アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚夫婦の日常つれづれ日記

【連載】アラフィフ婚への道22「今日お嫁にいきます」(祭りのあと)

披露宴の終わり、シェパードの「Home Town」で退場。

マットキャブの「LOVE STORY」でエンドロール上映。

そしてゲストのお見送りである。

 

おひとりお一人に自家製紅茶屋やまどりさんの紅茶を手渡しでプレゼント。やまどりさんはこの日のゲストのおひとりでもある。

さすがに生産者本人にその紅茶を渡すのはどうかということで、彼女には別のプレゼントを用意した。

 

だいぶゲストが去ってから、はたと気が付く。

 

タクシーチケット、いつ渡すんでしたっけ? (大間抜け)

 

隣で一緒にお見送りをしてくれていた兄に声を掛けたら慌ててチケット持って出口に走って行った。いや、本当に申し訳ない。

 

殆どのゲストは式場で手配したバスを利用していたので、あまり必要はなかったけれどそういうものでもないからね。

 

その際私も居ても立っても居られず思わずバス乗り場の辺りまで色打掛姿で走り回ってしまい、スタッフさんから慌てて呼び戻されたりした。その様子を見ていた号泣していた友人から「嫁ー!」と叫ばれたのはちょっと、いや、かなり面白かった。

 

虹夫さん、こんな落ち着きのない嫁で本当にいいですか? 今更ですか、そうですか。

 

改めてロビーに戻り、プランナーさんをはじめとした式場スタッフの皆さまからご挨拶を頂く。

感謝と祝福を言葉を頂き、こちらこそそれ全部お返ししたい気持ちである。

 

プランナーのTさんはこのブログも読んでくださり、本当にありがたい限りである。式が終わった後も読んでくださっているかな? 勢いで書いてるから読みにくい部分もあったと思う。そこはすみませんでした。

 

その後、着替えを済ませ持ち込みした荷物は後日回収することを確認。

支払い金額と支払いの方法や期日を確認し、私と虹夫さんはそれぞれの予定に向けて別行動をなった。

 

私は家族と宿泊するので、一度チェックインのためホテルへ。

その後、家族との二次会と喜寿祝いのために貸し切りのBarへ向かう。

 

虹夫さんはこの日来てくれていたお友達との二次会に、お馴染みの居酒屋へ。

私もBarへ行く前に少しそちらへ顔を出したのだけど、そこでこれでもかと花嫁の手紙を絶賛頂けた。あれだけ書けるのは凄い、お墓の話が良かった等。

お墓の話でこれだけ笑いが取れたのも、アラフィフという世代ならではと言えるだろう。

 

自分の素直な気持ちを率直に書いただけではあるけれど、これだけ褒めてもらえると調子に乗ってしまう。うむ、自重自重。

 

お店の大将からもお祝いを頂き、お礼を言ってBarへ移動。

本来この日Barはお休みだったのに、特別に開けてもらえて本当に感謝の言葉に尽きる。

 

そこでも大絶賛の手紙。

姪たちからは、自分たちのことが出てくるとは思わなくて嬉しかった、とも言ってもらえた。ここまでくるとむず痒いな。

 

そんなにも絶賛されるのに、何故私は書く仕事に就くことが出来ないままなのだろう。

ちょっと拗ねてしまったりもするが、今は素直に褒め言葉に喜んでいよう。

 

喜寿祝いに母に枕をプレゼント。無呼吸症候群なので、少しでもこの枕で改善出来ると良いと思う。

 

数時間後、今度は虹夫さんが顔を出してくれた。その直後に甥や姪達は疲れが出ていたので早めに切り上げたが、そこからも叔父や兄と大盛り上がり。

特に招待が直前になってしまった叔父には謝罪して、改めて礼を言った。

 

その叔父だが、スキンヘッドでちょっぴり強面。だけどとても気さくで歯に衣着せぬコテコテの関西弁なので、披露宴の中で妙に人気が高ったらしい。いろんな方と挨拶をしたようだが、皆さん印象深く残ったようだ。

 

叔父からも「俺は昔からお前の文才はよお分かっとった」と言われたが、大分と大阪で離れて住んでたのに、読んだことないでしょうが。調子のいいことを言う人であるが、そこがこの人の魅力だ。

 

翌日、別れる前に妹に言われたのが「以前より声が高くなってない?」というもの。

そうだろうか? と首を傾げるも、叔父の奥様から「幸せになると声が高くなるのよ」との説を教えてもらいビックリ。

 

