アラフィフ婚のすゝめ

アラフィフ婚夫婦の日常つれづれ日記

緊急ダイエット宣言

先月中旬から始めた女性専用体調管理アプリ。

基礎体温は勿論、体重と体脂肪率も管理が出来ます。

 

元々は酷い貧血症状や更年期障害かな? な症状のチェックのために取り入れたのですが、体重がヤバい状況になっていたので、そちらの管理にも丁度良かったです。暑くて外に運動に出る気にはなりませんでしたが、酵素ドリンクを取り入れた食事管理をしつつ体重と体脂肪率の推移をチェックしていました。

 

体重は10日程で4㎏は減ったのですが、そこで停滞。そして体脂肪率は上昇しました。

これは良くない傾向。やはり運動していないのが良くないのかな、などと考えてレインボーさんにフィットネスバイクをおねだりしてバッサリ切り捨てられたりしつつ、食事管理は続けていました。

 

そんな折、週明けにスーツを着なければならない事態が発生しました。

 

スーツ……。もう3年近く着ていない。そしてこの2年で激太りした。

それは、つまり……。

 

恐る恐る、パンツスーツを引っ張り出します。パンツのウエスト、キツっ……。

ジャケット、ボタンとまらん……。

 

最悪だぁぁぁぁーっ!!!!!

 

その瞬間から、集中的緊急ダイエットの強制スタートが決定しました。

丁度お昼頃で、その日の朝は海藻こんにゃくサラダを食べていました。夜は早めの時間に小さめの冷奴を食べて、そこから断食開始です。

勿論お酒も当分はお預けです。

 

すぐにレインボーさんにもこのことは伝えました。ダイエットに取り組む3日間は週末にあたります。週末と言えば、レインボーさんとのおデートです。美味しいものを食べて、楽しくお酒を飲むのがルーティンです。

 

つ・ま・り・・・

 

今週のおデートも中止が決定しました。あぁ……(嘆)

 

いやいや、嘆いている暇はありません。動画サイトで有酸素運動や筋トレの動画を漁っては片付いた部屋で大暴れ。滝汗かきながら、麦茶を煽って水分補給。

 

今朝は酵素ドリンクを割る大量の炭酸水に加え、もし空腹に耐えきれなくなった時の為に刺身こんにゃくと豆腐を購入。

これから本格的にファスティングダイエットがスタートです。目標は、そうだな、ウエスト5㎝減かな。

ということは体重はマイナス5㎏?! それを3日で!

きっつ!!!!!

 

しかし、やらねば。ここまで太ってしまったのは誰のせいでもなく自己責任。

短期集中、ストイックに頑張ります。

 

たまに生じる認識のズレ

私とレインボーさんは共通点もあるけれど、キャラクターは真逆です。

 

男兄弟の真ん中のレインボーさんと、三姉妹の真ん中の私(一番上に兄がいますが)

同学年で

お酒が好き。

共通項はそれくらいじゃないかな? それ以外はことごとくタイプが違います。

 

年齢が同じだけあって見てきたテレビ番組や流行ものなど、話題は合うのですが好みは異なっていて、レインボーさんはバラエティーの、特に今でいうリアクション芸人さんが好きです。

私は特に好きなものは無く、その時にテレビで流れていたものをおとなしく見ているだけで、クイズ番組も歌番組もなんとなく眺めている子供でした。父の影響で基本はニュースやドキュメンタリーを見ることが多かったかな。

 

あ、でもドリフはレインボーさんも私も大好きです。ザ・ドリフターズは偉大。

 

美術館や博物館が好きで、お寺や神社の意匠を見るのも大好きな私に対して、レインボーさんはきょとん顔。

先日もデパートの画廊で『水森亜土展』があったので一緒に立ち寄ってもらったのですが、作品の数々に私が「可愛いー」「セクシーで素敵ー」とうっとりしているのを、レインボーさんは苦笑いで付いてくるだけ。退屈させてしまった……。

 

もふもふな小動物が好きで、特に猫はいつか飼いたい私に対しても、レインボーさんは無反応。

中でも犬は基本的に苦手らしく、小型犬や猫なら平気らしいです。

 

幼少期は人見知りが激しくて、今でも根っからの引きこもり体質のインドア派な私。休日は自室でのんびりするのが落ち着きます。

一方、生傷が絶えない活発な少年期に、休日は用がなくても外出しないと落ち着かない行動派なレインボーさん。社交的で顔もかなり広いです。

 

 

そんな陰キャと陽キャの私たち。そもそもお付き合いは、ちょっと複雑なスタートでした。

 

私としては、お互いに気持ちが通じ合ったと思えた日が印象深く感じていました。だからその日が私の中での記念日だったのです。

 

でも実はこの時、私は明確に言葉で意思表示はしていなかったのです。それがレインボーさんには不安だったのか、後日改めてランチをした時にそういうことで良いのか確認をされたのです。

 

ひとりで舞い上がっていたことを反省した私。改めてお互いに「よろしくお願いします」をしたのでした。

 

はい、ここでふたりの間に認識のズレが生じました。分かりましたよね?

