アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

無事に完走出来ました!感謝!!

昨日、無事に全13話に及ぶ連載エッセイ『アラフィフ婚シリーズ』が一旦完結しました。お読みくださった方、ありがとうございました。

今偶々ここに出くわしてしまっただけで、まだ読んでいない方、よろしければチラ見でもしていってください。私が無言で喜びます。

 

長い独り暮らしで生来のだらしなさも手伝って、とんでもない汚部屋の住人になっていた私。それがレインボーさんとお付き合いをするようになったことで一変、汚部屋からの脱却を目指すことになります。

レインボーさんをはじめ、たくさんの方の協力や善意を得て、ようやく人並な生活を手に入れたあとは本格的に将来について考えることに。

 

言うて、アラフィフです。終活を考える年代ですよ。

女に生まれながら、出産と育児を経験出来なかったのは少なからず(いや、かなり)寂しさは感じますが、こればかりはしかたがありません。その分、次世代や子育て世代になにかしら支援・貢献が出来ればいいな、なんて秘かに思っています。

それも含めて、レインボーさんとは今後のことを少しずつでも話をしていかないといけませんね。

あ、まずは早くお仕事始めなきゃ(焦)

 

今回の連載では最終的に結婚には至っていませんが、たぶん自然とそうなると思います。

連載の中でも書きましたが、今更法的な結婚という手段を取らなくても良いとの意見もあるかとは思います。年齢的にもね。私も出来ることならそう出来ればと考えています。

でも、現行の法整備ではやはり婚姻届を出して姓を統一するのが何をするにしてもスマートにことが進むんですよね。不本意ですが。

いつか私と同じ思いをもつ方々が、なんの障害も無く夫婦別姓を選択出来る時代がくることを願います。

 

ところで、普段のブログと連載エッセイとでは文体を変えています。通常は「ですます調」で書いていますが、連載では「である調」で書きました。一応差別化を狙っていたのですが、大した変化ではなかったかな? 精進しなければ。

 

最後に今回の連載を書くことを許してくれたレインボーさん、本当にありがとうございました。

ふたりでのやりとりを全世界に公開するのですから、抵抗が全くないわけがないと思うのです。それを、文章の変換ミスを指摘するのみに留めてくれたのは本当に優しいと思います。角度によっては私の承認欲求に強引に付き合わされているだけと見えますしね。

中でも市役所での私の行動は、かなり驚かせてしまったようです。あの記事を投稿するときには、私も更新ボタン押したあともドキドキしてました。

 

今後は連日というよりは、なにかネタがあれば投稿をする流れになると思います。レインボーさんとのこととか、お酒のこととか、お友達、ダイエット等々……。

そのときは、またお付き合いくださいね。

 

では、本日はこの辺で。良い一日をお過ごしください。

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい⑥「アラフィフ婚の結論」

2章からなる「アラフィフ婚シリーズ」も、本日で一旦完結。今後はリアルタイムでの中年バカップルネタを公開していくことになる……かな?

今回ようやく第2章のタイトルの種明かしをします。どうにか伝われ!

 

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もう何年前だったかすら分からなくなる程かなり昔の話。

残っているメモから推察するに約20年前だと思われるのだけど、私は占いをしてもらったことがある。当時の私は転職を考えており、それについて良い時期や職種について質問したようだ。

 

その頃の私は事務の仕事をしており、今後も事務職を希望していた。だが占い師の女性は「あなたは事務は無理」と断言。話す仕事を強く推された。

まぁ、生年月日を見ただけで最初に発した言葉が「あなたの前世はラテン系の外国人」だったので、どこまで本気で聞けばよいのかは大いに疑問だけれど。

 

その占い師は更に、何かを始めるなら実りやすい時期というのも教えてくれた。そこから自然な流れで結婚に良い年も。内容は頭からはすっかり忘れ去ってしまっていたが、前述のようにその時のメモが残っていた。断捨離中に見つけたので、懐かしさから見返してみた。

そこには20代後半から還暦前までの年齢が羅列されていた。40歳までで該当する年齢に赤丸が付けられているあたり、それ以降まで独身であることはまったく想定していなかったのだろう。まさかアラフィフになる現在まで、レインボー氏に出会うまで、まったくご縁がないまま生きていくことになるとは。

 

事実、レインボー氏と「よろしくお願いします」をするまではそうなることなど微塵も思っていなかったのだから、当時の私は何も間違ってはいない。

 

改めてメモを見る。ノーマークだった人生後半での転機(結婚等)に良い年齢を確認してみると、まさに昨年と来年がそれに当たった。昨年、レインボー氏とお付き合いを始めた。そして、今は時間をかけてお互いの覚悟の時を待っている。

 

あぁ、そうか。来年なのか。

 

占いに流されるつもりはない。でも、きっかけが欲しい時には背中を押してもらえる強力な存在でもある。仮にこの占いに従って仕事を選んだり転職時期を決めて、それが失敗に終わったとしても決定したのは私自身だ。恨み言をいうつもりはない。

 

そもそも、開口一番前世はラテン系外国人だし。

 

 

因みにこの占い師から言われた天職について、もう少し書いておこうと思う。

 

事務職は向いていないというのは既に書いたが、では何が向いているかというと外資系(英語出来ない)、化粧品関係(エステティシャンになったが営業が出来ずに即廃業)、マスコミ・テレビ・雑誌関係(華やかなの苦手)、デザイン・芸術関係(偶にイラストを描くがムラがあると自覚済み)など。