今の私は、妹の知る昔の私より幸せらしい。虹夫さんのおかげであろう。ありがたいことである。

 

それから更に数日は、虹夫さんのご家族と親睦を深めてお酒も深くなってしまったり、SNSを通じていろんな方にお礼をしたり、式場への支払いを済ませたりと大忙し。

 

現在はその疲れが限界を迎えたのか、ちょっとばかり寝込んでいる。

 

 

まだまだ名前の変更手続きや引っ越し、転居届などやることは盛りだくさんだが、このブログは一区切りである。

 

遂に連載シリーズ「アラフィフ婚への道」も今回で最終回。

 

22回か。長かったな。約半年足らずか。

 

これ以降は熟年の新婚夫婦の日常を、出来ればイラストを交えて投稿していければ良いなと思っている。描く速度はかなり遅いので、投稿のペースも遅くなるとは思うが、楽しんで続けたい。

 

 

長丁場、お付き合いくださりありがとうございました。

また読みにお越し頂けると嬉しいです。

 

【連載】アラフィフ婚への道21「今日お嫁にいきます」(親族唖然のもぐもぐタイム)

ケーキ入刀、ファーストバイトもサプライズバイトも爆笑の中、つつがなく終了。

 

席に着き、何をするかと言えば当然『食べる!』

 

既にテーブルにはパンとデザートも置かれている。早く食べたい!

 

場内は歓談タイムなのか、急に静かになり、照明が落とされてカーテンが閉められる。

次、何があったかな? あ、余興のカラオケの準備かな。じゃあそれまで今のうちに食べちゃおう。正面に手付かずの魚料理があるので、それをちゃっちゃと片付ける。

 

魚料理を完食。続いてメインの肉料理に取り掛かるが、皿の位置は10時方向。うぬ、食べにくい。

 

普段なら自分で皿の位置を入れ替えるくらいはするが、今は色打掛姿である。袖をうっかり汚しそうで迂闊に動けない。ぐいっと身体に角度をつけて、やや強引にナイフとフォークで肉を捌いてお口に運ぶ。

柔らかくて美味しいー。このお料理にして本当に良かった。

 

その頃にはBGMにピアノ演奏でディズニー映画『ピノキオ』の「星に願いを」が流れ始めている。

あれ? この曲は選んでいないな。ディズニー曲はフレンドライクミーだけだったのに。

 

不思議に思っていると、正面の大きなスクリーンが上がり、そこにはカラオケを披露してくれるはずだった友人が立っている。その横には、司会をしていたはずのさっしーさんが電子ピアノでこのBGMを生演奏していた。

 

え、こんな演出知らないよ? サプライズ? やられたー!

 

驚きつつ、メインの付け合わせをパパっと口に放り込み、友人のちょっとした小ネタに笑い、気恥ずかしくなるスピーチに照れる。

 

私と虹夫さんは、そもそも私が惚れられたという流れから始まっているが、今はすっかり私が惚れこんでいる。そんなこともネタにされて妹たちの反応が気になるところだ。

 

友人からの歌のプレゼントは、ミーシャの『アイノカタチ』。プロ並みの歌唱力に聴き入る。

 

素敵な歌のプレゼントの後、切り分けられたウェディングケーキがお祝いのハート型のプレートと共に運ばれてきた。これは食べるのもう無理だろうな。でもプレートだけでも記念に欲しいな。

 

なんて思っている間にあっさりと花嫁の手紙のお時間。

再び照明が落とされて、私たちにスポットライトがあたる。熱い。

 

キャプテン氏から預けていた手紙を受け取り、虹夫さんにマイクを持ってもらう。

手紙の内容は便箋4枚にわたり、虹夫さん地味にビビる。

 

ピアノ演奏の『糸』に合わせて、私の手紙は次のように展開した。

 

 

皆さま、本日は遅すぎたふたりの門出にお越しくださり、本当にありがとうございます。

(ここで最初の笑いが起きる)

 

長年私たちの関係を辛抱強く見守り、痺れを切らしていたお友達の皆さまには、ようやくこの日を見届けていただけることを心から嬉しく思います。

(一番後押ししてくれていた友人が「本当や!」と野次を飛ばし、思わず「ごめんなさい」と返す)

 

