妙春堂の日常ーアラフィフ婚のすゝめー

アラフィフ婚にむけての日常つれづれ日記

【連載】汚部屋からの脱却③「照明器具は喫緊の課題」

好感触だった就職の面談は、残念ながら見送りとなりました。僅差で他の方に決まってしまったのかな?

まぁこればかりは仕方がない。気を取り直して、本日も暇つぶしがてらにご覧ください。

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

アパートの居室には、照明器具が設備に含まれていなかった。だが、私が入居するとき、そこには古さを感じさせるペンダントタイプの照明がぶら下がっていた。クリーム色をした可愛らしい傘だった。気になるのは、紐に延長用のレインボーカラーの長いリボンが括り付けられたままだったこと。せめてそこは前の入居者さんに退去前に外してほしかったし、大家さんも次の入居者募集する段階で外しておいてほしかった。

 

1円でも安く新生活を始めたかった私は、そのいつの誰が使っていたか分からない照明器具をそのままありがたく使わせてもらうことにした。レインボーカラーのリボンは真っ先に外したけれど。

 

それから約20年は経った頃だろうか。ONOFF切り替えのボールチェーンの根元が外れやすくなった。最初は金具に引っ掛け直して補修していたのだけど、そのうち金具がどんどん弛くなって、針金でぐるぐる巻きにして固定するようになった。それで長いこと無事に過ごすことは出来ていたのだけど、やがてその日がやって来た。

 

灯りを点けようとボールチェーンを引いた瞬間、本体の奥の方からバキッと音が鳴り、それ以降照明はうんともすんとも言わなくなったのである。ボールチェーンを引いても何の抵抗も無い。灯りは当然点かない。寿命が尽きたらしい。

 

さて、今後部屋の灯りはどうする? 取り敢えず電気スタンドがあるので、それでいいだろう。本当は早々に買い替えて取り付けてしまうべきなのだろうけれど、でもほら、うち汚部屋だから。踏み台は持っているけど、私の身長では天井まで手が届かない。だから業者さんとか誰かにお願いするしかないのだけど、だけどね、汚部屋だからねぇ……。

 

 

そんなこんなで約一年近くも電気スタンドの灯りだけで生活していたのだけど、気づかぬうちに身体に影響が出ていた。運転免許証の更新に出向いたところ、視力検査で「ギリギリです」と言われてしまった。「眼鏡を検討してください」とも。けれど私自身は視力低下の自覚は全くなく、ペーパードライバーなので今後も運転する気はないので気にしなくてもよいかな、なんてその時は軽視していた。

 

それでもなんとなく心の片隅にもやもやは残っていたのだろう。ある日チェーン店のメガネショップに入ってみた。いくつかの検査をしてもらい、現在の私の視力を矯正するならこのパターンだというレンズの組み合わせで試着させてもらったところ、なんということでしょう。視界が驚愕レベルにクリア!

 

普段の私の見ていた世界は、なんとかすんでいたのか。本来の世界はなんと美しいのか。

 

その日は要検討と言うことで一旦帰ることにしたのだけど、数日後改めて来店。前回には無かった赤いフレームの眼鏡に一目惚れしてしまって、即決でその子を今後の相棒に認定した。ブルーライトカットレンズにしてもらい、基本はパソコン作業をしている時のみかけるようにした。

 

 

それから更に1年以上が過ぎた。レインボー氏と付き合うようになり、私の部屋が汚部屋だと打ち明け、更には照明もずっと前から壊れていることも告白した。当然のように絶句するレインボー氏。散々照明器具を買いなさいと言われるけれど、汚部屋だから、天井に手が届かないから、と言い訳を続ける私。

 

口ではのらりくらししていたけれど、本心ではどうにかしなければならないことは分かっていた。一度だけお試しに汚部屋を見てもらった際に、照明器具の傘に溜まった埃を見て「汚~い」と言われ、電気スタンドを点けてみたら「暗~い」と言われたのは、結構胸に刺さっていた。嫌な感想をも包み隠さず正直に口にするのは、本当に彼の美徳だと思っている。

 

そんな時、半月以上前に退職した派遣会社から退職金が出ることを知らされた。継続3年以上なら派遣契約でも退職金が出ることを初めて知った。

 

部屋はかなり片付いたし、退職金のおかげでお金に余裕が出来た。思い切って照明器具を購入することに決めた。デートや買い物の度にホームセンターや家電量販店で室内照明のコーナーを何度も物色。自宅のアパートの天井を眺める度に、見てきた照明を想像で設置して脳内シミュレーションした。

 

その時に気が付いたのが、シーリングライトが適さないこと。照明の電源と火災報知器の間隔が狭くて、もしシーリングライトを設置してもぶつかりあってしまうことが判明したのだ。近年室内照明と言えばシーリングライトが主流で、吊り下げタイプはデザインも少ない。選択肢はかなり狭まってしまうけれど、そこは仕方がない。レインボー氏にはLINEなどでそれらの事実を報告しておいた。

 

そしてある週末に、遂に照明器具を購入の上取り付けまで行なうことになった。この頃には週末のデートが定着しており、昼前にインテリアショップを含めて4軒のお店を回ってリモコン付きの吊り下げタイプの照明を購入。帰宅早々、レインボー氏は取り付け作業に取り掛かり、私は昼食を作り始めた。

 

私は料理についてかなり苦手意識があり、満足なものは作られない自信があった。でもバレンタインにレインボー氏の好物の田作りを作ったのをきっかけに、ホワイトデーにフライパンも買ってもらって、地味に料理には挑戦し続けていた。

 

そして、この日作ったのは「ご飯と味噌汁」「ニラだれ鶏とミニトマト」「玉子焼き」「冷奴」「ちりめん2種」という献立。ちょっとした定食メニュー。このミニトマトと卵は、この日レインボー氏が差し入れてくれた食材。急遽メニューに追加することにした。

 

タイミングよく照明が付いた頃に料理も完成。明るくなった部屋で、秘かに彼用に購入していた食器で配膳して「いただきます」をした。レインボー氏からの感想が気になって、食べている姿を見ることが出来ないでいた。緊張していたら、「おかわり」と大変ナチュラルにお茶碗を差し出された。反射的に「はい」てお茶碗を受け取って立ち上がるとお台所へ。おかわりを手渡しながら、漠然と幸福感を覚えた。

 

「ごちそうさま」のあとに、レインボー氏は言ってくれた。「普通にうまいよ。充分やん」と。

素直に嬉しい。これからも更に料理を頑張りたいと思えてきた。

 

 

昼食の後は、外出して飲みデート。馴染みのお店で改めて今後の部屋の改造について語りあう。次の目標は溢れる書籍の山の対処。私は新たに大きめの本棚を買って、本を収めたいと思っている。この日インテリアショップに寄った時に書棚コーナーで手頃な品を見つけた。今ならまだ退職金も残っているし。

 

だが、そこでレインボー氏の説教が始まった。怖いわけではないのだけど、懇々と丁寧に辛抱強い語り口。

要約すると、新しい本棚は不要。今ある読まない本を処分しなさい、と。自分でも重々承知していたことで、ずっと眼を逸らしていた。物を捨てられない性分なので、処分が最善なのは分かっていても出来なかった。

 

だけど、どうしてでしょうね。レインボー氏に言われたら、少々の抵抗はするのだけど、結局は従ってしまう。言っていることは正論だから。

 

明るくなった部屋に帰って、思案に暮れる。さぁ、次の課題は書籍と本棚。どこから手を付ければ良いのかも分からない、これも途方もない作業になるだろう。

 

【続く……】