私は最初に感じた認識のまま、今日まできてしまいました。そしてレインボーさんは、言葉で伝えあった日がスタートだと認識していました。その時差、約1週間。なんてこったい。

 

丁度私が記念日だと思っていた日は週末で、お泊りの日でもあったので事前にプレゼントを部屋に準備していました。そしていつものお店でふたりで飲んでいました。そこへ共通のお友達が現れて、お喋りをしている中で私たちの付き合いの長さの話になったのです。

 

「1年」と応える私。

「ほぼ1年」と応えるレインボーさん。

……ん?

 

「付き合うことになってからは1年だけど、言葉にしたのはもう少し先」と付け加えられて、ハッとする私。いやだ~、私ってば勇み足~! と、内心頭を抱えました。

仕切り直せばよいものを、準備したプレゼントを更に1週間置いておくのもなんだなと、その夜ほとんど眠りかけているレインボーさんに私は半ば強引に手渡し。レインボーさんは当然面食らっていましたが、快く受け取ってくれました。

 

今回は完全に私の思い違いでしたが、人格も生き方も性格も何もかも違うのですから、認識にズレが生じるのは無理もないとは思います。こういうのって、男女の性差からもくるものなんでしょうか? ちょっと気になりますが、そういう違いを歩み寄ってすり合わせていくのがこれからの課題でもあるんだろうな、と感じています。

 

長い長いお付き合いになる予定なので、そういうのも意識して生活していく必要がありますね。気を引き締めます。

それでは本日はこの辺で。秋の気配も近づいていますが、まだまだ暑さにはご用心です。

 

無事に完走出来ました!感謝!!

昨日、無事に全13話に及ぶ連載エッセイ『アラフィフ婚シリーズ』が一旦完結しました。お読みくださった方、ありがとうございました。

今偶々ここに出くわしてしまっただけで、まだ読んでいない方、よろしければチラ見でもしていってください。私が無言で喜びます。

 

長い独り暮らしで生来のだらしなさも手伝って、とんでもない汚部屋の住人になっていた私。それがレインボーさんとお付き合いをするようになったことで一変、汚部屋からの脱却を目指すことになります。

レインボーさんをはじめ、たくさんの方の協力や善意を得て、ようやく人並な生活を手に入れたあとは本格的に将来について考えることに。

 

言うて、アラフィフです。終活を考える年代ですよ。

女に生まれながら、出産と育児を経験出来なかったのは少なからず(いや、かなり)寂しさは感じますが、こればかりはしかたがありません。その分、次世代や子育て世代になにかしら支援・貢献が出来ればいいな、なんて秘かに思っています。

それも含めて、レインボーさんとは今後のことを少しずつでも話をしていかないといけませんね。

あ、まずは早くお仕事始めなきゃ(焦)

 

今回の連載では最終的に結婚には至っていませんが、たぶん自然とそうなると思います。

連載の中でも書きましたが、今更法的な結婚という手段を取らなくても良いとの意見もあるかとは思います。年齢的にもね。私も出来ることならそう出来ればと考えています。

でも、現行の法整備ではやはり婚姻届を出して姓を統一するのが何をするにしてもスマートにことが進むんですよね。不本意ですが。

いつか私と同じ思いをもつ方々が、なんの障害も無く夫婦別姓を選択出来る時代がくることを願います。

 

ところで、普段のブログと連載エッセイとでは文体を変えています。通常は「ですます調」で書いていますが、連載では「である調」で書きました。一応差別化を狙っていたのですが、大した変化ではなかったかな? 精進しなければ。

 

最後に今回の連載を書くことを許してくれたレインボーさん、本当にありがとうございました。

ふたりでのやりとりを全世界に公開するのですから、抵抗が全くないわけがないと思うのです。それを、文章の変換ミスを指摘するのみに留めてくれたのは本当に優しいと思います。角度によっては私の承認欲求に強引に付き合わされているだけと見えますしね。

中でも市役所での私の行動は、かなり驚かせてしまったようです。あの記事を投稿するときには、私も更新ボタン押したあともドキドキしてました。

 

今後は連日というよりは、なにかネタがあれば投稿をする流れになると思います。レインボーさんとのこととか、お酒のこととか、お友達、ダイエット等々……。

そのときは、またお付き合いくださいね。

 

では、本日はこの辺で。良い一日をお過ごしください。

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい⑥「アラフィフ婚の結論」

2章からなる「アラフィフ婚シリーズ」も、本日で一旦完結。今後はリアルタイムでの中年バカップルネタを公開していくことになる……かな?

