ盛り盛りで依頼した。

 

生い立ちムービーの画像は、本当に私の中学高校時代の写真が見つからず、取り敢えず私から提出できるまともな写真に合わせて、虹夫さんも同じ時期の写真を提供してもらった。

BGMはお任せにした。

 

加えて披露宴のラストに流すエンドロールの曲もこの日決定することになっていたのだが、プランナーさんからの「エンドロールの曲は長ければ長いだけ映像も長く作れますよ」のアドバイスに従い、探しに探して5分の洋楽を見つけた。

 

基本的に私が提案した曲は洋楽。日本語の曲だと、耳が歌詞を追ってしまって言葉の意味にシーンの印象を左右されそうな気がしたから。

たぶん虹夫さんは「考えすぎ!」と笑いそうだけれど、私はそいうところが気になるのです。

 

 

と言ったところで、本日はここまで。

次回は体力の限界に挑んだ(大袈裟)、前撮りについて書いていく予定です。

どさくさ紛れにウェディングドレス3着も着ちゃったお話です。

 

【連載】アラフィフ婚への道⑦父と兄とモーニング

問題が起きた。

虹夫さんのお父さんが、衣装は私の兄と合わせると言い出した。

 

いやいや、うちの兄は礼服の予定ですが、お父さんはモーニングでしょう。合わせちゃダメです。

どうやらお父さんはモーニングを着ることに抵抗がある様子。

 

考えてみると、兄が結婚した時の父はモーニングではなく礼服だったように思う。だがもう25年以上も昔の話で、現在では新郎新婦の父親はモーニングが当たり前のようである。

いくつかマナー講座のサイトなどを巡ってみたが、やはりどこも同じことばかり書いている。

 

虹夫さんのお兄さんと弟さんが結婚した頃もうちの兄の頃とあまり違わないので、当時のお父さんもモーニングは着ていない。今更感はあるのかもしれない。

 

兄に打診してみると、さすがにお相手のお父さんと同格の衣装は着ることが出来ないとのこと。

それでも数日考えてくれたのか、お父さんがどうしてもというならモーニングを着ても良いとの返事をもらった。どう見ても、文字から「不本意」と裏の声が聞こえてきそうだった。

 

 

そうこうしているうちに、2回目の衣装合わせの日が来た。

この日は虹夫さんのタキシードと紋付袴、私の色打掛、両家の母の留袖を決めることになっていた。

 

まずは虹夫さんのタキシード。お好きな色やデザインはありますか? という質問に対し、「とにかく入ればいいです」と率直に返す虹夫さん。

大きいんですよ、私も虹夫さんも。

 

大きいサイズのあるデザインをふたつ用意してもらい、着比べてみる。ジャケットが入った方で決定したものの、今度はズボンがキツイ。

これが入らなければ取り寄せで追加料金がかかるラインでズボンが入った。良かった!

 

次は紋付袴。これは特に問題もなく即決したのだけれど、その試着姿に私が盛大にツボってしまう。

だって! とんでもなく似合っていたのですよ!

 

どこの親方だよ! と、虹夫さんのお母さんや私の母がいる前で大爆笑。

この姿を友人たちに見せないなんて勿体ない! 前撮りだけで済ませるなんて出来ない。

この凛々しく頼もしい姿をみんなに見せたいと強く思った私。

 

両家の母の留袖選びでは、それぞれの好みの色味や柄の傾向が分かって面白かった。

お腹周りが大変ヤバい母は、どうしても着崩れてしまうので追加料金でサイズを上げてもらった。

 

なかなかありません、和装でサイズアップとか。

 

そしていよいよ私の色打掛選びです。

青を基調とした素敵な打掛を纏ってみると、虹夫さんのお母さんが絶賛。お母さんが選んだ留袖も青や紫といった色味が基調となっていて、上品な印象だった。

 

これで決定かな、と思っていたところ、母が異議を唱えた。「赤がいい」と。

 