皆さまもご存じのように、私は既に初々しさもなく、未熟というにはトウが立ち、あとは枯れるだけだと思っていました。

実は秘かに、いずれは実家の墓に入れてもらえないだろうかと思い、兄の子供たちに相談する必要があるとも考えていました。

姪っ子ちゃん、甥っ子ちゃん、安心してください。叔母ちゃんは虹夫さんの家のお墓に入ることが約束されました。

(ここで割れんばかりの大爆笑)

 

 

この後は、20年前に他界した父へ、私のような問題児を嫁に迎えてくれる虹夫さんのご家族に感謝してくださいとか(ここでも笑いが起きた)、母にはこれまでお互いに言いたい放題言い合ってきたので、もうこの場で話すことはありませんとか、結構な内容だった。

 

そして後半には、虹夫さんのご両親への想いを綴り、最後の挨拶に虹夫さんの姓に私の名前を合わせて手紙を締めくくった。

 

なんという達成感。思いがけず大爆笑を頂いてしまった。

私の書いた文章でたくさんの方を楽しませることが出来たことが嬉しくて、完全にふわふわと舞い上がる。

 

この1年ほど、かなり書くことへの気持ちが再燃しているので、なんだか調子に乗ってしまいそうだ。

 

こうして、手紙を添えた花束を母に贈り、兄にはブートニアを。

BGMは島津亜矢の『The Rose』。

続いてエドシーランの『Thinking Out Loud』の中、新郎と新郎父の挨拶で披露宴は幕を閉じた。

 

 

長かったし、あっという間だった。

 

姉と妹からは「しっかり食べてる」と呆れらた。余興前の僅かな時間に高砂のふたりが黙々と料理を食べている姿がゲスト席からよく見えており、「この時間はなんだ? もぐもぐタイムか?」と困惑されていたことがのちに判明する。

 

それでもデザートは食べそびれたし、プレートもそうそうに処分されてしまっており、若干の心残りは生じてしまった。

そこは私が早く申し出なかったのが悪いので仕方がない。

 

 

次回、祭のあとへ続く。

 

【連載】アラフィフ婚への道20「今日お嫁にいきます」(クリームまみれの花嫁)

これから和装での登場だというのに、恐ろしいサブタイトルである。

 

虹夫さんと和装へチェンジして、次はお色直しでの入場を控える。

もう躓く心配はないが、階段を降りながらの入場は大変だろうとガーデン側扉から入ることを提案されていた。

 

しかし、酷暑の令和。暑い。

既に待機の段階で汗だくの虹夫さん。会場内では私たちのプロフィールムービーが流れている。

 

すっかり貫禄のついたおじさんとおばさんでも、昔は可愛らしく凛々しい時代もあったのである。

 

横を見ると、ダラダラの汗を豪快に紋付の袖で拭う虹夫さん。あ……。

 

ギョッとするも、もう仕方がない。夏の日差しが悪い。タオルを持たせていなかった私が悪い。

開き直って、前を向く。

 

やがてさっしーさんの声と共に扉が開き、和装の私たちが登場する。BGMは筝演奏の「春よ、来い」

 

……ん? なんか会場の空気がこちらに向いていないな。何かがおかしい。不思議な違和感を覚える。

 

実はあとから妹に聞いたのだが、この時ゲストの皆さんは私たちが最初の入場と同じ中央の階段から登場すると思っていたそうだ。だから皆さん中央奥の扉に注目していて、カメラも向けていた。

それが思いがけなく右のガーデン側の扉が開いたものだから、驚いて意識が追い付かなかったらしい。

 

妹がその時に撮っていた動画にも、一斉に右を向く大勢のゲストの後ろ姿と、妹の思わず飛び出した「そっちかーっい!」という絶叫が入っていた。すまん。

 

再びキャプテン氏の先導でラウンドし、高砂へ着席。先程食べられなかった料理に、更に追加の料理が並んでいる。メインのお肉も鎮座している。これは絶対に食べる。

 

だが、ほとんど間を置かずしてウェディングケーキの入刀タイムがやって来た。うわーん、おにくー。

 

登場したケーキは四角く、リクエスト以上と思えるほどにフルーツが盛り盛り。これからこのケーキで入刀をして、ファーストバイトだ。

 

虹夫さんから私へは大型のシルバーのスプーン。そして私から虹夫さんへは、40センチくらいはありそうな子供のおもちゃのスコップ。それだけで場内爆笑。

 

お互いに強引に無理のある量をすくい、食べさせる。楽しいけれど苦しい。だけどとても嬉しい。

因みにこの時のBGMはブルーノマーズの「Just The Way You Are」

 