とにかく「動く」ことと、「話す」というものが向いているのだと。どれもこれも、自分では適性があるとは思えない。

 

ただ、思い切って「書くことはどうですか?」と聞いた覚えがある。するとその占い師は「それもいいよ」と。マスコミ関係に該当するようなことを言っていたと思う。当時の私は小説を書きたいと思っていたのだけど、表現力が乏しすぎてその後挫折した。大丈夫だ。挫折を知らない人間などいない(と、自分を励ます)

 

 

この占いのメモを見つけたのは、書くことを諦めきれずにこのエッセイを書き始めてからだ。ここまで書けたのは、このメモに少しばかり後押しを受けたような気がしている。今はとてもセンシティブな精神状態で、占いにすがりたくなる時期なのかもしれない。ただ、このタイミングでメモが出てきたのにも何か意味があるような気がしてしまうのだ。オカルトは嫌いじゃない。

 

ただの願望だと言われてしまえばそれまでではあるけれど。

 

 

さて、ここまで書いておいてなんだが、「結論」と題しているけれど実は結果は出ていない。これは私の「決意」と言い換えた方が良かったかもしれない。私は来年、名前を変える。それに向けて一日も早く再就職をして、仕事を始めてからも決して汚部屋には戻らないと誓う。

 

まるで事務的な言い回しになっているが、愛情の有無を問われれば勿論ある。だがどこかで書いたが、アラフィフにもなって好きだのなんだのと勢いのままに結婚は出来ない。あれは若さの特権だ。

今更失敗を恐れているわけではないが、長く生きた分だけ知識が邪魔をする。目の前にある石橋を、これまでに得た知識と、彼との信頼と努力で、更に堅固に出来たら素敵だな、と思う。それはふたりで渡る橋なのだから。

 

まぁそれも願望ではあるのだけれど、でもきっと実現できると信じている。いや、実現するのだ。私と彼とで、周囲のお友達や家族に見守ってもらって、時には力を借りて。

 

その時はまた、こうして大好きな文章表現の場で気持ちを表したいと思っている。

 

【一旦完結】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい⑤「兄の想い」

実父は若すぎたとは言わないが、鬼籍に入るには早すぎた。私とは仲も悪かった。

将来を心配してくれていただろうけれど、親孝行など欠片もすることなく永遠の別れとなった。

そんな父とのことを思い浮かべながらの第5話スタートです。

 

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年末年始はイベントが目白押し。まず私の誕生日があって、クリスマスがあって、年の瀬街中イベント、大晦日、初売りに初詣。

 

彼という存在が出来て初めてのクリスマスは、これも初めてのプレゼント交換なんかもして、遂に私もリア充と言われる立場になったのかとしみじみした。

プレゼントは私からは手編みのハンドウォーマーとニット帽。レインボー氏からは誕生日プレゼントとあわせて、錦鯉のイヤリングと可愛らしいハンドクリームのセット。いつものお店で和やかに過ごした。この当時はまだまだ汚部屋だったので、私の部屋で過ごすなんてまったく考えもしなかった。

 

大晦日は前日の街中イベントで散々盛り上がっていたし、レインボー氏は買い物があると言っていたから私は適当に近所のスーパーにでも行こうと思っていた。それが、直前に「買い物付き合う?」と連絡が。お邪魔でなければ勿論行きたい。すぐに了承の返信をした。

 

買い物はおせちやオードブルの受け取りと、お寿司の盛り合わせなどの買い出し。ご両親と3人暮らしにしては量が多いなと感じたけれど、ご親戚が近所に大勢いるようなのでその為だろう。おせちとオードブルはお友達が運営している事業所や馴染みのお店。

案の定、顔を出すと結婚を促すような発言でからかわれてしまう。もうだいぶ慣れた。

 

一通り買い物を済ませ、後は帰宅するだけとなったところで私はひとつお願いをした。実家に寄ってほしかったのだ。

実は少し前に県外に住む妹から大量に蕎麦が届いたとかで、都合の良い時に取りに来るように母から連絡が来ていたのだ。実家は私の住むアパートからそう遠くはないが、バスの本数が少なくどうにも億劫で先延ばしにしていた。とても身勝手な理由だが、今こうして車に乗せてもらっているのでついでに連れて行ってもらえないかと思ったのだ。

 

レインボー氏は快く引き受けてくれた。実家の兄夫婦はきっと兄嫁実家に出掛けているだろう。実家前に車を停めてもらえれば、私だけ降りて玄関先で母から蕎麦を受け取ってしまえば良い。

その憶測が甘かった。

 

 

江戸時代は宿場町だったが、今はすっかり過疎ってさびれた田舎町に私はレインボー氏をナビした。実家は小さなお宮の参道沿いにあり、レインボー氏に参道まで入ってもらうようにお願いした。

 

これが大失敗。

 

初詣の参拝者向けに神社は幟旗や幕が掛けられ、参道にはずらりと大量の灯篭が並べられていた。しかも、甲類焼酎4リットルボトルで手作りされた代物。そうだった、今日大晦日だったわ。

 

灯篭は車が通られる程度には幅は取られていたが、レインボー氏にとっては衝撃の光景。丁度作業をしていたおじさんがこちらに気づいて、「大丈夫ー、通れるよー」とばかりに手招きしてくれたのだが、明らかにレインボー氏は動揺している。ごめんなさい。この神社、そうなのよ。