赤とか、普通過ぎないかな? と思っていたのだけど、あまりに強く母が主張するので担当者さんにサンプル画像を見せてもらう。

 

因みにここまでの衣装合わせでは、ウェディングドレスも含めてすべて直に現物を見て手に取って選んでいたが、打掛だけはタブレットで見た画像で選び、そこから現物を出して来てもらう形式だった。

 

無料プラン内での赤い打掛は、現在お手入れ中で試着が出来ないことが判明。あらま、困ったね。

 

すると、画像に近いデザインの追加料金プランでなら出せるとのことで、一枚の打掛を出して来てくれた。

試しに合わせてみる。さすがワンランク上。豪華なのに派手過ぎない絶妙なデザイン。

私の好きな色である赤、黒、紫のすべてが入っている。

 

でも、追加料金が掛かるしな……、と思ったら、なんと本来の打掛が出せなかったのは式場側の都合なので、こちらは追加料金なしで提供いたしますとのこと。

 

はい、即決。

 

残るは虹夫さんのお父さんのモーニングだけではあるけれど、直前まで追加予約は出来るようなのでもうしばらく考える時間を置くことにした。

 

 

その後は解散する予定だったのだけど、丁度式場でイベントをしており、大人数が収容できる会場でビュッフェ形式の食事会をしているので参加しませんか、とプランナーさんから声を掛けて頂く。

長時間の衣装合わせに、みんなお疲れだしお腹ぺこぺこ。ありがたく参加させてもらった。

 

この日のイベント会場であるフォレストヴィラは、私たちの披露宴会場2階のスカイヴィラよりも広い。元々少人数で披露宴をするつもりだったので特に深く考えていなかったのだが、なんとその後、私たちの披露宴会場がフォレストヴィラに変更されることになる。

それはまた、後日公開。

 

虹夫さんのご家族と一緒に食事をすることにまだ緊張はあるけれど、いつまでもそんなことを言ってもいられない。何度もタンドリーチキンをお代わりしている嫁の姿がどう映ったのかは気掛かりではあるが……。

(セントクレアヒルズさま、ご馳走さまでした。とても美味しかったです)

 

 

この日の衣装合わせではっきりと決まったのは、カクテルドレスは着ないということ。

前撮りでも、本番でも着ない。

経費を抑えるためもあるけれど、虹夫さんの紋付袴姿に激しく惚れ直してしまった私。

本番ではカクテルドレスは着ず、タキシードとウェディングドレス&紋付袴と色打掛。前撮りも同様。

 

カクテルドレスは試着で満足した。それよりも、とにかく虹夫さんの紋付袴姿の方が大事!

 

私、どんだけ虹夫さんが好きなんだ。

 

【連載】アラフィフ婚への道⑥リングボーイ

以前、それぞれの実家へご挨拶に行ったときに兄が話してくれた。

私が結婚式を挙げることを知った次男坊が真っ先にこう言ったと。

 

「俺、リングボーイやる!」

 

お前、19歳だろうが。

 

一瞬呆れたが、確かにお調子者で面白い男なのである。昔からいい歳をして独身の私に、会う度に「兄弟の中で結婚してない人って誰~?」とか、「まだ子供のおらん人って誰~?」などと神経を逆撫ですることをいつも言っていた(根に持っている)

 

さすがに中学生にもなってそういうことを言っていたので、事情があって子供を望めない女性はどこにでもいる。お前の言葉はそういう人を傷つける可能性がある、ということを兄から伝えてもらった。

尊敬する父親に諭されたからか、それ以降は私に対してはおとなしくなったが、同世代の子には相変わらずのようだ。困った奴である。

 

幾つになっても生意気で子憎たらしいのだが、生まれた頃から知っているので奴の恥ずかしい思い出も私は掴んでいる。まぁお互い様だ。

 

虹夫さんは結婚指輪は無いものと思っているので、次男坊君の意欲は空回ることになるけれど。

 

 