お互いに遠慮なく大きくケーキを掬い上げ、正々堂々と差し出されるケーキを一口で食べ……ようと努力はしたが、土台無理な話。

何度かに分けながら、なんとか口に頬張った。

 

続いては、本来ならばケーキをゲストの皆さんに切り分けてサーブするのだけど、その前にひとつサプライズ。

今年の元日に入籍をして、この日の新婦側の受付をしてくれたご夫婦にも、サプライズバイトをしていただくことになっていた。

このお二人は、入籍だけはしたものの、お披露目の会すら無い超地味婚のままだった。

 

以前からご夫婦揃って私と虹夫さんを応援してくれており、その感謝を込めてお返しをしたかった。

 

さっしーさんの呼びかけに、まず旦那さんが立ち上がる。友人嫁、突然のことにその場で泣きじゃくる。

高砂に上がる頃には嫁、大号泣。それぞれどのスプーンにするかといくつか候補を見せると、旦那さん真っ先におもちゃのスコップ。それで女性に食べさせるのは無茶だ。

 

慌てて友人嫁が手にしていた金色の大きなスプーンと旦那さんのスコップを交換させ、まずは友人嫁がスコップにほんのちょっぴりクリームを掬った。可愛いけどそれじゃあ面白くないわ、友よ。

 

一方で、旦那さんはスプーンにモリモリとケーキを掬う。この対比が、このご夫婦の楽しくて素敵なところである。

 

ボロボロ涙をこぼしながら、必死にケーキを頬張る嫁。もはや限界。

かたやほんのちょっぴりのクリームを口に入れた旦那さん、突然むせて嫁と私にクリームを噴射。

 

ぎゃあーーー。

 

ご夫婦が所属する飲み助テーブルのメンバーからは大爆笑。私ももう笑しかない。

 

クリームまみれの赤い色打掛、汗ぐっしょりの紋付。もう、あかん。

セントクレアヒルズさん、衣装部さん、ごめんなさい。

 

この後も友人嫁は顔を真っ赤にさせて長いこと号泣し続けていた。

余計なことしやがってと怒られているのかと一瞬不安になったが、シンプルにサプライズにしてやられた悔しさと嬉しさに泣いていただけらしかった。ホッとした。

 

彼女たちにも、結婚の祝福を受けてほしかったので、このサプライズは成功ということで良いかと思う。

 

 

次回、花嫁の手紙で本領発揮。親族唖然のもぐもぐタイム編へ続く。

 

 

【連載】アラフィフ婚への道18「今日お嫁にいきます」(ブーケトスの死闘)

もはやサブタイトルの方向性が分からなくなっているが、本日も結婚式の様子を綴りたいと思う。

 

隠し部屋の窓から、外の大階段の一部が見える。ゲストの皆さんがフラワーシャワーの準備をして待機してくれている。暑そうだ。

年々暑さを増している日本。今日が天候に恵まれたのは良かったのだが、恵まれ過ぎである。

 

大階段、名の通り長いんだよな。これ全部下まで自力で歩いて降りて行かないといけないんだよな。

 

ドレスの裾踏んで躓いて、下まで落ちていく姿しか思い浮かばない……。

 

いやいや、虹夫さんを巻き込む訳にはいかない。

なにがなんでも一緒に無事に降りて行かなくては。

 

扉の前でスタンバイ。虹夫さんリクエストのBGM、ゲーム『ファイナルファンタジーⅣ』のオープニング曲が流れる。荘厳で勇ましい曲での登場だ。今日もう何度目だという緊張が走る。

 

扉が開き、眩しい太陽のもと、沢山の笑顔に迎えられる。幸せな瞬間ではあるが、心はびくびく。

 

たぶんこれまでの数多くのご夫婦の中でもかなりゆっくりペースで階段を降りていたのではないだろうか。ここでも虹夫さんとふたりでドレスとつまみ上げての歩みとなった。

 

が、後からスタッフの方から「ドレスの裾は持ち上げ過ぎないように」とご注意を受ける。

これは披露宴のエンドロールで見て分かるのだが、ローアングルで撮影していたのでドレスを持ち上げ過ぎたことで私の太い太いふくらはぎが丸見えになっていたのだ。

これは、かなり恥ずかしい。

 

天空の森セントクレアヒルズは丘の上にあるのだけれど、そんな状態をものともしない令和の夏。

ゲストも私たちも汗だく。降りそそがれるはずのフラワーシャワーも、皆さんの手の汗で花びらがくっついて高く舞わない事態に。

中にはくっついて塊状態になった花びらを顔面に向かって投げつけてくる強者もあり。

 