今回ようやく第2章のタイトルの種明かしをします。どうにか伝われ!

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

もう何年前だったかすら分からなくなる程かなり昔の話。

残っているメモから推察するに約20年前だと思われるのだけど、私は占いをしてもらったことがある。当時の私は転職を考えており、それについて良い時期や職種について質問したようだ。

 

その頃の私は事務の仕事をしており、今後も事務職を希望していた。だが占い師の女性は「あなたは事務は無理」と断言。話す仕事を強く推された。

まぁ、生年月日を見ただけで最初に発した言葉が「あなたの前世はラテン系の外国人」だったので、どこまで本気で聞けばよいのかは大いに疑問だけれど。

 

その占い師は更に、何かを始めるなら実りやすい時期というのも教えてくれた。そこから自然な流れで結婚に良い年も。内容は頭からはすっかり忘れ去ってしまっていたが、前述のようにその時のメモが残っていた。断捨離中に見つけたので、懐かしさから見返してみた。

そこには20代後半から還暦前までの年齢が羅列されていた。40歳までで該当する年齢に赤丸が付けられているあたり、それ以降まで独身であることはまったく想定していなかったのだろう。まさかアラフィフになる現在まで、レインボー氏に出会うまで、まったくご縁がないまま生きていくことになるとは。

 

事実、レインボー氏と「よろしくお願いします」をするまではそうなることなど微塵も思っていなかったのだから、当時の私は何も間違ってはいない。

 

改めてメモを見る。ノーマークだった人生後半での転機(結婚等)に良い年齢を確認してみると、まさに昨年と来年がそれに当たった。昨年、レインボー氏とお付き合いを始めた。そして、今は時間をかけてお互いの覚悟の時を待っている。

 

あぁ、そうか。来年なのか。

 

占いに流されるつもりはない。でも、きっかけが欲しい時には背中を押してもらえる強力な存在でもある。仮にこの占いに従って仕事を選んだり転職時期を決めて、それが失敗に終わったとしても決定したのは私自身だ。恨み言をいうつもりはない。

 

そもそも、開口一番前世はラテン系外国人だし。

 

 

因みにこの占い師から言われた天職について、もう少し書いておこうと思う。

 

事務職は向いていないというのは既に書いたが、では何が向いているかというと外資系(英語出来ない)、化粧品関係(エステティシャンになったが営業が出来ずに即廃業)、マスコミ・テレビ・雑誌関係(華やかなの苦手)、デザイン・芸術関係(偶にイラストを描くがムラがあると自覚済み)など。

とにかく「動く」ことと、「話す」というものが向いているのだと。どれもこれも、自分では適性があるとは思えない。

 

ただ、思い切って「書くことはどうですか?」と聞いた覚えがある。するとその占い師は「それもいいよ」と。マスコミ関係に該当するようなことを言っていたと思う。当時の私は小説を書きたいと思っていたのだけど、表現力が乏しすぎてその後挫折した。大丈夫だ。挫折を知らない人間などいない(と、自分を励ます)

 

 

この占いのメモを見つけたのは、書くことを諦めきれずにこのエッセイを書き始めてからだ。ここまで書けたのは、このメモに少しばかり後押しを受けたような気がしている。今はとてもセンシティブな精神状態で、占いにすがりたくなる時期なのかもしれない。ただ、このタイミングでメモが出てきたのにも何か意味があるような気がしてしまうのだ。オカルトは嫌いじゃない。

 

ただの願望だと言われてしまえばそれまでではあるけれど。

 

 

さて、ここまで書いておいてなんだが、「結論」と題しているけれど実は結果は出ていない。これは私の「決意」と言い換えた方が良かったかもしれない。私は来年、名前を変える。それに向けて一日も早く再就職をして、仕事を始めてからも決して汚部屋には戻らないと誓う。

 

まるで事務的な言い回しになっているが、愛情の有無を問われれば勿論ある。だがどこかで書いたが、アラフィフにもなって好きだのなんだのと勢いのままに結婚は出来ない。あれは若さの特権だ。