さて、前回の打ち合わせからは少し間が空いてしまったが4月中旬、遅れを取り戻すように一気に複数の案件を詰めた。

 

まずはムービー。

記録撮影は断った。式の最中にお友達がたくさん写真を撮ってくれるだろうし、後日それを貰えば良いだろうとの虹夫さんの判断。勿論私もそれに異論はない。

 

ただしエンドロールは依頼した。挙式の一日をダイジェストで映像化してもらい、披露宴の最後に上映する。

姉の結婚式で初めて見たのだけど、これは意外と出席している側も嬉しい演出。

 

ただし、ひとつだけ苦い思い出が。

最後の最後に、ゲストの名前もクレジットされて、そこに姉妹の中で私だけ名前が変わっていないことに会場の空気が一瞬気まずくなったのだ。

 

あれは居た堪れない……。

 

ということで、今回のエンドロールにはゲストのお名前は入れないことにした。

BGMはこちらの希望の曲を使用してくれるそうだが、演奏時間が長い方がそれだけ長い映像に出来るのでお勧めらしい。

 

入場時のムービーは作るか外注するかで、持ち込みすることにした。

 

生い立ちムービーは私たちの写真をそれぞれ規定枚数持ち寄り、BGMは製作者さんにお任せ。

 

 

 

次は進行についての打ち合わせ。

受付やスピーチをしてくれるゲストの確認をして、ざっくりと進行内容の説明を受ける。

 

その中で、指輪の交換についての話になった。

 

「リングボーイしていって子がいるんやろ?」と、軽く自ら振ってくる虹夫さん。あれ? 指輪は無かったのでは? と思いながらも、取り敢えず「そうなんですよー」とプランナーさんに甥っ子のことを話す。プランナーさんは「素敵!」と乗ってくれたけれど、あれれ? 指輪は無いのよね……。

 

内心、かなり混乱する私。

 

 

続いて場所を変えて、衣装の打ち合わせ。

この日はウェディングドレスとカクテルドレスを決めた。

 

私の憧れは、映画『サウンドオブミュージック』のマリアのウェディングドレス。

ジュリーアンドリュース演じるスレンダーなマリア。ほっそりと長い首から華奢な手首まで、全身をすっぽりと包み込むシンプルながらエレガントなドレスは幼心に私はうっとりしたものだ。

 

昭和時代も、ウェディングドレスと言えば手首までの長い袖のドレスが主流だったと思うのだが、最近はデコルテから二の腕まで露わなデザインばかり。

それもまた素敵ではあるが、何より私はアラフィフ世代。そんなもん晒せるかぁ!

 

しかし、無料プランで着られるドレスには、どれも袖すら付いていない。

私が困っていると、衣装部の方がレースのインナーブラウスを提案してくれた。肌を僅かに隠す程度の透け感ではあるけれど、私の羞恥心を覆ってくれるには充分だった。

 

そのインナーブラウスと、トレーンが長く刺繍などの少ないデザインのドレスを選んだ。

やはりシンプルなのが良い。これがもう20歳も若ければ、もっとフリフリなキュートなドレスを選んだかもしれないが。

 

ただし、そのドレスは無料プラン内では無く2万円ほどの手出しになってしまったが。

そして、インナーブラウスもオプションなので更に1万円の追加。

 

インナーブラウスだけで言えば、8000円以内で通販サイトに私好みの商品も見つけたのではあるが、おそらく今後着まわすことのない商品に8000円も掛けるのか。それならば、今回限りの1万円で収まるなら、それで良い。

 

と、虹夫さんに諭された。おっしゃるとおりです。

 

カクテルドレスについては、虹夫さんのワインレッドのドレスが可愛らしくて一先ず決定となった。

 

「一先ず」というのは、まだ本番でカクテルドレスを着るかどうかを迷っていたから。

以前、互助会のプランで衣装はウェディングドレスと色打掛が無料になると書いた。カクテルドレスは対象外だ。

 