長く時間をかけながらも階段を最後のステップまで降りきり、達成感を覚える間もなく次はブーケトスである。

ブーケトス用に、式で使用したのとは一回り程小さなブーケを用意して頂いている。

さっしーさんの案内で、独身女性が一ヶ所に集められた。

大好きな姪っ子ちゃんたちには、事前に「是非ブーケトスに参加してね」と呼びかけていたが「え?」とか「なんで?」とか、「後ろの方で見とく」なんてことしか返してくれなかった。悲しい。

 

まぁ確かに私のブーケとか間違いなく晩婚になりそうだけど、でも確実に素敵な人と巡り会えるのだぞ。

 

こうなると、私たちと年齢の近いバツあり独身女性の闘志が背後から強く感じられた。

「妙春ちゃん! 右!」「いいや、左で!」などと指示が入り、まさに圧が強い。

 

私は正面に、ふざけてるのかというくらいに眩しい太陽を望み、腰を虹夫さんに支えてもらう。

テイラースウィフトの「ME」が流れる中、私も虹夫さんも汗だくだ。

 

私は腕力に自信がない。放り投げて誰の手許にも届かずに地面に落ちてしまうことのないようにとだけひたすらに念じて、思いっきりブーケを高く放り投げた。

 

わぁーっという悲鳴のような歓声が上がり、拍手が起きた。良かった、誰かの手にブーケは渡ったのだ。だが、誰の手に?

 

虹夫さんと同時に、意を決して振り返る。

そこにはブーケをしっかりと掴み、驚きつつ歓喜で破顔した虹夫さんのお友達。

 

私でいいの? と興奮して叫んでいたけれど、勿論いいですとも! 是非バトンタッチでお友達さんにも幸せになって頂きたい。

その幸せが、今回のように結婚という形は限らないけれど。

 

そのお友達さんと記念の撮影をして、ゲストの皆さんは披露宴会場へ。私たちは化粧直しへと別行動。

 

その時、ゲストの中から女性の声が上がった。

 

「虹夫さん! ブーケあと2つ増やしよ!」

 

私と虹夫さんの仲を最大に後押ししてくれた方だった。この日のブーケトスに意欲を燃やしていたひとりらしい。

 

後から複数のお友達が撮影してくれた動画を観てみると、やや斜に見守る姪っ子ちゃん3人に、私の後ろに陣取る3人の友人たち。その前には小学2年生の虹夫さんの親族ちゃん。

他にも3人ほど虹夫さんのご親族がいた様子。

 

私の投げたブーケは思いのほか高く遠くへ飛んでいって、最後部に陣取っていた女性がピョンと飛んだ両手にすっぽりと収まっていた。

 

その時の、ブーケを取れなかった女性陣の悔しそうでありながら最高の笑顔を見ると、この結婚式、やって良かったのかな、などと感じるのだった。

 

さすがにブーケの数は増やせないけれど。

 

そこは今回の獲得者に新たなブーケを投げて頂ければ……。

あ、これはプレッシャーになるから言ってはいけないな。

 

 

次回、もたつき入場からの披露宴前。紫のちゃんちゃんこ編へ続く。

 

【連載】アラフィフ婚への道19「今日お嫁にいきます」(紫のちゃんちゃんこ)

披露宴用に髪飾りをティアラとベールから、小振りの胡蝶蘭へと変更。

再び長い階段を降りる形での披露宴入場に備える私と虹夫さん。

 

会場では友人からプレゼントされたオープニングムービーが氣志團の結婚闘魂行進曲「マブダチ」のBGMで流れる。

 

扉が開き、ブルーノマーズの「MARRY YOU」が流れる中を、キャプテン氏の先導を受けて厳かに躓きながらの入場(それはもういい)

因みにこのBGMはノリが軽いという意見もあるらしいが、それが私には素敵だと感じたのでお願いした。私のように50手前までグズグズしているのもどうかと思うのだ。

 

乾杯は沖縄そばの大将の音頭。その瞬間にディズニー映画「アラジン」の「フレンドライクミー」が流れ、いよいよ酒飲みの友人や親族の我慢が解放される。この曲は結婚式に合うのか? とも思ったが、友人たちとこれから楽しく飲もうという雰囲気にも良いだろうと考えると間違いではなかったと思う。

 