今更失敗を恐れているわけではないが、長く生きた分だけ知識が邪魔をする。目の前にある石橋を、これまでに得た知識と、彼との信頼と努力で、更に堅固に出来たら素敵だな、と思う。それはふたりで渡る橋なのだから。

 

まぁそれも願望ではあるのだけれど、でもきっと実現できると信じている。いや、実現するのだ。私と彼とで、周囲のお友達や家族に見守ってもらって、時には力を借りて。

 

その時はまた、こうして大好きな文章表現の場で気持ちを表したいと思っている。

 

【一旦完結】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい⑤「兄の想い」

実父は若すぎたとは言わないが、鬼籍に入るには早すぎた。私とは仲も悪かった。

将来を心配してくれていただろうけれど、親孝行など欠片もすることなく永遠の別れとなった。

そんな父とのことを思い浮かべながらの第5話スタートです。

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

年末年始はイベントが目白押し。まず私の誕生日があって、クリスマスがあって、年の瀬街中イベント、大晦日、初売りに初詣。

 

彼という存在が出来て初めてのクリスマスは、これも初めてのプレゼント交換なんかもして、遂に私もリア充と言われる立場になったのかとしみじみした。

プレゼントは私からは手編みのハンドウォーマーとニット帽。レインボー氏からは誕生日プレゼントとあわせて、錦鯉のイヤリングと可愛らしいハンドクリームのセット。いつものお店で和やかに過ごした。この当時はまだまだ汚部屋だったので、私の部屋で過ごすなんてまったく考えもしなかった。

 

大晦日は前日の街中イベントで散々盛り上がっていたし、レインボー氏は買い物があると言っていたから私は適当に近所のスーパーにでも行こうと思っていた。それが、直前に「買い物付き合う?」と連絡が。お邪魔でなければ勿論行きたい。すぐに了承の返信をした。

 

買い物はおせちやオードブルの受け取りと、お寿司の盛り合わせなどの買い出し。ご両親と3人暮らしにしては量が多いなと感じたけれど、ご親戚が近所に大勢いるようなのでその為だろう。おせちとオードブルはお友達が運営している事業所や馴染みのお店。

案の定、顔を出すと結婚を促すような発言でからかわれてしまう。もうだいぶ慣れた。

 

一通り買い物を済ませ、後は帰宅するだけとなったところで私はひとつお願いをした。実家に寄ってほしかったのだ。

実は少し前に県外に住む妹から大量に蕎麦が届いたとかで、都合の良い時に取りに来るように母から連絡が来ていたのだ。実家は私の住むアパートからそう遠くはないが、バスの本数が少なくどうにも億劫で先延ばしにしていた。とても身勝手な理由だが、今こうして車に乗せてもらっているのでついでに連れて行ってもらえないかと思ったのだ。

 

レインボー氏は快く引き受けてくれた。実家の兄夫婦はきっと兄嫁実家に出掛けているだろう。実家前に車を停めてもらえれば、私だけ降りて玄関先で母から蕎麦を受け取ってしまえば良い。

その憶測が甘かった。

 

 

江戸時代は宿場町だったが、今はすっかり過疎ってさびれた田舎町に私はレインボー氏をナビした。実家は小さなお宮の参道沿いにあり、レインボー氏に参道まで入ってもらうようにお願いした。

 

これが大失敗。

 

初詣の参拝者向けに神社は幟旗や幕が掛けられ、参道にはずらりと大量の灯篭が並べられていた。しかも、甲類焼酎4リットルボトルで手作りされた代物。そうだった、今日大晦日だったわ。

 

灯篭は車が通られる程度には幅は取られていたが、レインボー氏にとっては衝撃の光景。丁度作業をしていたおじさんがこちらに気づいて、「大丈夫ー、通れるよー」とばかりに手招きしてくれたのだが、明らかにレインボー氏は動揺している。ごめんなさい。この神社、そうなのよ。

でもそこは竹灯籠じゃないのか氏子の皆さん。どんだけ焼酎飲んだのよ。

 

レインボー氏は慎重に車を進め、実家の前まで来た。私は急いで車を降りると玄関に向かい扉を開けた。そこには、出掛けている筈の兄と兄嫁がいた。私の読みよりもゆったり行動していたらしく、これから兄嫁の実家に向かうところだという。

息を飲み、慌てる私。レインボー氏の車はガレージの入り口を塞ぐように停めていたから。急いで兄にはすぐに車を移動させるから待ってと伝え、レインボー氏に車を動かしてもらうよう頼みに外に飛び出した。

 