でもそこは竹灯籠じゃないのか氏子の皆さん。どんだけ焼酎飲んだのよ。

 

レインボー氏は慎重に車を進め、実家の前まで来た。私は急いで車を降りると玄関に向かい扉を開けた。そこには、出掛けている筈の兄と兄嫁がいた。私の読みよりもゆったり行動していたらしく、これから兄嫁の実家に向かうところだという。

息を飲み、慌てる私。レインボー氏の車はガレージの入り口を塞ぐように停めていたから。急いで兄にはすぐに車を移動させるから待ってと伝え、レインボー氏に車を動かしてもらうよう頼みに外に飛び出した。

 

母と兄には、以前からお付き合いしている人がいることだけは伝えていた。だが対面の挨拶はきちんと場を整えようと思っていた。まさかこんな慌ただしい中でのご対面になるとは。

 

おろおろしている私を尻目に、兄は長男に車を出させながらレインボー氏に挨拶をした。レインボー氏もやや緊張気味に挨拶を返す。お互いの笑顔が少々強張って見えたのは気のせいだろうか。いや、これだけ突然のことなのだから無理もないか。

 

その流れで舞い上がっている母とも引き合わせることになったのだが、兄嫁が「ここじゃなんだから上がってもらったら?」などと気を利かせてきた。いやいや、彼は生もの買ってるからすぐ帰る。私も蕎麦をもらいに来ただけだから、となんとか言って引き上げることが出来た。

 

ほんの数分の出来事だったけれど、すべてがまさかの連続で、これは後々までお互いに笑い話として語り続けることになると思う。

 

 

それから半年。阿蘇からの帰りに将来についてレインボー氏と初めてしっかりと話をしてから1ケ月ほどが経っていた。汚部屋はほぼ片付き、最後の仕上げとばかりに全自動洗濯機がやってくる日、私は久しぶりに兄に会った。兄の協力で洗濯機を受け取り、アパートに戻るタイミングで話を切り出した。

 

「きちんと話しておきたいんだけど」

 

 

自然と兄の背筋が伸びる。

 

レインボー氏とはおそらく結婚をすること、レインボー氏の方がずっと現実的に考えてくれていること、ただ、それは今すぐではないこと等を兄に伝えた。兄も薄々そういった話になることを予測していたのか、まっすぐ前を見てハンドルを操作しながら、真摯な目で耳を傾けてくれた。

 

お調子者な部分もある兄だが、面倒見と責任感はかなり強い。子供の頃、共働きだった両親に代わって三人の妹の世話は殆ど兄が見ていた。そんな兄なので、いくつになっても大切な話は通しておきたかった。車内の空気が冗談の通じない緊張感を漂わせる。

 

私の話を聞き終えた兄は、まず簡潔にこう言った。「ありがたい話だ」と。

 

今まで何も言われてはこなかったけれど、やはり兄は私の将来をかなり案じていたそうだ。鬱病を発症してからは長く休職していたし、社会復帰したと言っても派遣を転々としている。今後もらえる年金などを考えても、ひとりでやっていけるのかと。誰かが一緒にいてくれる、それだけで心強い。

 

「まぁ、言ってもその歳なんだから、タイミングはお互いがいい時でいいんじゃね?」

 

ですよね! うん、本当にそうですよね! 言うてもアラフィフですからね!

 

 

帰り際に兄は、このことは母も知っているのかと確認してきた。実は、もう概ね母には伝えている。このまま枯れていくのかと思っていたそうで、大変安堵していた様子だった。兄が後回しになったのは、なんとなく父親感があったから。男親には、やはり彼氏という存在にのことは打ち明けづらいものだ。

 

幸い兄は手放し歓迎な様子だったけれど、父が生きていたらどのような反応をしたのだろう。もし今も生きていれば、とっくに諦めていた娘が結婚するかもしれないのだからたぶん兄と同じようにありがたがったかもしれない。

 

生前であれば、どうだっただろう。還暦も迎えることなく父が亡くなった約二十年前は世論も違っただろうし、想像もつかない。

 

でも、口はへの字に曲げているんじゃないかなって気がする。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい④「あれやこれや、どうするの」

たぶん旅行エピソード以上にレインボーさんの反応が気になるお話です。もしNGもらったら、この記事も含めて明日以降の投稿は停止する可能性があります。

緊張の第4話スタートです。

 

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元々婦人科系の持病を持っている私。その影響から重い貧血の症状が出ることがあり、次第に仕事にも支障が出るようになってきた。今日は大丈夫だと思って出勤するも、顔色の悪さから即行で帰宅指示が出る日もあった。欠勤も増えた。しがない派遣社員だ。収入が減るのは大変痛いのだが、如何せん身体がいうことを聞かない。

 

加えて約10年来の鬱病でもある。発症当時よりずっと軽くはなったけれど、思いがけずパニック発作を起こすこともあるし、不眠の症状は未だにかなり手強い。薬は欠かせない。

 

遂には月の半分近くを欠勤する事態にまで陥り、意を決して派遣契約の更新を断ることにした。先方は勤務形態を柔軟に対応するので継続して働いてほしいと言ってくれていたが、とにかくまとまった療養期間がほしかったので少々心苦しかったがその申し出を断った。

 

この場合、契約期間満了とはなるが派遣先は継続雇用という機会を用意してくれており、それを断る形での離職なのであくまでも「自己都合による離職」に規定されるという。そうなると失業給付を受給する際の給付制限が2ケ月もかかり、経済的にも苦しくなる。