そして皆さん、まぁ飲まれる飲まれる。

ウェルカムスペースの希少酒を開けてくれとか、高砂横に鎮座する菰樽のお酒はいつ飲めるのかとか。わかってはいたけれど、ちょっと落ち着こうか。

 

暫くの間をおいて、改めて葉加瀬太郎の演奏曲「万讃歌」をBGMに酒飲み待望の鏡開き。

 

ウェディングドレスでの鏡開きは珍しいとは思うが、それもまた面白いだろう。アラフィフの挙式披露宴がもう既に普通じゃないのだから、もはやなんでもありだ。

 

樽酒の中身は八鹿酒造の笑門(しょうもん)。地元のスーパーならどこででも入手可能な一般的なお酒で、それが寧ろ私はこれまで手を伸ばすことはなかった。

わざわざお金を出すなら、珍しいとか限定とかを買ってしまう私。それを今回はかなり反省した。

 

樽や桝から滲み出る木の風味も手伝っているかもしれないが、美味しいじゃないか笑門。これはリピである。

八鹿酒造の専務さんも言っていた。うちで一番うまいのは笑門だ、と。

 

その専務さんからのご厚意で、なんと今回は桝のプレゼント付き。

その桝にはブーケの追加を要求した友人の会社に依頼して、私と虹夫さんの花個紋をレーザーで焼いてもらっている。

 

こうして見なくても、本当にこの挙式と披露宴は多くの人の助けと優しさを受けて成り立っている。

 

共通の友人のスピーチもあり、あっという間にお色直しの時間が来た。

え、まだこれ食べたい、というお料理も我慢して席を立つ。

 

結婚式というのは、特に新婦はまともに食事など出来ないと聞いていた。特に姉からは披露宴の最中は食べる余裕はないし、披露宴後にワンプレートで用意してもらっていても落ち着いて全部食べるなんて出来なかったと聞いていた。

 

それなら披露宴の最中に頑張って食べようぜ! が虹夫さんとのこの日の目標だった。

この色気のなさも、アラフィフ婚ならではかもしれない。

 

お色直しはまずは私から。エスコートは事前に母に頼んでいた。

 

しかし、司会のさっしーさんから名前を呼ばれた母、見ているこちらが驚くほどキョロキョロキョロキョロ。貴女、話しておいたでしょうが、まぁどうせ忘れるとは思っていたけども。

 

高砂前に来た母に、更に司会からアナウンスが続く。

 

この10日前に、母は77歳の喜寿になっていた。間の悪いことに当日は持病の影響で入院していたが、以前からこの披露宴でサプライズで喜寿祝いをしようと兄弟で話をしていた。

 

プランナーさんもさっしーさんもその案を後押ししてくれて、兄の準備した紫のちゃんちゃんこと帽子を母に着せる。

 

エスコートさえ忘れていた母だ。驚いてはいたが、嬉しそうに笑ってくれた。

 

私と手を繋いで、どっちがエスコートしてるのだか分からなくなりながらもアリアナグランデの「Lovin` it」で中座した。

母の手はすっかり肌に張りがなかったし、小さくなっていた。お腹だけは出てるのに……。

 

しまった、人の体型のことは言えないんだった。

 

私は知らなかったが、この時私と母の後ろでは、姉と妹が凄い勢いでドレスの裾をさばいてくれていたらしい。Aラインのトレーンの長いデザインだったので、それでなくてもさばくの大変だったのでとても助かった。

 

ロビーでは父の遺影とも一緒に記念撮影。

 

その後の会場では虹夫さんもお母さまのエスコートで中座したのだけれど、そちらは最初からサプライズだった。BGMは氷川きよしの「碧し」

奇しくもどちらも母親にもサプライズをしかける形での中座となった。

 

 

次回、和装チェンジのゲストどっきり。クリームまみれの花嫁編へと続く。

 

【連載】アラフィフ婚への道17「今日お嫁にいきます」(絶望と爆笑の人前挙式)

無事に婚姻届を受理され、帰宅。

午後になり、兄の運転で母と式場入りする。

 

ウェルカムスペースは前日に確認しているので、控室で少し母と話す。

別段、「お世話になりました」的な会話もなく時間になり、案内されるままにお支度に入る。

 

ヘアメイクをしてもらいながら妹たちに控室やロビーの様子を尋ねてみると、予想外に早い時間から皆さんお集まりくださっている様子。

 