母と兄には、以前からお付き合いしている人がいることだけは伝えていた。だが対面の挨拶はきちんと場を整えようと思っていた。まさかこんな慌ただしい中でのご対面になるとは。

 

おろおろしている私を尻目に、兄は長男に車を出させながらレインボー氏に挨拶をした。レインボー氏もやや緊張気味に挨拶を返す。お互いの笑顔が少々強張って見えたのは気のせいだろうか。いや、これだけ突然のことなのだから無理もないか。

 

その流れで舞い上がっている母とも引き合わせることになったのだが、兄嫁が「ここじゃなんだから上がってもらったら?」などと気を利かせてきた。いやいや、彼は生もの買ってるからすぐ帰る。私も蕎麦をもらいに来ただけだから、となんとか言って引き上げることが出来た。

 

ほんの数分の出来事だったけれど、すべてがまさかの連続で、これは後々までお互いに笑い話として語り続けることになると思う。

 

 

それから半年。阿蘇からの帰りに将来についてレインボー氏と初めてしっかりと話をしてから1ケ月ほどが経っていた。汚部屋はほぼ片付き、最後の仕上げとばかりに全自動洗濯機がやってくる日、私は久しぶりに兄に会った。兄の協力で洗濯機を受け取り、アパートに戻るタイミングで話を切り出した。

 

「きちんと話しておきたいんだけど」

 

 

自然と兄の背筋が伸びる。

 

レインボー氏とはおそらく結婚をすること、レインボー氏の方がずっと現実的に考えてくれていること、ただ、それは今すぐではないこと等を兄に伝えた。兄も薄々そういった話になることを予測していたのか、まっすぐ前を見てハンドルを操作しながら、真摯な目で耳を傾けてくれた。

 

お調子者な部分もある兄だが、面倒見と責任感はかなり強い。子供の頃、共働きだった両親に代わって三人の妹の世話は殆ど兄が見ていた。そんな兄なので、いくつになっても大切な話は通しておきたかった。車内の空気が冗談の通じない緊張感を漂わせる。

 

私の話を聞き終えた兄は、まず簡潔にこう言った。「ありがたい話だ」と。

 

今まで何も言われてはこなかったけれど、やはり兄は私の将来をかなり案じていたそうだ。鬱病を発症してからは長く休職していたし、社会復帰したと言っても派遣を転々としている。今後もらえる年金などを考えても、ひとりでやっていけるのかと。誰かが一緒にいてくれる、それだけで心強い。

 

「まぁ、言ってもその歳なんだから、タイミングはお互いがいい時でいいんじゃね?」

 

ですよね! うん、本当にそうですよね! 言うてもアラフィフですからね!

 

 

帰り際に兄は、このことは母も知っているのかと確認してきた。実は、もう概ね母には伝えている。このまま枯れていくのかと思っていたそうで、大変安堵していた様子だった。兄が後回しになったのは、なんとなく父親感があったから。男親には、やはり彼氏という存在にのことは打ち明けづらいものだ。

 

幸い兄は手放し歓迎な様子だったけれど、父が生きていたらどのような反応をしたのだろう。もし今も生きていれば、とっくに諦めていた娘が結婚するかもしれないのだからたぶん兄と同じようにありがたがったかもしれない。

 

生前であれば、どうだっただろう。還暦も迎えることなく父が亡くなった約二十年前は世論も違っただろうし、想像もつかない。

 

でも、口はへの字に曲げているんじゃないかなって気がする。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい④「あれやこれや、どうするの」

たぶん旅行エピソード以上にレインボーさんの反応が気になるお話です。もしNGもらったら、この記事も含めて明日以降の投稿は停止する可能性があります。

緊張の第4話スタートです。

 

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元々婦人科系の持病を持っている私。その影響から重い貧血の症状が出ることがあり、次第に仕事にも支障が出るようになってきた。今日は大丈夫だと思って出勤するも、顔色の悪さから即行で帰宅指示が出る日もあった。欠勤も増えた。しがない派遣社員だ。収入が減るのは大変痛いのだが、如何せん身体がいうことを聞かない。

 

加えて約10年来の鬱病でもある。発症当時よりずっと軽くはなったけれど、思いがけずパニック発作を起こすこともあるし、不眠の症状は未だにかなり手強い。薬は欠かせない。

 

遂には月の半分近くを欠勤する事態にまで陥り、意を決して派遣契約の更新を断ることにした。先方は勤務形態を柔軟に対応するので継続して働いてほしいと言ってくれていたが、とにかくまとまった療養期間がほしかったので少々心苦しかったがその申し出を断った。

 