 

だがそこでハローワーク職員さんからのアドバイス。

私の場合は長い通院歴もあり、医師の指示書をもらうことで給付制限が無くなるとのこと。早速クリニックに指示書を依頼し、結果国民健康保険の保険料も軽減してもらうことが出来た。これからお財布事情が厳しくなるので、少しでも助成が受けられるのは本当に嬉しい。

 

 

実はお仕事をしている頃、週1~2回程度レインボー氏が仕事帰りに車で私を拾い、アパートまで送ってくれていた。私の職場は市中心部にあり、そこを基点に私とレインボー氏とは真逆の郊外に住んでいる。明らかに遠回りになるのに、帰り道だからといつもレインボー氏は快く私の職場近くに迎えに来てくれていた。

 

早退や欠勤が増えてきた頃から当然お迎えはお断りが続いており、レインボー氏には心配をかけてしまった。更に無職になってしまったのだから、これはもうお荷物以外の何物でもない事態。

特技は怠惰、趣味は惰眠という私から仕事を取ったら、人間らしさすら無くなるのではないか。誰よりも私が私に対して不安しかない。

 

そんなタイミングで周囲のお友達の圧もあり、汚部屋の断捨離がスタートした。毎日今まで通りの時間に起きて、自分のペースでお片付けに取り組んだ。離職直後は市役所やハローワーク、派遣会社への各種手続きも予想以上に煩雑で頻繁に外出することも多かった。おかげで思いのほか張りのある日々が続いた。

 

 

二度目の認定日でハローワークへ行く頃には、だいぶ体調も安定してきた。体力も回復してきたような気もしている。あくまでもマイペースに過ごせているからであって、再就職しても絶対に大丈夫だとは言い難いけれど、医師からも良い傾向にあると言ってもらえた。

 

条件的に失業給付は約1年受けることは可能だけれど、そろそろ本腰を入れて求職活動をしても良いかもしれない。早く再就職が出来れば、その分再就職手当が多くもらえることになるのだし。

 

早速ハローワークと派遣会社で求人紹介をお願いしたのだけれど、これがどれも一長一短という感じで改めて世間の厳しさを痛感する。全体的に時給は以前より増加傾向にあるのだけれど、その分実働時間が短いという求人が複数あった。それでは意味が無い。レインボー氏のお荷物にだけはなりたくないので、せめて自立出来る程度の収入は欲しい。さてどうするべきか。

 

 

実はもうひとつ、どうするべきかという問題がある。それは、名前。

 

昔から結婚するなら事実婚だと考えていた私。選択的夫婦別姓が法整備されれば法的な婚姻を結ぶのはやぶさかでないのだけれど、もうとにかく姓の統一が納得いかない。

 

夫婦別姓が導入されれば戸籍制度が崩壊するという意見も目にしたことはあるけれど、それだけで崩壊するならそもそもの制度が不完全なのではないかと感じてしまう。

 

などと抵抗はしているけれど、実際のところ私が折れることになるのは分かっている。納得はしていないが、私が彼の姓を名乗ることがお互いの将来を思えば最も現実的なのだと理解はしているのだ。

 

ある手続きをしに市役所に出向いた際、用件はすぐに片付いたのだがまっすぐに帰る気にはなれなかった。足は戸籍課の前へ。意味もなく記載台にある届出書の記入例を眺めたりしつつ、妙な緊張感で視線をカウンターへ走らせる。そしてカウンターの端に各種届出用紙が格納されているボックスを見つけた。必要な用紙を各々自由に持ち帰られるようになっている。

 

一旦呼吸を整えて、素早くボックスに向かい手早く婚姻届を引き出すとバッグにしまった。

 

なんだか悪いことをしているみたい。でも、実際先走り過ぎている自覚はあるし落ち着かない。心拍数も上がってきて安定剤が飲みたいとまで思った。だってまだ覚悟も納得もしていないのに。

 

帰宅して、改めて婚姻届の書式を確認。意外とシンプルだと感じた。記入する本籍の筆頭者って、亡父になるのか? それとも兄? いや、兄は結婚して新しい戸籍の筆頭になっているから、やはり亡父か。これは近いうちに確認しておこう。

証人って、誰にお願いすれば良いのだろうか。母か兄か、レインボー氏とのお付き合いを後押ししてくれたお友達か。レインボー氏は誰に頼むのだろう。

 

 

後日、コンビニで戸籍謄本を取った。戸籍の筆頭は既に除籍されている亡父。兄と妹は新戸籍を作っているのでそこに記載は無い。姉は婚姻による除籍となっており、更に婚姻日と配偶者の氏名も記載されていた。私もいずれこんな風に記載をされるのだろう。そしてこの戸籍に実質的に残るのは母だけになる。

 

まだ決まってもいないのに、何を感慨にふけっているのか私。レインボー氏にも言えない。あれだけ事実婚でいいなんて言ってた私が、既に婚姻届まで準備してしまっているなんて。

 

もうこれ、私の中では決定事項になっているんだな、と実感した。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい③「給湯器疑惑」

問題は次から次へ。それはまるでネバーエンディングストーリー。

タイトルの意味も分からないまま、第3話スタートです。

 