展示している珍しいお酒の瓶に、飲み仲間が群がっていたらしいのは予想済み。殆どのお酒は空き瓶だけれど、一部閉じてしまった酒蔵の未開栓の商品も記念に並べていたので、のちの披露宴で「それも開けようよ!」という仲間の興奮を収めるのが大変だった。

 

やがてベールダウンやリングボーイのリハーサルが終わったということで私と虹夫さんとの大聖堂でのファーストミート。もう散々衣装合わせや前撮りでお互いを見ているので新鮮さは無く、見つめ合ったまま言葉に困るふたり。

この辺りに、アラフィフの初々しさを失った悲哀を感じる。

 

一旦大聖堂前にある隠し部屋で待機し、入れ替わるように親族紹介が行われる。

 

続いてゲストの皆さまが大聖堂に案内され、いよいよ扉の前でスタンバイ。まずは虹夫さんがひとりで入場。暖かい拍手に迎えられて、ゆっくりと確実に歩いて行く虹夫さん。扉の隙間からその様子を見守りつつ、自分の入場が不安でならない。

 

だって、練習まったく上手くいってないのだもの。

 

所定の位置についた虹夫さんに続き、私が入場。

一歩、二歩、三歩目に案の定ドレスの裾を踏む。なんとか入ってすぐの母のもとへ着くと、ベールダウンを受ける。気が急いていて、母の助けを受ける前に頭を起こしてしまう。

 

そして、ここからが地獄だった。

決して長くはないバージンロードが永遠に続く茨の道に感じるほど、果てしなく感じた。

裾が! ドレスの裾が私の歩みを妨げてくる!

 

もはや一歩ごとに躓く有り様。途中からかなり裾を持ち上げて歩くものの、歩くことに集中するあまり立ち止まる位置を取り過ぎて慌てて歩を止める。

 

虹夫さんの迎えを受けるのだが、腕を組む手順がすっ飛ぶ虹夫さん。もうわちゃわちゃである。

 

なんとか壇上に上がり、司会のさっしーさんの進行でどうにかこうにか式は進む。

私の考えた誓約の言葉を述べ、指輪の交換。

 

ここでリングボーイの私の甥が登場。

ゲストの皆さんはどんな可愛らしい男の子が出てくるのかと、カメラを低いアングルで構える。

扉が開くと、そこにいるのは19歳の若者。結構ないい大人が現れて困惑が広がる大聖堂。

 

甥はなにか面白いことをしてくれるかと期待していたが、慎重にしっかりをこちらに向かって歩みを進め、丁寧にリングピローを虹夫さんに手渡した。

なんだよ、ターンのひとつも決めてくれるかと思ったのに。という拍子抜けはあったけれど、あの生意気盛りだった男の子が、こんなにも紳士的に成長していて内心感動もしていた。

 

さて、事前のリハーサルでは指輪をうまく持てずにオロオロした私だけれど、本番ではなんとか様になったと思う。因みにその指輪はパソコンを叩いている今も着けているけれど、なんだかまだ慣れなくてムズムズ感がある。

 

ベールアップをして、遂に近いのキスまできた。

 

こんなおっさんとおばさんのキスとか見て嬉しいか? と拒否反応があったものの、虹夫さんは当たり前にするものだと思っていたそうなので覚悟を決めた私。

事前に新婦の顔がゲストに見えやすいように、首の角度などをアドバイスされいた虹夫さんだけれど、なんとそこでもすっ飛んだらしく、右腕を高く掲げて私の頭を掴みにかかった。

 

えぇ? なに? なんで頭を押さえにくるの?

驚いて激しく動揺する私。私をゲストによく見えるように、私の頭の位置を調整しようとする虹夫さん。

「頭? え、頭?」と思わず逃げようと大きな手から頭をかわす私。

爆笑するゲスト。

 

もうどうしたらいいのか考えるのを諦めた虹夫さんは、最終的に右手で私の顔をロックしてブチュー。

 

なんじゃこの誓いのキスは! 完全にツボにはまった私。キスが終わった後も笑いが堪え切れず、ゲストに向かって恥ずかしげもなく声を上げて爆笑。それ見てゲストも更に爆笑。

 

ゲストに指輪やサインをした誓約書を披露して、承認の拍手を受け、さっしーさんの結婚成立宣言を受けて式は終了。

 

そして、退場という地獄の再来。

散々また躓きつつ、でも今度は虹夫さんにもさりげなくドレスをつまんで持ち上げてもらいながら、なんとか最後のお辞儀まで終えることが出来たのだった。

長かった……。

 