この場合、契約期間満了とはなるが派遣先は継続雇用という機会を用意してくれており、それを断る形での離職なのであくまでも「自己都合による離職」に規定されるという。そうなると失業給付を受給する際の給付制限が2ケ月もかかり、経済的にも苦しくなる。

 

だがそこでハローワーク職員さんからのアドバイス。

私の場合は長い通院歴もあり、医師の指示書をもらうことで給付制限が無くなるとのこと。早速クリニックに指示書を依頼し、結果国民健康保険の保険料も軽減してもらうことが出来た。これからお財布事情が厳しくなるので、少しでも助成が受けられるのは本当に嬉しい。

 

 

実はお仕事をしている頃、週1~2回程度レインボー氏が仕事帰りに車で私を拾い、アパートまで送ってくれていた。私の職場は市中心部にあり、そこを基点に私とレインボー氏とは真逆の郊外に住んでいる。明らかに遠回りになるのに、帰り道だからといつもレインボー氏は快く私の職場近くに迎えに来てくれていた。

 

早退や欠勤が増えてきた頃から当然お迎えはお断りが続いており、レインボー氏には心配をかけてしまった。更に無職になってしまったのだから、これはもうお荷物以外の何物でもない事態。

特技は怠惰、趣味は惰眠という私から仕事を取ったら、人間らしさすら無くなるのではないか。誰よりも私が私に対して不安しかない。

 

そんなタイミングで周囲のお友達の圧もあり、汚部屋の断捨離がスタートした。毎日今まで通りの時間に起きて、自分のペースでお片付けに取り組んだ。離職直後は市役所やハローワーク、派遣会社への各種手続きも予想以上に煩雑で頻繁に外出することも多かった。おかげで思いのほか張りのある日々が続いた。

 

 

二度目の認定日でハローワークへ行く頃には、だいぶ体調も安定してきた。体力も回復してきたような気もしている。あくまでもマイペースに過ごせているからであって、再就職しても絶対に大丈夫だとは言い難いけれど、医師からも良い傾向にあると言ってもらえた。

 

条件的に失業給付は約1年受けることは可能だけれど、そろそろ本腰を入れて求職活動をしても良いかもしれない。早く再就職が出来れば、その分再就職手当が多くもらえることになるのだし。

 

早速ハローワークと派遣会社で求人紹介をお願いしたのだけれど、これがどれも一長一短という感じで改めて世間の厳しさを痛感する。全体的に時給は以前より増加傾向にあるのだけれど、その分実働時間が短いという求人が複数あった。それでは意味が無い。レインボー氏のお荷物にだけはなりたくないので、せめて自立出来る程度の収入は欲しい。さてどうするべきか。

 

 

実はもうひとつ、どうするべきかという問題がある。それは、名前。

 

昔から結婚するなら事実婚だと考えていた私。選択的夫婦別姓が法整備されれば法的な婚姻を結ぶのはやぶさかでないのだけれど、もうとにかく姓の統一が納得いかない。

 

夫婦別姓が導入されれば戸籍制度が崩壊するという意見も目にしたことはあるけれど、それだけで崩壊するならそもそもの制度が不完全なのではないかと感じてしまう。

 

などと抵抗はしているけれど、実際のところ私が折れることになるのは分かっている。納得はしていないが、私が彼の姓を名乗ることがお互いの将来を思えば最も現実的なのだと理解はしているのだ。

 

ある手続きをしに市役所に出向いた際、用件はすぐに片付いたのだがまっすぐに帰る気にはなれなかった。足は戸籍課の前へ。意味もなく記載台にある届出書の記入例を眺めたりしつつ、妙な緊張感で視線をカウンターへ走らせる。そしてカウンターの端に各種届出用紙が格納されているボックスを見つけた。必要な用紙を各々自由に持ち帰られるようになっている。

 

一旦呼吸を整えて、素早くボックスに向かい手早く婚姻届を引き出すとバッグにしまった。

 

なんだか悪いことをしているみたい。でも、実際先走り過ぎている自覚はあるし落ち着かない。心拍数も上がってきて安定剤が飲みたいとまで思った。だってまだ覚悟も納得もしていないのに。

 

帰宅して、改めて婚姻届の書式を確認。意外とシンプルだと感じた。記入する本籍の筆頭者って、亡父になるのか? それとも兄? いや、兄は結婚して新しい戸籍の筆頭になっているから、やはり亡父か。これは近いうちに確認しておこう。

証人って、誰にお願いすれば良いのだろうか。母か兄か、レインボー氏とのお付き合いを後押ししてくれたお友達か。レインボー氏は誰に頼むのだろう。

 

 