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駐車場問題が棚上げになってしまったので、レインボー氏がアパートへ来るのは月に2回程度。街中でお互いにへべれけに飲んだ後に、タクシーで移動するということとなった。一晩泊まって、翌朝一番かその次のバスで街中へ車を取りに戻り、自宅へ帰るという流れ。

 

ある日、一旦帰宅するレインボー氏が車を回収したらまた迎えに来るから、竹田市菅生へとうもろこしを買いに行こうと言う。レインボー氏にとって毎年の恒例行事だ。喜んでお出掛けすることにした。

 

菅生の農場で沢山のともろこしを購入した後、知人が営んでいる沖縄そばのお店へ。買ったばかりのとうもろこしを差し入れし、美味しい沖縄そばを食べて、そのまま帰るのかと思ったらディスカウントストアへ行きたいと言うレインボー氏。どうぞどうぞ、何か買いたいものがあるのね。

 

そのお店は前年末にオープンしたばかりで、私は行ったことがなかった。明るく賑やかで、所狭しとならんだ商品をただ眺めて歩くだけでも楽しい。

だがレインボー氏には目的がある。それが何かは聞いていないが、彼が進む方へ一緒に付いて行く。どうやらなかなか見つからないのか、店内の滞在時間だけが伸びていく。そのうちキッチン用品のコーナーへ紛れ込んだ。丁度包丁のコーナーの前に来たので、私はただの雑談のつもりで笑顔で言った。

 

「うちの包丁、独り暮らしする時に百均で買ったやつ」と。

 

するとレインボー氏は一瞬口ごもり、すっと包丁を一本手に取った。

 

「可哀そうだから買ってあげる」

 

え? 買ってほしくて言ったわけじゃないよ! と驚いたけど、確かに長年使っている包丁の切れ味は決して良くはない。なんと言っても使用歴20年以上なのだから。ありがたく買っていただくことにした。

 

その後もお目当ての商品が見つからない様子のレインボー氏は、とうとうシャワーヘッドを探しているのだと教えてくれた。シャワーヘッドか。……どこだろう? 目ぼしいところは一通り見て回ったと思うのだけど。

 

更に歩き回ること数分、ようやくシャワーヘッドのコーナーを見つける。本当に迷路のような店内だ。

レインボー氏は暫く商品を物色して、やがてひとつを手に取った。改めてパッケージを読み込み、納得したような表情をすると、さっと商品を私に差し出す。ん?

 

「はい」

 

「……ん? え? 私の?!」

 

「うん」

 

押し付けるように商品を手渡されて、私は唖然とした。てっきりレインボー氏の実家のシャワー用だと思い込んでいたのだから、ただただ驚いた。

 

実はレインボー氏、昨夜アパートのシャワーを使った時に水圧の弱さが気になったのだと。えぇ、そうかなぁ? と思ったけれど、毎日使っている私には気づきにくいほど徐々に弱っていたのかもしれない。

今後もレインボー氏が来ることを考えるとやはり快適に使っていただきたいので、こちらもありがたく頂戴することにした。

 

 

この後、少し食料品なども買って、こっそり内心で家庭的な雰囲気を楽しんでいたのはここだけの話。そして、レジ直前に先程とは別のシャワーヘッド特設コーナーを見つけて、ふたりで苦笑いしたのもここだけの話。

 

アパートへ送ってもらい、帰宅後早速シャワーヘッドを付け替えて最初のシャワーを浴びる。細かい穴から流れ出るお湯が柔らかくて心地よい。だが、お湯の温度が安定しない。

 

打ち明けるのが遅くなったが、実はうちのシャワーは設定温度を50度にしないとお湯が出ないのだ。それ以下の水温に設定すると、何故か燃焼すら始まらない。更に水温も安定しない。急に熱くなったり水になったりを繰り返す。

 

そのことはレインボー氏にも使ってもらう前に伝えており、シャワーヘッドに加えて給湯器についても早めにガス屋に連絡するなどした方が良いと言われていた。

ガス屋かぁ……。直接連絡するよりも、管理会社経由の方がいいのだろうな。でも少し前にもエアコンとドアホンの工事について管理会社へ電話したばかり。また同じオペレーターさんに対応されたら嫌だな。またこの部屋の住人かよ、とか呆れられないだろうか。

 

そんなことを考えて、なかなか管理会社へ連絡を入れられないまま、次のお泊りのタイミングがきた。だがレインボー氏は私がシャワーを浴びている間に寝てしまった。酔って疲れていることは理解していたが、やはりそんな状況で水温の調整と格闘しながらシャワーを浴びるのは面倒だったのだろう。

 

それはそうだろう。さっぱりして落ち着きたいのに、せわしなく水温調整しながらの入浴なんて、私だって正直嫌だ。自分だけのことだから、これまで面倒臭くて問題を先送りしてきただけだ。

だが今はレインボー氏が絡んでいる以上、もう放置しておくわけにはいかない。

 

私は管理会社へ電話をかけた。例のお客様サービス課だ。そして私の電話を受けたのは前回と同じS氏だった。嫌だと思っていたことほど、現実になるものだ。

S氏の仕事は早く、数分後にはガス屋と連絡がつき、更に30分と経たずに業者の男性がアパートへやって来た。てっきり数日待たされるかと思った。ありがたい。

 

業者さんは早速シャワーのお湯の出を確認しにシャワールームに入るが、すぐにこう言った。

 

「あ~、節水タイプか~」

 

レインボー氏が買ってくれたのは、節水タイプの商品でシャワーヘッドにお湯をワンプッシュで止めるボタンが付いている。そのタイプでは何か問題があるのだろうかと思ったら大問題だった。