 

次回、フラワーシャワーを受けながらの階段落ちという恐怖と戦う、ブーケトスの死闘編へと続く。

 

【連載】アラフィフ婚への道16「今日お嫁にいきます」(プロローグ)

週末に市役所支所の時間外受付で婚姻届を出した。

そして週が明け、いよいよ今日は挙式披露宴の日だ。

 

昼過ぎに兄が母と私を式場まで送ってくれるので、その迎えが来るまではゆっくり休んでおこうと思っていた。

10時過ぎ、思いがけない番号から電話がかかる。市役所の支所である。

 

あー……、やっちまった。婚姻届に不備があったんだな。

 

がっかりしつつも話を聞いてみると、私たちの記入箇所ではなく、保証人の「本籍」に不備があるとのこと。

 

婚姻するふたりだけではなく、保証人にも本籍を書く欄はあるのだけど、記入をしてもらい際に細かいところまで覚えていないという。ここは本来書いてもらう側の私たちが、本籍も必要なので確認しておいてください、なりの事前のお願いをしておくべきだった。

猛省。

 

その場でググってみたところ、あるサイトに「保証人の本籍が分からなければ、県名市区町村名までで良い」と記載がされていたので、それに従って番地などは省略していた。

 

それが問題で、本来は保証人欄の本籍も番地まできっちりと記入が必要なのだという。

 

「どこかのサイトで云々かんぬん」と説明したところ、「あ~、サイトには嘘の記載が多いんですよ。こういう場合は各自治体の公式サイトを確認することをお薦めします」と職員さん。

なんてことだ。

 

さぁ、ここからが大変。急いで虹夫さんに連絡。どう動くかを話し合う。

私はすぐにでもどうにかしなければと気が急いているのだけど、虹夫さんは「すぐにどうにか出来ることじゃねーやろ。明日以降かな」と。

えぇー、そんなのやだ。せっかくなら日の佳い今日に処理をしてほしいです。

 

ここでまた意見の相違。

 

虹夫さんが折れてくれて、それぞれで保証人へ連絡をして改めて教えてもらうことにした。

まず私から新婦側として記入をしてくれた方へと電話をする。月曜日の朝から本当に迷惑だったとは思うけれど、さいわい先方はお休みで連絡が付いた。

更に幸運にも、ちょうど最近本籍を書き出しておいていたらしく、そのメモを見つけてすぐに教えてもらえた。

 

何度もお礼を言って電話を切る。

次は虹夫さんの方なのだけど、そちらの保証人様は飲食店のオーナー。朝から仕込みでてんてこ舞い。ようやく連絡がついても「いま寿司握ってるので、すぐには無理です」と。

昼のお迎えの時間までになんとかなるかどうか……。

 

間に合わなければ、それはもう仕方がない。運を天に任せる。

この時点で、私は既に支所に向かった。徒歩15分程度のところだ。

夏とはいえ、午前とは思えない暑さの中、支所のロビーで今か今かと知らせを待っていた。

最初の連絡から約1時間後、保証人様がお店の近くのコンビニで住民票を取り寄せたとかで詳細を送ってくださった。

 

よし!

 

早速窓口で今朝電話をもらった者ですと伝え、担当者の方から先日提出した婚姻届を一度返していただいた。そこで私の代筆にはなるけれど保証人欄を完全に埋め、改めて内容を確認してもらう。

 

「あの、一点確認なのですが……」と職員さんが言うには、同居を始めた日または挙式をした日に『令和6年7月』とあるが、ふたりの住所はまだ別々。挙式はされたんでしょうか、と。

 

「今日です」

「え! 今日?」

驚く職員さん。夕方なんで、昼には式場入りなんです、と話すと「それは急がないとですね」と。

 

せっかくだから届け出の日を今日の日付に変更出来ないか聞いてみたけれど、そこは変更が出来ないとのこと。残念。

 

だけど、こうして正式に私と虹夫さんは夫婦となり、新しい戸籍が作られることになりました。

 

忙しい中、対応してくださったオーナーさんには本当に頭が下がる。私の我が儘に振り回された人がここにも……。

 

 

本日の教訓。

婚姻届の本籍は保証人も記入が必要。

その本籍は番地枝番までの詳細が必要。

婚姻届の提出日は変更出来ない。

行政手続きの不明な点は、公式サイトで確認すること。

 

 

次回、絶望と爆笑の人前挙式編へ続く。