後日、コンビニで戸籍謄本を取った。戸籍の筆頭は既に除籍されている亡父。兄と妹は新戸籍を作っているのでそこに記載は無い。姉は婚姻による除籍となっており、更に婚姻日と配偶者の氏名も記載されていた。私もいずれこんな風に記載をされるのだろう。そしてこの戸籍に実質的に残るのは母だけになる。

 

まだ決まってもいないのに、何を感慨にふけっているのか私。レインボー氏にも言えない。あれだけ事実婚でいいなんて言ってた私が、既に婚姻届まで準備してしまっているなんて。

 

もうこれ、私の中では決定事項になっているんだな、と実感した。

 

【続く……】

【連載】当たるも当たらぬも八卦よいよい③「給湯器疑惑」

問題は次から次へ。それはまるでネバーエンディングストーリー。

タイトルの意味も分からないまま、第3話スタートです。

 

   ↓   ↓   ↓   ↓

 

駐車場問題が棚上げになってしまったので、レインボー氏がアパートへ来るのは月に2回程度。街中でお互いにへべれけに飲んだ後に、タクシーで移動するということとなった。一晩泊まって、翌朝一番かその次のバスで街中へ車を取りに戻り、自宅へ帰るという流れ。

 

ある日、一旦帰宅するレインボー氏が車を回収したらまた迎えに来るから、竹田市菅生へとうもろこしを買いに行こうと言う。レインボー氏にとって毎年の恒例行事だ。喜んでお出掛けすることにした。

 

菅生の農場で沢山のともろこしを購入した後、知人が営んでいる沖縄そばのお店へ。買ったばかりのとうもろこしを差し入れし、美味しい沖縄そばを食べて、そのまま帰るのかと思ったらディスカウントストアへ行きたいと言うレインボー氏。どうぞどうぞ、何か買いたいものがあるのね。

 

そのお店は前年末にオープンしたばかりで、私は行ったことがなかった。明るく賑やかで、所狭しとならんだ商品をただ眺めて歩くだけでも楽しい。

だがレインボー氏には目的がある。それが何かは聞いていないが、彼が進む方へ一緒に付いて行く。どうやらなかなか見つからないのか、店内の滞在時間だけが伸びていく。そのうちキッチン用品のコーナーへ紛れ込んだ。丁度包丁のコーナーの前に来たので、私はただの雑談のつもりで笑顔で言った。

 

「うちの包丁、独り暮らしする時に百均で買ったやつ」と。

 

するとレインボー氏は一瞬口ごもり、すっと包丁を一本手に取った。

 

「可哀そうだから買ってあげる」

 

え? 買ってほしくて言ったわけじゃないよ! と驚いたけど、確かに長年使っている包丁の切れ味は決して良くはない。なんと言っても使用歴20年以上なのだから。ありがたく買っていただくことにした。

 

その後もお目当ての商品が見つからない様子のレインボー氏は、とうとうシャワーヘッドを探しているのだと教えてくれた。シャワーヘッドか。……どこだろう? 目ぼしいところは一通り見て回ったと思うのだけど。

 

更に歩き回ること数分、ようやくシャワーヘッドのコーナーを見つける。本当に迷路のような店内だ。

レインボー氏は暫く商品を物色して、やがてひとつを手に取った。改めてパッケージを読み込み、納得したような表情をすると、さっと商品を私に差し出す。ん?

 

「はい」

 

「……ん? え? 私の?!」

 

「うん」

 

押し付けるように商品を手渡されて、私は唖然とした。てっきりレインボー氏の実家のシャワー用だと思い込んでいたのだから、ただただ驚いた。

 

実はレインボー氏、昨夜アパートのシャワーを使った時に水圧の弱さが気になったのだと。えぇ、そうかなぁ? と思ったけれど、毎日使っている私には気づきにくいほど徐々に弱っていたのかもしれない。

今後もレインボー氏が来ることを考えるとやはり快適に使っていただきたいので、こちらもありがたく頂戴することにした。

 

 

この後、少し食料品なども買って、こっそり内心で家庭的な雰囲気を楽しんでいたのはここだけの話。そして、レジ直前に先程とは別のシャワーヘッド特設コーナーを見つけて、ふたりで苦笑いしたのもここだけの話。

 

アパートへ送ってもらい、帰宅後早速シャワーヘッドを付け替えて最初のシャワーを浴びる。細かい穴から流れ出るお湯が柔らかくて心地よい。だが、お湯の温度が安定しない。

 