節水タイプのヘッドだと、どうしても水圧が低くなるという。水圧が弱くなると、給湯器の温度センサーが反応しにくく、燃焼モードに切り換りにくくなるのだそうだ。

 

えぇ、せっかく買ってもらったのに。

 

業者さんは古い方のヘッドはあるかと聞いてきた。勿論保管している。もし転居することになったら戻しておく為に。取りに行っている間に、業者さんは新しいヘッドを付け直したり、ヘッドを外したままのホースから湯を出した。更にカランの方からも。そしてその度に水圧をリモコンで確認した。

 

「やっぱりこのヘッドだと水圧が低いですね。ホースだけとか、カランなら充分な水圧になるんですけど、ヘッドつけた途端に低くなるんですよ」

 

私もリモコンの水圧表示を見せてもらったが、そこにあったのは「33」という数字。せめて「35」は欲しいという。

でも、古い方のヘッドも水圧は低かったし水温は安定しなかった。そういって業者さんにヘッドをみせてみると、すぐ「あぁ」と納得の表情を見せた。

 

「目が詰まってますね」

 

ふぉーっ! 恥ずかしいー! つまりそれは、私のお手入れ不足!

 

確かに分解してみると、ヘッドの水が出てくる穴が湯垢? ごみ? いや、もうそれが何かなんてどうでもいいけど、びっしり詰まっていたのだ。とにかく恥ずかしい。

 

返してくれれば自分で待ち針とかで解消して付け直すから、業者さんもう帰っていいよ、と言いたくなるくらい彼は長時間、丁寧な仕事ぶりでヘッドの穴をツンツンと突いて詰まりを解消していく。

 

やがてミッションを完了して古い方のシャワーヘッドをホースに繋ぐ。そしてお湯を捻りだす。始めこそ出てきた冷たい水は、瞬く間にお湯へと変わる。そして、その水圧はなんと「55」!

これまでの水圧のなんと弱々しかったことか。そりゃあお湯にはならぬ。

 

「あの、つまりヘッドの詰まりが原因で水圧低かっただっただけで、給湯器にはなんの問題も……」

 

「ありませんね」

 

こうして、シャワーヘッドは旧型に戻ることになった。疑ってすまなかった給湯器よ。

あぁしかし、せっかく買ってもらったのに!!

レインボー氏へは伝えづらいのだが、言わない訳にはいかない。あっさり解決して良かったね、と笑顔で言ってくれるのは分かっている。だからこそ心苦しい。この気持ち、分かってもらえるだろうか。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい②「駐車場問題」

もっとも心配していた旅行のエピソードに対して、レインボーさんからはなんのコメントもありません。何かあれば連絡をくれるはずなので、このまま公開してもよいとお許しをいただいたと判断しました。

そんな訳で、自己満連載はこのまま継続いたします。どうぞ気長にお付き合いください。

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

ゆったりと新たなステージに進み始めた私たち。全ては私の部屋が一定以上片付いたからであって、汚部屋が続いていたらいつまでも先に進めなかったのだと思うと複雑な気持ちになる。

 

阿蘇からの帰りに話した中に、状況が許せば週末をアパートで過ごすのもいいね、という案が出ていた。私は車を運転しないので、アパートの駐車場は契約していない。支払いはレインボー氏がするとして、改めて1台分契約すればいつでも部屋へ来ることが出来る。一度管理会社に確認してみてほしいと言われた。

 

なるほど、そういうのも有りだな、と思った私は、まず不動産情報サイトで住んでいるアパートの駐車場代を確認してみた。だが、部屋の賃貸料しか記載が無い。駐車場代の項目は空欄になっていた。このアパートは駐車場付きなのに、と疑問に思ってそこで初めて問い合わせの電話をかけてみて、返ってきた答えに驚いた。

 

「現在その物件の駐車場に空きが無くて……」

 

そういうことか!

 

鉄道が通っていない、バスの便も年々減っている田舎の地域だ。車はひとり1台が常識で、私のような移動の足が公共交通機関のみという方が珍しい。最近ファミリー世帯でお子さんが運転免許を取得したらしく、若葉マークを付けた車を見掛けていた。一世帯1台なら余裕もあっただろうが、そういうことなら空きが埋まってしまっても仕方がない。

 

 

では、近隣の月極駐車場を当たってみるかと思ったが、これまで駐車場について意識したことがなかったのでどこに駐車場があるかなんて分からない。ネットの賃貸情報サイトには駐車場の情報も掲載されてたので、早速地域を入力して検索してみた。最寄りバス停のそれぞれ前と次のバス停近くになら僅かに空きがあったのだが、そこから徒歩でアパートに来るには距離がある。そして道幅が狭いので歩道らしい歩道も無い。危険なので却下。

 

溜め息を漏らしつつ、近所のスーパーへ買い物に行こうと外出したところで気が付いた。最寄りバス停のすぐそばに駐車場があるじゃないか。飲食店の裏なので目立たないけれど、結構広い。

 

その足で駐車場の入り口まで行ってみる。看板に空き情報が貼り紙されており、期待しながら記載されている電話番号にその場でかけてみた。だが、その情報は少々古く、前月1日付けで2台分の空きが出ていたがすぐに埋まってしまったのだと言う。頑張って勇気を出して電話をかけたのに連続で不発。酷く落胆した。

 