ただし色打掛をカクテルドレスに変更することは可能とのこと。そうすれば、虹夫さんはタキシードのみでお色直しの必要はない。せいぜいネクタイを変えるとかすれば良いらしい。

 

でもでも、せっかくだから和装も着てみたい。お友達からも、和装の私を見たいと期待を寄せてくれている人がいる。

 

ならば前撮りだけ和装をプラスして、本番では洋装2点というのはどうか? それなら前撮りのみ価格というのがあって料金を少しばかり抑えられる。

 

取り敢えずの見積もりを出してもらい、この日の打ち合わせは終了。

次回で和装の衣装も合わせてみてから決断することにした。

その日は両家の母の留袖も合わせることになった。

 

 

帰りに私は、ずっと引っ掛かっていたことを虹夫さんにぶつけた。

 

「指輪の交換について普通に話していたけど、指輪はあるの?」

「準備します」

 

えぇぇぇぇっ?!

 

以前、虹夫さんのお友達のお店で結婚指輪は有りか無しやで揉めた際、私は酔っ払って「虹夫さんは私の言うことならなんでも聞いてくれる」と大変厚かましいことを口走ってしまった。

それが虹夫さんを責める形になってしまっていたらどうしよう。

 

だけど、その後本当に虹夫さんはわざわさ指輪のサイズは測るツールを購入し、お互いの指のサイズか確認して慎重に慎重を重ねて指輪を準備してくれた。

 

お互いにブランド品というものには興味がないので、どこのメーカーなのかすら分からない。だけど、とてもシンプルで綺麗で、可愛らしかった。

男性のリングには珍しいかもしれないが、どちらにも誕生石が付いている。偶然にもお互いに青色系の石なので、一見同じ石に見えるのはご愛嬌。

 

私の指、身長の低さの割にはかなり太いので恥ずかしいのだけれど、虹夫さんの指輪と並べたらちゃんと女性的なサイズに見えたのもご愛嬌。

 

女性にとって、婚約指輪や結婚指輪はこだわり抜きたいという方も多いと思う。

だけど私は、虹夫さんが私とのことを考えてあちこちのサイトをチェックして、時間を掛けて吟味を重ねて準備してくれた指輪がどんな高級ブランドの品よりも素敵に見えるのです。

 

惚気でしょうか? そうです、全力で惚気ています。

派手さは無くても、こんな幸せがあっても良いと思ています。

 

【連載】アラフィフ婚への道⑤互助会という強力な助っ人

3月上旬、天空(そら)の森セントクレアヒルズにて初回打ち合わせ(前回は当選説明会)。

 

以前ゼクシィで「ウェディングノートを作りましょう」という記事を読んで、どのような形で作成するのが良いのだろう? と思っていた。

すると、担当プランナーさんがA4サイズのハードカバーのファイルを差し出して「おふたりのウェディングノートです。こちらプレゼントです」と。

 

内容はふたりの馴れ初めやお互いの第一印象など記入するテンプレートがたくさん。項目を埋めていけばオリジナルのノートが完成するという次第。

両親や兄弟との思い出なんかも書くところがあって、作成するにあたって家族と話をする時間を作る必要があるのもまた良い。

 

ただ、改めて私が生まれて時どう思った? なんて母に尋ねるのは、なんとなく気恥ずかしい。

 

そんな母から、セントクレアヒルズでの挙式が決まった話をしたところ、「それなら昔に掛けていた互助会の掛け金使えるよ」と言ってもらえた。母が掛け金を掛けていたのはずっと昔。その当時の互助会は既に運用を終了しており、現在はセルモグループが引き継いでいる。

 

セントクレアヒルズに問い合わせ、母の会員情報が確認されたことで私たちの結婚式費用にも利用できることが分かった。

トリニータコラボキャンペーンでかなりお得に結婚式を挙げられるけれど、互助会プラン併用で更に手出しが抑えられるのは大変助かる。

 

ただしプランの内容が当時とは異なるらしい。

 