打ち明けるのが遅くなったが、実はうちのシャワーは設定温度を50度にしないとお湯が出ないのだ。それ以下の水温に設定すると、何故か燃焼すら始まらない。更に水温も安定しない。急に熱くなったり水になったりを繰り返す。

 

そのことはレインボー氏にも使ってもらう前に伝えており、シャワーヘッドに加えて給湯器についても早めにガス屋に連絡するなどした方が良いと言われていた。

ガス屋かぁ……。直接連絡するよりも、管理会社経由の方がいいのだろうな。でも少し前にもエアコンとドアホンの工事について管理会社へ電話したばかり。また同じオペレーターさんに対応されたら嫌だな。またこの部屋の住人かよ、とか呆れられないだろうか。

 

そんなことを考えて、なかなか管理会社へ連絡を入れられないまま、次のお泊りのタイミングがきた。だがレインボー氏は私がシャワーを浴びている間に寝てしまった。酔って疲れていることは理解していたが、やはりそんな状況で水温の調整と格闘しながらシャワーを浴びるのは面倒だったのだろう。

 

それはそうだろう。さっぱりして落ち着きたいのに、せわしなく水温調整しながらの入浴なんて、私だって正直嫌だ。自分だけのことだから、これまで面倒臭くて問題を先送りしてきただけだ。

だが今はレインボー氏が絡んでいる以上、もう放置しておくわけにはいかない。

 

私は管理会社へ電話をかけた。例のお客様サービス課だ。そして私の電話を受けたのは前回と同じS氏だった。嫌だと思っていたことほど、現実になるものだ。

S氏の仕事は早く、数分後にはガス屋と連絡がつき、更に30分と経たずに業者の男性がアパートへやって来た。てっきり数日待たされるかと思った。ありがたい。

 

業者さんは早速シャワーのお湯の出を確認しにシャワールームに入るが、すぐにこう言った。

 

「あ~、節水タイプか~」

 

レインボー氏が買ってくれたのは、節水タイプの商品でシャワーヘッドにお湯をワンプッシュで止めるボタンが付いている。そのタイプでは何か問題があるのだろうかと思ったら大問題だった。

節水タイプのヘッドだと、どうしても水圧が低くなるという。水圧が弱くなると、給湯器の温度センサーが反応しにくく、燃焼モードに切り換りにくくなるのだそうだ。

 

えぇ、せっかく買ってもらったのに。

 

業者さんは古い方のヘッドはあるかと聞いてきた。勿論保管している。もし転居することになったら戻しておく為に。取りに行っている間に、業者さんは新しいヘッドを付け直したり、ヘッドを外したままのホースから湯を出した。更にカランの方からも。そしてその度に水圧をリモコンで確認した。

 

「やっぱりこのヘッドだと水圧が低いですね。ホースだけとか、カランなら充分な水圧になるんですけど、ヘッドつけた途端に低くなるんですよ」

 

私もリモコンの水圧表示を見せてもらったが、そこにあったのは「33」という数字。せめて「35」は欲しいという。

でも、古い方のヘッドも水圧は低かったし水温は安定しなかった。そういって業者さんにヘッドをみせてみると、すぐ「あぁ」と納得の表情を見せた。

 

「目が詰まってますね」

 

ふぉーっ! 恥ずかしいー! つまりそれは、私のお手入れ不足!

 

確かに分解してみると、ヘッドの水が出てくる穴が湯垢? ごみ? いや、もうそれが何かなんてどうでもいいけど、びっしり詰まっていたのだ。とにかく恥ずかしい。

 

返してくれれば自分で待ち針とかで解消して付け直すから、業者さんもう帰っていいよ、と言いたくなるくらい彼は長時間、丁寧な仕事ぶりでヘッドの穴をツンツンと突いて詰まりを解消していく。

 

やがてミッションを完了して古い方のシャワーヘッドをホースに繋ぐ。そしてお湯を捻りだす。始めこそ出てきた冷たい水は、瞬く間にお湯へと変わる。そして、その水圧はなんと「55」!

これまでの水圧のなんと弱々しかったことか。そりゃあお湯にはならぬ。

 

「あの、つまりヘッドの詰まりが原因で水圧低かっただっただけで、給湯器にはなんの問題も……」

 

「ありませんね」

 

こうして、シャワーヘッドは旧型に戻ることになった。疑ってすまなかった給湯器よ。

あぁしかし、せっかく買ってもらったのに!!

レインボー氏へは伝えづらいのだが、言わない訳にはいかない。あっさり解決して良かったね、と笑顔で言ってくれるのは分かっている。だからこそ心苦しい。この気持ち、分かってもらえるだろうか。

 

【続く……】