レインボー氏にもそれらをLINEですぐに報告した。仕方のないことだけれど、やっぱり残念。

 

ほぼ同じタイミングで、最近アパートのすぐお隣にあったお店が閉業したようで、片付けの業者らしき人たちがよく出入りしているのを見掛けた。入れ替わりが激しいお店だったけれど、建物はかなり古い。どうせなら建物も取り壊して月極駐車場にしてくれないだろうか。即行で契約するのに。

 

だがそんな安易な思惑など叶うはずもなく、そのお店には同業者が入ることになった。なかなか上手くいかないなぁとがっかりしたが、ここまでが順調すぎたのだ。

汚部屋からの脱却を目指し始めてからの変化は著しい。あまりの荒れ具合に、宅配業者にさえ玄関のドアを開けたくなかったくらいだ。

 

 

結局駐車場問題は一旦棚上げとなった。現在は月に2回程、週末に飲みに出た際にアパートに1泊してもらい、翌朝のバスでレインボー氏は帰って行くのが定番になっている。思い描いていたのとはまったく違う現状だが、駐車場が見つからない以上は仕方がない。

 

前述の繰り返しのようになるが、私の住む地域は市中心部から遠い郊外。そしてレインボー氏がご両親と住む自宅も逆方向の郊外。お互いに交通に不便を感じる環境で、私が運転できない以上は気軽に行き来は出来ない。彼にばかり負担を掛けていて心苦しい。

 

新たなスタートと言いながら、出鼻を挫かれてしまった。これでは先が思いやられてしまう。そんな気落ちする部分と、いやいやまだ始まったばかりじゃないか。解決すべき問題はこれから次々に起きるんだぞ、と檄を飛ばす部分とが自分の中で交錯する。

うん、そうだ、そうなんだ。すべては始まったばかりなんだ。

 

 

月並みだが、結婚はゴールじゃなくて通過点に過ぎない。まずその通過点に向かって当面の課題をひとつずつ片付けていくのが、今すべきことじゃないか。駐車場問題なんて、そもそもそんな大きな問題でもない。アパートの専用駐車場に空きがあるのが一番望ましいけれど、そうではなかった以上どうしようもないじゃないか。

 

ぐずぐず言っておきながら、自分で答えを出してしまった。長々と独り言に付き合わせて申し訳ない。

 

もちろん常にアンテナは張っておいて、駐車場の契約を獲得する野望は持ち続ける。これはいつかは解決するべきことだから。と言いつつ、案外先にお互いの覚悟が決まる可能性も無くはないけれど。

それは、レインボー氏と私の共通認識である「なるようになる」に表れている。なにごとも焦る必要はない。そのタイミングがくれば動けばいい。ただしぼんやりしているとタイミングを外してしまう可能性もある。私は自他共に認めるぼんやりさんなので、そこは気を抜けないのである。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい①「熊本阿蘇、覚悟の旅」

タイトル長すぎ問題が発生。

汚部屋問題が一旦の区切りを迎えたことで、私とレインボーさんとの関係も一歩前進するのか?

そして、この先も書くことはレインボーさんからお許しは出るのか?

冷や冷やしつつも、新章スタートです。

 

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春先、地元酒造組合がキャンペーンを開催した。指定の酒蔵を巡り、掲示されたポスターのQRコードをスマホで読み込みスタンプをゲットする、いわゆるスタンプラリー。県内の北から南、東から西と、かなりの広範囲にわたっており、山間部に点在する酒蔵を巡るには車が欠かせなかった。

 

私とレインボー氏はコンプリートの景品である旅行券を狙い、毎週末ドライブデートを兼ねて酒蔵を巡った。ペーパードライバーの私が意味不明なナビをしてレインボー氏を混乱させたりしつつ、一緒に長い時間を過ごし、いろんな話をした。そこでお互いの価値観を知る貴重な時間を共有できたと思う。

 

趣味は合わないし、性格は陰キャと陽キャと正反対。共通しているのはお酒が好きで年齢が同じということだけ。だけど、一緒にいて楽しい。笑ってばかりで、実に有意義だった。

 

 

こうして長時間の運転という基本的にレインボー氏が一方的に苦労した甲斐あって、無事にスタンプをコンプリートした。暫くして景品の旅行券が届いた。額面は10000円。ふたり合わせて20000円。あら、どこに行きましょうか。

 

スタンプラリーのドライブも日帰り旅行と言えなくもないけれど、観光とか散策なんてしていないし、スタンプを獲得するだけで酒蔵見学をしたわけでもなく、移動時間ばかりが占めていた。だから近場でもいい。旅行らしい旅行をしたい。そう思っていた。

 

そんな気持ちが通じたのか、それとも向こうも同じことを考えていたのか、ある日、泊りがけで出掛けようとお誘いを受けた。基本的に週末休みのレインボー氏が、月曜日に有給休暇を取るので日曜日から1泊でという。わざわざ有休を取って、日付も指定して、行き先や宿泊先は任せてほしいなんて言われたら、もう期待しかない。言われるがままに旅行券を預けて、すべてを任せた。

 

 

半月後の日曜日、彼のお迎えで友人の経営する沖縄そばのお店でのランチから、私たちの旅行は始まった。

 

山の上にある老舗遊園地で大勢の家族連れがレトロ感満載のアトラクションを楽しむのを眺めたり、動物園のコーナーでチンパンジーの大きさに驚いたり、フラミンゴや孔雀の美しさに見惚れたり。老舗というだけあって、幼少期に見て大はしゃぎしていた懐かしい占いのからくり人形が、故障していてもなお展示されていることに感激したりした。