説明の結果、コラボキャンペーンでは新郎と新婦の衣装はそれぞれタキシードとウェディングドレスの1点ずつだが、互助会プランを使えば私は色打掛も無料で着ることが出来るプランが利用可能だった。

新郎の紋付袴は追加料金になってしまうが、4着の衣装のうち手出しは一着分のみでお色直しが可能になる。

 

他にもメモリアルフォト1枚とブライダルエステが1回、両親の衣装も無料となった。

具体的に金額に直すと、約35万円の経費を抑えることが出来た。

 

因みに私の父は早く(?)に他界しているので、両親の衣装で必要なのは留袖だけ。

兄に代理としてモーニングを着てもらう? 虹夫さんの挨拶にも父親代わりに同席してもらっているし、顔合わせの食事会にも来てもらっている。

 

だが、兄は兄であって、父では当然無い。兄も「俺、父親じゃないんだけど……」と困惑しているのは何度も聞いている。

 

実はこの先、この件でひと悶着起きることになるがそれは別の機会に書こうと思う。

 

改めて見積書を見ていると、互助金の名義人が記載していることに気が付いた。

そこには、先程も書いた父と、父方の祖母の名前があった。

 

祖母は私が高校生の頃に亡くなっている。私は祖母とは仲が悪かった。

父ともまた、歳を取るほどに仲が悪化していた。

どちらとも、最後の会話など覚えていないくらいに長いこと会わないまま亡くなった。

 

そんなふたりの名義の掛け金で、私は花嫁衣裳を着ることになるのか。

そう考えると、なんだか申し訳ないような、なかなか複雑な気持ちである。

 

この打ち合わせは3月の半ばのこと。

月末には紹介状についての打ち合わせが行われた。

 

大量のサンプルを前に目移りしてしまう私。やはりディズニーのデザインはどれも洗練されていて可愛らしく、特別ディズニー好きなわけではないのに眺める時間が長くなる。

 

でも、虹夫さんの反応は淡泊。知ってる、ディズニーに一切興味ないってこと。

 

式も披露宴にもディズニーをまったく使用しないのに、招待状がディズニーなのはアンバランスだろう。断念した。

 

花を基調にしたデザインにも洋柄や和柄それぞれに良さがあり、なかなか決まらない。

そうこうしながらも「お、これは!」と思えるものが幾つかに絞られてきた。

虹夫さんに「どうかな?」とそれぞれ示してみると、そのうちのひとつに「いいやん!」と。

 

即決です。

優柔不断で決断力のない私。私が赤も青も良いのなら、虹夫さんが赤が良いと言えばそれで良いのである。

 

マットな光沢のあるクリーム色のカードに、小鳥や花の切り抜きやゴールドが散りばめられている。

純白のカードにシルバーのラインの入っているのとで私はかなり迷っていて、帰りにも「あっちの方が良かったかも……」なんて思ったりもしたけれど、後日手許に届いたカードを見たら吹っ切れることになる。

 

因みに招待状はコラボキャンペーンで100セットまで無料だったので、虹夫さんが40セット、私が30セットで注文した。多めに頼んでいたのが、この先かなりのグッジョブな結果となる。

 

この時点で結婚式まで約3ケ月半。まだまだ余裕をぶっこいていたが、それが自分の首を絞めることになるのは想像に難くないのであった。

 

【連載】アラフィフ婚への道④食い違いと擦り合わせ

結婚式の見積書を見た虹夫さんが言った。

 

「リングピローがキャンペーンで無料で入ってるけど、使わないなら使わないでいいんよな?」

 

ん? まぁ、それでも構わないとは思うけど、使わないの? なんで?

私は無言でパニック。

 

「指輪、無いんやし」

 

ん? え? あれ?

 

もしかしなくても、私が婚約指輪はいらないと言ったことを拡大解釈して、結婚指輪もいらないと思ってらっしゃる?

