妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】汚部屋からの脱却④「どしゃぶりカラーボックス」

連日長文のブログ投稿失礼致しております。

本日は第4話です。あと9話あります。素人にとっては長丁場ですが、もう暫くお付き合いください。

 

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高校はバスで片道一時間の距離だった。一度乗り換えが必要だったが、下車するバス停と再度乗車するバス停の間にルート次第で最大5軒の本屋に立ち寄ることが出来た。毎日のように最低でも1軒は必ず本屋に寄って帰るのがルーティンだった。

 

例えば本屋に寄って小説の文庫を一冊購入する。そこからバスに乗って自宅まで本を読む。帰宅してからも読む。翌朝、マイカー通勤の父の出社ついでに学校へ送ってもらいながら、車内で本を読む。父の出社都合で早い登校になるから、教室でも読む。下校する頃には大抵読み終わっているので、再びバスを乗り換えるタイミングで本屋へ寄って新しい本を購入する。

 

そんな調子で高校時代から蔵書が膨れ上がり、20歳頃には180×85cmの書棚に入りきらなくなった。カラーボックスなども活用したが、限界を感じ家族に車を出してもらって古本屋へ買い取りに出した。そこからまた数年ごとに何度か溜め込んでは買い取りに出し、都度3000円から6000円になった。

 

そもそも私は物が捨てられない性分で、汚部屋になったのもそれと掃除が苦手なのが要因。独り暮らしを始めてから、更に高さ180cmの書棚を2つも追加購入していたのに、それでも本が収納できずに床に積み上げられた状態。もはやどこに何があるか分からないし、うっかり既に購入していたのと同じ本を購入してしまったこともある。アプリを活用するようになって、それは対策が出来るようになったけれど。

 

 

さて、レインボー氏に部屋を見てもらって自ら進退窮まる状況に追い詰められたわけだが、これでも過去何度も本を買い取りに出してきたことで、購入には一応慎重になっていたつもりだ。本当に面白そうで、必要だと思うものしか購入しないようにしてきた。そのつもりだ。

だが、あくまで「つもり」なだけであって、現実はそうではなかったようだ。そもそも、だいぶガラクタは廃棄したものの、レインボー氏に部屋にあがってもらって寛いでもらうにはまだまだの荒れようなのだ。

 

もうひとつ大型書棚を買いたい。レインボー氏にも、大量に本が積み上げられた位置に書棚を増やせばきっと綺麗に収まると希望的観測を伝えた。だがレインボー氏はその考えにいい顔はしなかった。彼は私の蔵書の話になると、必ずこう言った。「捨てなさい」と。

 

物を捨てられない性分であることは既に伝えている。汚部屋を実際に見て、それも理解してもらえていると思っていた。だけど、こと本に関しては一貫して処分することを強く勧めるレインボー氏。平行線というには、私も相手の言い分が正論であることは承知しているので強くは出られない。

 

共通の友人にも、しまうところが無いなら買うんじゃないと諭された。

片付かない人の特徴として、収納場所がないなら収納アイテムを買う、というのがある。収納アイテムが増えれば物は片付くかもしれないが、部屋は当然狭くなる。また物が増える。収納アイテムを買う。更に部屋が狭くなる。とても分かりやすい悪循環だ。分かってはいる。伊達に汚部屋歴を長くやっているわけではない。

 

部屋が片付くまで、本は電子にしてはどうかとも友人は提案してくれたけれど、書籍は紙媒体が至上だと思っているので、そこはどうしても首を縦に振ることは出来ない。

 

 

そして遂に決意した。ある朝、3つある大型書棚の中身をすべてぶちまける勢いで要・不要の本の仕分けに取り掛かった。中には開いて数ページしか眼を通していない作品もあった。だが、それも私には合わなかったのだと判断して不要に仕分けた。可愛らしいイラストのエッセイも手放した。一時期ハマった特撮系のムック本もまとめて処分することにした。

学生時代から集めている、現在では大御所レベルの漫画家の作品などはさすがに手放すことは出来なかったけれど、それでも厳選に厳選を重ねて大量の書籍と別れることにした。

 

だが、それでも僅かに書棚に収まりきれなかった。本当にあと少しなのだが。

 

よし、カラーボックスをひとつだけ買おう。三段のやつを。明日、近所のホームセンターでさっと買ってパッと組み立ててしまおう。そう決意した。

 

一応、レインボー氏にLINEでお伺いを立てた。あっさり「いいんでない?」との返信。うん、決定。

 

翌朝は、激しい雨だった。まぁ、急ぐ話でもないし、日を改めれば良いかな、と思った。でも、そうすると今日一日は何をして過ごせば良いのか。中途半端な部屋で雨音を聞きながら、あとカラーボックスが揃えばいいだけなのに、とモヤモヤしながら時間の過ぎるのを待つのか。耐えきれん!

 

普段はボーっとするのは得意なのだけど、やる気スイッチが入ってしまっている状態では無駄な時間が苦痛に感じられてしまうようだ。私は両手が空くようにショルダーバッグをかけ、傘をさしてホームセンターへ向かった。

 

目的の商品はすぐに見つけた。希望のカラーも在庫あり。すぐにスタッフさんがカートに載せて運んできてくれた。そこで、駄目元で尋ねてみた。

「うち、ここから徒歩5分もかからないんですけど、カートをお借り出来ませんか?」と。

「え、店外への持ち出しは……」

 

ですよね。そりゃそうだ。無理言って困らせてごめんなさい。

 

と言うことで土砂降りの雨の中、通常徒歩5分もかからない距離を両手に約90×30cmの箱を抱え、右肘と右肩に傘を挟み、ヨタヨタと軽く15分は時間を掛けて帰宅した。当然ずぶ濡れになった。ホームセンターの向かいには大きなスーパーと交差点があり、結構な交通量。きっと私を目にした人は、心から不思議に思っていただろう。こんなどしゃぶりの中で何をしているんだと。

 

帰宅後は、思っていた通りにパッとカラーボックスの組み立てを完了。物を作るのは嫌いじゃない。寧ろ楽しくて好き。

その流れで収納しきれなかった物をサクサクと納めていく。勿体なくて捨てられなかった、趣味でコツコツと集めていた画材や、全然身に付いていない英語や中国語の教材。そして、大好きな画家の画集。それらは思いのほか、ぴったりと収納された。

 

 

数日後、大量の段ボール箱や紙袋にまとめておいた処分本を買い取りに出す為、レインボー氏に車を出してもらった。数量が多いので20分ほど査定に時間がかかると言われたけれど、実際はその倍くらいは経っていたように思う。それもそのはず、買い取り可能点数は「194点」。買取価格の付かなかったものがざっと見で40~50点近くあったので、そりゃ当然時間もかかったわけだ。スタッフさんありがとう。お疲れ様です。

 

買取価格は約5000円。勿論その日のレインボー氏とのデート代に消えた。

 

そして改めて、部屋で彼の監査を受ける。一目見て「おぉ! スッキリしてる!」と声を上げていた。安心してゆったり寛いでもらえる空間が出来たと、大いに安堵した。だがその時、レインボー氏の口から新たな問題提起がされた。

 

「暑い」

 

実は私の部屋、エアコンはあるのだが入居した20年以上前の時点で既にかなり年季が入っており、数回使ったのみで後は電気代が怖くて放置していたのだ。近年の夏の酷暑も、扇風機で凌いできていた。今年もそうして生き抜く予定でいた。

しかし、ただでさえ暑がりな彼のことだ。これはおおごとだ。

 

こうして、私は次の難題に挑むことになるのだった。

 

【続く……】