 

一通り巡り、恐怖の吊り橋を渡ったところでフラワー観覧車に乗ろうと言うレインボー氏。小さな観覧車なのですぐに終了すると思っていたけれど、意外とゆったりとした時間が流れた。

なんと言うか、緊張した。すぐ横にいるレインボー氏の顔から意識して視線をはずし、ふもとの街を見下ろしていた。そこでの会話は、普段通りの世間話。何かがおかしい。

 

やがてゴンドラは終点に。シチュエーション以外は、あまりにも普段と変わらない。

 

日も傾いてきたので、その日の宿の高原ホテルへ向かう。なんて言うか、私が期待していた旅では無いのかな。それならそれで、単純にこの旅行を楽しもう。

 

ホテルに着き、少し休んでから夕食に向かう。ビュッフェ形式のレストランで飲み放題を付けて、思い思いに料理を取ってきたりお酒をお替りしに行ったり。

 

そこで見たことのない芋焼酎を見つけ、試しに注文したところ凄く美味しい。ラベルを確認すると、地元の酒造会社の商品だと判明。昔からその酒造会社は知っているけれど、その商品はまったく知らなかった。レインボー氏もその焼酎を気に入り、食事の後半はその焼酎のソーダ割りばかり飲んでいた。

 

改めてお酒の相性は私たちにとって重要ポイントだと気づかされる。

 

 

部屋に戻ってからは、お風呂も済ませて持ち込んだお酒で飲み直し。日本酒からハイボールまで飲み散らかして、ここでもいつもの他愛ないお喋り。ちょっとした非日常を楽しめて、それはそれで素敵な時間なんだけれど、何かが物足りない。でも、それをレインボー氏に伝えることは出来ず、その夜はへべれけで就寝。

 

翌朝、レインボー氏の提案で熊本県阿蘇市のあか牛のお店に行くことに。レストランで朝食を終えると、少しまったりしてから移動時間を考慮してチェックアウト。一路阿蘇へ向かう。

 

途中のコンビニでコーヒーを買おうと言っていたレインボー氏だけど、ここで最悪の事態が起きる。コンビニが、行けども行けども現れない。自販機も無い。田んぼと畑しか無い。山道を曲がっても曲がっても景色が変わらず、コーヒーにありつけないことでなんだかレインボー氏が苛立っているように感じて、内心オロオロしてしまう私。普段が穏やかで優しい面しか見たことが無いので、動揺してしまった。

 

だいぶ車を走らせてようやく自販機を見つけると、ここまでの労力へのお礼も兼ねてボトル缶コーヒーを奢らせてもらった。

 

そこからも長い時間を移動。コーヒーを飲んで落ち着いたのか、ちらほらと現れる牧場の艶やかな牛にふたりで感激しつつ、やがて緑に囲まれた中にひっそりと佇む食堂に到着。

 

レインボー氏のお目当てのメガ盛りは限定数が出てしまっていて、お互いに普通盛り。私がちょっと食べきれなくて、残りのご飯をレインボー氏に食べてもらったのはご愛敬。

 

 

帰り道、途中ちょっと冷や冷やしたけれど、楽しい旅だったな、と思い返していると、不意にレインボー氏が改まって聞いてきた。

 

「妙春ちゃんは結婚についてどう考えてる?」と。

 

「えっ?!」と全力で聞き返してしまった。もうこのまま、そんな話なんてしないまま旅は終わるのだと思っていたから。

 

慌てレインボー氏の方を見ると、いつもの優しい表情でちらりとこちらを見た。

 

動揺しすぎて、それ以上レインボー氏の顔を見ることが出来なくて、視線をそらしながらも正直に話さなければと頭を高速回転させた。そして強く口をついて出たのがこんな言葉だった。

 

「私は、名前の問題だけなの。そこだけなの」

 

この頃になっても、私は婚姻による姓の統一に不満を持っていた。それを正直に口にしたのだが、そこでレインボー氏が言った。

 

「その気持ちは分かるし、事実婚という形も知ってる。でも、もしどちらかが怪我や病気をした時、同意書にサインは出来ないんだよ」

 

そこで自分の浅はかさを静かに強く指摘された気がして、衝撃を受けた。あぁ、この人はそこまで考えてくれていたのか。私なんかより、よっぽど私のことを思いやってくれている。

 

すぐにどうこうしたい訳ではないけれど、考えていない訳じゃない、とレインボー氏は言う。そこは知っておいてほしかった。それを伝えることがこの旅行の目的だった、とも打ち明けてくれた。

 

そうか、私以上に彼は、この旅行に並々ならぬ思いを寄せていたのか。なんだか自分が恥ずかしい。

 

「いつかタイミングが来たら。その時まで待っていてほしい」

 

もうこれ、充分ではないだろうか。レインボー氏は待っていてほしいと、まるで自分が猶予を求めているかのように言った。でもこれは、私に対しても猶予をくれたのではないだろうか。私が改姓に対して納得して、将来のその日を受け入れる為に。

 

アラフィフで将来なんて、それほど時間は残っていないかもしれない。これらは私の思い過ごしかもしれない。でも、私はそのタイミングが来るまでの時間を、慎重に過ごさなければならない。

 

覚悟を決める時が近づいている。

 

【続く……】