あら嫌だわあなた。お待ちになって。

 

婚約指輪は日常的に身に着ける訳でもないのに高価で華美。実用性を感じないので、それならば『判子』が欲しいのだとお願いしたのですよ私は。

結婚指輪もいらいないなんて一言も申しておりませんわ。

 

しかし完全に『指輪=不要』と思い込んでいる虹夫さんに、どう言えば良いのか分からずにモヤモヤを抱えたまま黙り込む私。

ここですぐに言えれば良かったのだろうか。

 

別の日には、虹夫さんがお母さまとのやり取りを話してくれた。

 

「指輪はどうするの? て言うから、指輪はいらないから判子が欲しいっていうからあげた、て話した」と。

 

お母さまの反応は? と聞いたら「ポカーンとしてた」と笑う虹夫さん。

 

ごめんなさい、お母さま。違うんです。いや、違わないけど違うんです。

 

どうすればこの誤解を解けるだろうかと考えあぐねていたけれど、ある日虹夫さんのお友達のお店で飲んでいた際、お店の女の子が指輪はどうするんですか? と聞いてくれたのを機に思い切って打ち明けた。

 

女の子にいつものように「指輪はいらないって言うから」と話す虹夫さんに、実はね、と切り出した。

 

「確かに婚約指輪は実用的ではないと思うので、それなら実用性のある判子が欲しいとは言った。でもそれは婚約指輪であって、結婚指輪ではないのよ?」と。

 

ポカンとする虹夫さん。

 

「いらんって言ったやん」

 

「婚約指輪はね」

 

「いやいや、指輪はって言ったやん」

 

そこで過去のブログをスマホで開き、証拠書類さながらに提示。私はあくまでも『婚約指輪』にしか言及していないことを示した。

困惑する虹夫さん。

笑ってみている女の子。

 

ちょっとズルくて残酷だったかな? とは思いつつ、良い機会なのでそこで一通り私の願望は伝えた。ごめんなさい、結婚指輪は欲しいです。

 

でも、話した結果虹夫さんがやはり結婚指輪は不要だと判断したなら私はそれに従うつもりだ。私の考えは話したのだから、それにどう答えを出すかは虹夫さん次第。

 

以降、私から指輪の話はしていない。

一度お友達が「指輪どうするん?」なんて一緒に食事している時に聞いてきたものだから、ちょっと焦ってしまったが。そこは取り敢えず流した。

 

それから暫く経ち、お出掛けの帰り道。

少し時間が早いからどこかに寄ろうかとなったので、最近オープンしたばかりのリユースショップへ行くことにした。

 

新生活を始める際には使えるものは引き続き私のアパートから持ち込みたいけれど、20年以上も独り暮らしをしているので家具も家電もどれも年季が入っている。比較的新しく充分に使えるのなら、中古品で揃えるのも有りだと私は考えていた。

 

虹夫さんは中古品に抵抗はあるのだろうか。

 

衣料品からバッグのコーナーを回っていると、虹夫さんがいくつかのリュックを物色し始めた。

更に家電のコーナーでは冷蔵庫などを見ている。私の使っている冷蔵庫は単身世帯用なので、それでなくてもお酒を入れるスペースに苦労している。やはり大容量が必要になるだろうか。

 

ふとダイニングテーブルが目についた。椅子が二脚のシンプルなデザイン。これ、良いかも。

 

「別に使えるなら、中古で揃えてもいいと思ってるんよな」

 

虹夫さんの言葉に、どこかで感じていた緊張が解けた。

 

「じゃあ、こんなのも?」とダイニングテーブルを指す。

虹夫さんとしてはローテーブルで座布団を使うのでも良いと思っていたようだけれど、年齢も年齢なので最近私も膝に不安がある。虹夫さんも立ったり座ったりする際の動きが難儀そう。

 

「こっちの方が楽だよ!」とニコニコ推してみる。「それもそうか」と虹夫さん。

 

最終的には新居の間取り次第ではあるけれど、家具にダイニングテーブルも選択肢に入れてもらえて嬉しくなってしまった。

 

価値観の擦り合わせ作業は、これからまだまだ続く。